【お仕事インタビュー】学芸員

【お仕事インタビュー】学芸員

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きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。

今回は、読者アンケートでもリクエストの多かった「学芸員」です。美術館や博物館などで展覧会を企画したり、作品や資料を収集・研究したりする専門職で、欧米では「キュレーター」とも呼ばれています。

【お仕事インタビュー】学芸員
芹澤なみき(せりざわ・なみき)さん

29歳/3年目
愛知県美術館
学芸員

 

この仕事についたきっかけは?

幼い頃から美術館に行って、作品を見ることが大好きでした。それもあって文学部に進み、「美術と関係することだったら、楽しく勉強できそう」という軽い気持ちで、美学美術史学専攻を選んだんです。初期ルネサンス(15世紀初頭)のイタリアの宗教画を専門に学び、イタリア留学も経験しました。そこで、「作品の背景を知る」ということの面白さに改めて気付き、大学院に進むことにしました。

大学院で学びながら将来を考えた時、そのまま大学に残って研究者を目指す道もありましたが、「たくさんの人に美術の魅力を知って欲しい」「美術の楽しさを分かち合いたい」という思いが強く、学芸員の仕事を選びました。

仕事内容は?

美術館の学芸員の仕事は多岐にわたりますが、多くの人がイメージしやすいものとして、次の2つがあげられます。

・展覧会の企画や運営
・美術館が所蔵する作品の保存や調査・研究

大きな展覧会の場合、何年も前から準備がスタートします。展覧会ごとにテーマを決め、それに基づいて作品を置く位置や照明の当て方、壁の色、お客さんの動線など、本当に細かい部分まで調整していきます。それ以外にも図録やグッズの準備、広報活動など、さまざまな仕事があって、毎日が目まぐるしく過ぎていきますね。

さらに、当館は8000件を超える作品を所蔵しています。それらをきれいな状態で保存し、調査や研究に活用したり、たくさんの人に見てもらえるよう、展示方法や企画を考えたりするのも学芸員の大切な仕事です。

ある日のスケジュール

9時30分 出勤、メールや原稿のチェック、調べもの
12時 昼食
13時 館内外の関係者と打ち合わせ
15時 収蔵庫で作品の保存状態のチェック
16時 展示室に設置する作品説明パネルの作成
18時30分 退勤

展覧会の準備期間には1日中展示室にこもり、設営作業に立ち会うこともあります。館内の作業だけでなく、作品の借り受けや調査のため、各地の美術館やギャラリーを回ることも多いです。

この仕事につくために努力したことは?

学芸員になるには、学芸員資格を取得することが必須なので、大学生時代、資格取得に必要な科目を受講しました。また、自分の専門分野においては、作品の背景や作品同士の関連性など、美術を「学問」として学ぶことも意識していましたね。

大学時代の恩師から言われた「大小さまざまなことに関心を持っていると、思わぬところで繋がってくる」という言葉が今でも印象に残っています。展覧会では、幅広いジャンルを扱うため、専門分野だけでなく、幅広くアンテナを張って、関心を持つことも心がけていました。

この仕事の楽しいところは?

【お仕事インタビュー】学芸員↑写真は同館学芸員による所蔵作品ピカソ《青い肩かけの女》の調査風景

自分が好きなことを仕事にしているので、正直何でも楽しいですね。毎日美術に触れていますが、担当する展覧会によって扱う作品のジャンルが変わるため、いつも新鮮な発見があり、飽きることがありません。

中でも、展覧会の設営作業が好きです。何もなかった展示室に次々と作品が運び込まれ、たくさんの人たちで何日もかけて設置して、最後に明かりがパッとついた瞬間、その場の空気が一変し、「いよいよ展覧会が始まるんだ!」とわくわくします。

この仕事の大変なところは?

学芸員の仕事には、「これがベストだ」という正解やゴールがありません。もちろん、質の良い展覧会を企画し、美術の魅力を発信していくことは美術館の大切な役割です。しかし、どうすれば「成功」と言えるのか、客観的な指標があるわけでもないので、いつも「もっとこうすれば良かった」「こんな方法もあった」という反省の連続です。

また、担当する展覧会ごとに新しいジャンルの作品を扱い、新しいチームで進めていきます。これまでの経験の蓄積は重要ですが、毎回ゼロからのスタートという感じです。自分の専門外の作品を扱う時は海外の文献を読んだり、専門家に話を聞いたり、勉強する機会も多いので、そういったことが苦にならない人が向いていると思います。

将来の目標や夢は?

やってみたい展覧会の企画はたくさんあります。例えば、子どもの頃にイタリアで見て感動した作品を、いつか日本で、みなさんに見てもらうことも夢のひとつです。

まだまだ美術館というと、「堅苦しい」や「美術好きが行く場所」というイメージを持っている人が少なくありません。私たち学芸員の仕事は、「美術」と「人」をつなぎ、美術の魅力や楽しさをたくさんに人に伝えることです。美術に詳しくない人でも、子どもでも、お年寄りでも、どんな人が来ても楽しんでもらえるよう、作品の見せ方や、解説や図録の文章の書き方などにおいて、「分かりやすく伝える」ことが目下の課題です。

文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部

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