強みを引き出す、本当の「自己理解」とは?【親子で考えるキャリア教育】

強みを引き出す、本当の「自己理解」とは?【親子で考えるキャリア教育】

文部科学省の資料(※)によると、キャリア教育は「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義されています。

今回は、キャリア教育の基礎になる「自己理解」について、キャリア教育の専門家に話を聞きました。
※中学校・高等学校キャリア教育の手引き(2023年3月)

武居さん

武居秀俊(たけい・ひでとし)

人材系の会社で営業や研修を担当、ヘッドハンティング会社のキャリアコンサルタントを経て、東京の都立高校で世界史教員として勤務。その後独立し、現在は企業向けに経営支援や採用支援を行うほか、中学生~大学生向けにキャリア支援プログラムを提供している。自身は男4人兄弟で、3女の父。

本当の自己理解とは?

人は成長するに従って、自分と他者との違い、自分自身の強み・弱みなどに気づき、「自分とは一体何者なのか」を考えるようになります。

人は成長するに従って、自分と他者との違い、自分自身の強み・弱みなどに気づき、「自分とは一体何者なのか」を考えるようになります。つまり、自己を理解していくのです。そして、本当の意味での「自己理解」は、他者と関わる中で進んでいきます。特に子どもの場合は他者に触れて、心が動くことで、驚くほどの変化をとげるケースがあります。

私は以前、高校の教員をしていました。そして、生徒達と日々接する中で、生徒の心が動き、変化が起こったケースをたびたび目にしてきました。

「心が動く」体験がきっかけに

社会科の公共の授業で、生徒による研究発表がありました。生徒がそれぞれのテーマで調べた結果をPowerPointで資料にまとめ、みんなの前で発表するというものです。

ある生徒が、慣れない発表の場でパソコンの操作などに戸惑っていました。その姿を見て、1人の生徒がスッと前に出てきて、最初から最後まで、教室の床に膝をついた状態で発表のサポートをしたのです。発表が終わった後、私はこの生徒のサポートの姿勢が素晴らしかったことを、みんなの前で激賞しました。

この出来事をきっかけにして、授業中のクラスの空気がガラリと変わりました。「自分たちで自由にやっていいんだ」「困っていたら助けていいし、自分たちは助けてもらえる存在なんだ」。そんな認識が広がり、生徒たちの心が動いたのではないかと思います。そして、学習意欲も高まり、その後に行われた期末考査の平均点が、このクラスだけ15点もアップしました。

また、わが家の長女にも、心の動いた転機がありました。高校に入学してしばらくの間、友達と楽しむわけでもなく、部活に打ち込むわけでもなく、漫然と日々を過ごしている様子でした。私は思い立って、そんな彼女をベトナム旅行に連れ出してみたのです。

また、わが家の長女にも、心の動いた転機がありました。

クラクションが鳴り響くハノイの旧市街では、最初はビクビクして路上も歩けないほどでした。しかし、現地にいる私の友人に会わせ、異国の地の暮らしを見て、聞いて、肌で感じ、彼女なりにいろいろと感じることがあったのでしょう。帰国後、アルバイトを始めるなどの行動の変化がありました。その後、「〇〇の勉強がしたいから、□□大学に行きたい」と自分の目標を明確に持ち、受験勉強に励むようになったのです。

他者と触れ合う機会を大切に

紹介した事例は、子どものやる気を出すために、「膝をついてサポートをさせましょう」「海外旅行に連れて行きましょう」という話ではありません。自分の世界に閉じこもって、じっとしていても自分のやりたいことは分からず、自己理解は進まないのです。子どもたちは他者との触れ合いを通して、心が動き、自然と自分自身のことを深く、そして多面的に知っていくのです。

ぜひ、子どもに多種多様な人と触れ合う機会、自己理解のきっかけをつくってあげてください。自分自身を知ることが、子どもの強みを引き出していくはずです。

この記事がいいと思ったら、クリックお願いします!
いいね 126
一言ボックス
記事の感想をお待ちしています。
※ご返信が必要な場合は「感想・声を送る」よりお問い合わせください。
ご意見・ご感想ありがとうございます!

毎日の暮らしに寄り添う情報を選んで通知しませんか?
「きずなネットアプリ」では、お天気・防犯などの地域情報、子どもたちの学びや進路、子育てに役立つ情報を配信しています。

きずなネットの無料アプリ
記事を共有する
きずなネットよみものWeb

関連記事

皆さまからの声を募集しています

記事の感想や編集部のご意見など、皆さまの声をお聞かせください。

感想・声を送る