きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、読者からリクエストのあった「お花屋さん」、フラワーショップスタッフです。中でも、名古屋駅近くにあるフラワーショップで、仕入れや接客、ワークショップなど、さまざまな業務に携わる方に話を聞きました。

水谷 桃芽 さん
31歳/4年目
この仕事を選んだ理由は?
もともと新卒で入社した一般企業で6年半、事務職として働いていました。転職を決意したきっかけは、家族で祖母の在宅介護をしていた経験です。
祖母は認知症が進んで、介護施設に受け入れてもらえないほどの状態。父・母・妹・私の4人がかりで介護をしていましたが、次第に最低限の会話しかしなくなり、家の中は暗い雰囲気になっていました。そんな中、少しでも気持ちが明るくなるようにと、リビングと玄関に花を飾る習慣を始めたんです。
すると、家の中の空気が少しずつ変わっていきました。父も花を買ってくるようになり、母は庭で花を育て始め、妹も自然と花に関心を持つように。だんだん家の中に花が増えていき、家族の会話も多くなったんです。「これ、なんていう花?」「この色きれいだね」など、介護以外の話題が生まれるようになりました。
そんな経験から「花には、人の心を動かす力がある」と実感し、この感動を届けられる仕事がしたいと、フラワーショップへの転職を決意しました。
仕事内容は?
仕事内容は、生花の仕入れや管理、接客、清掃、花束を作るなど、店頭での作業だけでなく、配達業務、SNSの運営やイベントへの出店など、多岐にわたります。私の勤めるお店はカフェも併設しているので、カフェの運営を行ったり、契約しているお店に出向いて生け込み(花を飾ること)を行ったりすることも。
店舗スタッフは社員・アルバイトを含めて8人で、協力しながら働いています。
ある日の流れ
※仕入れのある日
5:30 出勤、花市場へ
店舗に出勤した後、車で花市場へ向かいます。季節やご予約に合わせた花を買うだけでなく、市場で関係者と話したり、複数の店舗をまわったりして、情報収集も行います。
9:30 店舗に戻る
仕入れた花の水揚げ(根元を切って水につける)作業、品質チェック、在庫管理などを行います。
11:00 開店・店頭対応
店頭に立って接客したり、注文が入ったら花束やアレンジメントを制作したりします。
14:30〜15:00 退勤
仕入れのない日は、10:00~19:00の勤務です。
繁忙期は、卒業式や歓送迎会の多い3月。この時ばかりは、ご飯を食べる暇もないほどノンストップで作業して、スタッフみんなで協力しながら頑張っています。また、母の日や成人式、クリスマスの時期なども忙しくなります。
この仕事の楽しいところは?
「人生の大切な瞬間」に立ち会えることが、1番のやりがいです。お客さまの花を選びながら話していて、「これから彼女にプロポーズするんです」と、言われることも。特別な日の花を任せていただけることは責任を感じますが、喜びも大きいです。
特に印象に残っているのは、以前から通ってくださっていたお客さまが、会場が神戸だったにもかかわらず、当店にウェディングブーケの制作を依頼してくださったこと。出発前の早朝にわざわざお店まで受け取りに来てくださり、後日「完璧でした!お願いできて本当に良かったです」と写真とともにお礼の言葉をいただいた時は、本当に嬉しかったです。
この仕事の大変なところは?
早朝の仕入れだけでなく、業務中は水の入ったバケツや花など、重たいものを何度も運ぶ必要があります。「花に関わる仕事」と言うと優雅に思えるかもしれませんが、半分以上は力仕事だったり汚い水を触ったりで、大変なことも多いです。
また、接客の際は、お客さまの「こんな花が欲しい」といった漠然としたイメージを具体化するヒアリング力も欠かせません。予算や用途、渡す相手の性格などを伺いながら、短時間で最適な花束を提案・制作する必要があります。質問しすぎてプレッシャーをかけないようにしつつ、本音を引き出し、スピーディに仕上げるバランスが求められます。
仕事につくために努力したこと
転職を決めた時、まずはフラワーレッスンに通い始めました。未経験だったので、基本的な技術や花の知識、色の合わせ方などを1から学びました。
その後、さまざまなフラワーショップに直接問い合わせて求人をしているかを確認。今の勤務先も、お店の前をたまたま通りかかった時に「いいな」と思って、Instagramをチェックしていたんです。電話をかけてみたところ、「ちょうど求人を出そうと思っていた」と言われ、面接をしてもらいました。最初の3ヶ月はアルバイトとして入り、今は正社員として勤務しています。
転職後は、先輩たちの仕事を見ながら技術を盗み、教えてもらったことはメモをして、何度も見返しました。花についての知識は図鑑で調べたり、農園研修などに参加したりもしています。花の育つ環境を直接見て、農家さんの思いにも触れて仕事に向き合っています。
例えば、冠婚葬祭の花を用意する際、知識がないとお客さまに恥をかかせてしまいますし、花の扱い方を知ることで、長く楽しむことが出来ます。また、お客さまの気持ちに寄り添った提案が出来るよう花言葉を調べるなど、常に勉強を続けています。
今でも休日にフラワーレッスンへ通うこともあり、仕事と趣味の境界はほとんどありません。大変なこともありますが、すべて大好きな花が帳消しにしてくれます。
今後の目標は?
「自分のために花を買う人」をもっと増やしたいです。ケーキやコーヒーを買うような気軽さで、仕事や勉強を頑張ったご褒美に、自分に花をプレゼントする。そんな文化をもっと広めていけたら、心豊かに暮らせる人が増えるのではないかなと思います。
この仕事につきたい人へ
フラワーショップの仕事は、想像以上に幅広く、体力的にも精神的にもハードです。ただ花が好きというだけでは続かないかもしれません。大切なのは自ら学びに行く姿勢や、「良いものを作って、お客さまに届けたい」という強い思いです。
また、今は花が好きでなくても「人を喜ばせることが好き」という人なら、きっとやりがいを持って働ける仕事だと感じています。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部
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