きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、読者からリクエストのあった食品の開発者です。中でも、食品メーカーで調味料の開発に携わる方に話を聞きました。

大平 夏帆さん
この仕事を選んだ理由は?
母が看護士だったこともあり、子どもの頃は手に職をつけて働きたいと考えていました。その中で食品の開発に携わりたいと思ったのは、高校生の時に通っていた塾のチューターさん(進路・学習相談に乗る専門のスタッフ)の言葉がきっかけです。
「体に入るものは薬か食品しかない中で、薬は限られた人しか飲まないけど、食品はたくさんの人が口にするもの」と言われて、「確かにそうだ!」と。このチューターさんは、後に私が進学した大学の学生で、学部・学科も同じでした。
大学・大学院は、食品の研究ができる農学系の学部・学科に進学。地元である愛知県で、生活との結びつきが強い商品を届けられる今の会社を選びました。
仕事内容は?
当社では、酢や納豆、調味料などさまざまな商品を作っていますが、私は開発技術部で鍋つゆの商品開発を担当しています。毎年春と秋に新商品が出るため、半年程かけて新商品の開発や既存商品のリニューアルをしています。
ある日の流れ
9時 出社
メールをチェックし、その日にやるべき仕事の計画を立て、事務作業を行う
10時 商品の試作
新商品となる鍋つゆを試作する
12時 昼休憩
13時 試食・相談
試作した鍋つゆを使って、実際に野菜などを入れて鍋を作り、社内のメンバーに試食をしてもらう。「一口目のインパクトが薄い」「味にもっと厚みがほしい」など、さまざまなフィードバックをもらう
15時30分 試作品のブラッシュアップ
フィードバックをもとに、しょうゆや塩、魚の節などを加えて味を調整する
16時30分 結果まとめ
材料などを片付け、その日に行った試作や分析の結果をまとめる
17時30分 終業
商品開発にはいくつかの段階があり、それによって業務内容は大きく異なります。例えば、企画の段階であれば、人気店を複数まわって試食し、市場調査を行うことも。商品化が決まって生産に入る段階であれば、原料の仕入先や社内の品質管理、製造に携わる工場のスタッフとも連携をとりながら業務を進めています。
この仕事の楽しいところは?
自分の手掛けた商品が実際に店舗に並んでいるところを見るとうれしいですし、お客さまから「美味しかった」など、感想をいただけることも励みになっています。このような商品が形になる喜びはもちろん、周りからアドバイスをもらいながら「〇〇と△△を組み合わせるとこんな味になるんだ!」という日々の発見も楽しく、毎日やりがいを持って仕事に取り組めています。
この仕事の大変なところは?
目に見えない「美味しさ」をどう作っていくかが、難しいと感じます。特に、私が開発に携わっている鍋つゆは、野菜などの具材を入れる量をはじめ、人によって商品の使われ方が変わります。さまざまな条件の中で、出来るだけみなさんに美味しく食べてもらうためにはどうしたらよいかを毎回試行錯誤しています。
仕事につくために努力したこと
高校生の段階で「食品の開発に携わりたい」と決めて、食品について学べる学部・学科を選択していたので、大学時代の勉強や研究が今の仕事につながっていると思います。
学部生の時にも就職活動をして、食品会社を複数社受けました。ただ、その時は研究・開発職では採用してもらえず、営業職でしか内定をいただけませんでした。
改めて自分が何をしたいのかを考えたところ、やはり「開発をやりたい」という思いが強く、さらに深く学ぶために大学院へ進学。院を卒業するタイミングで再び就職活動をして、第1志望だった今の会社に内定をもらいました。
入社後は、先輩たちからさまざまなことを教えてもらいながら、日々経験を積んでいます。プライベートでも料理教室に通ったり、味覚を磨くためにもともと好きだった濃い味付けの食べ物や辛いものを控えたり、美味しいものをみなさんにお届けできるよう努力しています。
2024年、大平さんが開発を担当した商品
今後の目標は?
これからさらに経験を積み、味づくりのノウハウを身に付け、「ミツカンの代表作」と言われるような人気商品・ロングセラー商品を作りたいです。
この仕事につきたい人へ
高校生の頃から食品開発の仕事に携わりたいと思ってはいたものの、この仕事につくまで具体的にどんな仕事か全く分かりませんでした。ただ、実際にやってみると、想像していた以上に楽しく、お客さまなど、周りから反応をもらえてやりがいを感じられる場面も多いです。
私の場合は、食品関係の学部・院を経て入社しましたが、それ以外の研究をしていた人でも、食品開発に携わることが出来ます。もし興味のある人がいたら、ぜひ目指してください。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部
この記事の感想や「こんな人の話を聞きたい!」「こんな仕事に興味がある!」自薦・他薦問わず「この人にインタビューしてほしい!」など。みなさんの声をお待ちしています。
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