【お仕事インタビュー】山岳遭難救助隊

【お仕事インタビュー】山岳遭難救助隊

きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。

今回は、山岳地帯で遭難者の救助にあたる山岳遭難救助隊員です。山岳遭難が起きた際、各都道府県警察にある山岳救助隊、地元の山岳遭難防止対策協会など、さまざまな部隊が救助に駆け付けます。ここでは、長野県警察の山岳遭難救助隊員として、ヘリコプターでの救助活動を担う方に話を聞きました。

伊藤さん
伊藤 瑛さん

35歳/12年目(山岳救助は10年目)
長野県警察
所属:地域部山岳安全対策課 救助係

この仕事についたきっかけ

子どもの頃から大学生までサッカーをやっていたので、体力を活かせる仕事に就きたいと思い、警察官になったのがきっかけです。当初は機動隊(警備実施の中核として治安警備、災害警備、雑踏警備などに当たる専門の組織)に入りたいと考えていました。

警察官として採用されると、警察学校での研修を経て、交番に勤務し、その後各部門に配属されます。私は警察学校時代に山岳遭難救助隊の存在を知り、「山岳救助の方がより自分の力が試せる」と思い、山岳遭難救助隊を希望をするようになりました。長野県は日本アルプスをはじめ登山家に人気の山々が集まっているため、全国から志願して長野県警察に入る人もいます。

仕事内容は?

長野県の松本空港内にある地域部安全対策課で山岳遭難者の救助に当たっています。

長野県の松本空港内にある地域部安全対策課で山岳遭難者の救助に当たっています。県内で山岳遭難が発生した際、ヘリコプターで現場に出動し、救助活動を実施。天候の関係などでヘリコプターでの救助ができないときは、地上からの救助も行っています。

ある日のスケジュール

8時30分 出勤
・出動準備
・訓練
(航空隊舎内等でロープワークや荷物を担いで歩荷トレーニングなど)
・書類作成

救助要請が入ったら……
情報収集(現場の特定、遭難者の状況、天候確認等)
ブリーフィング(出動クルーとの情報共有・確認)
ヘリコプターで現場へ出動し救助→病院へ搬送

空港に戻ったら、燃料補給や備品の整理・準備など

17時15分 退勤

登山者の多い7~9月は、同じ日に何件も救助要請があり、一日中ヘリコプターで出動することもあります。

遭難者救助の流れ

①通報を受けて、救助に向かいます。

②遭難者を発見後、ヘリコプターがホバリング(空中停止)をして、救助隊員をホイストと呼ばれるワイヤーウインチ装置で降下させ、遭難者のもとに駆けつけます。

②遭難者のケガの状況などを確認し、専用の救助用具を装着して救助隊員と遭難者を一緒にホイストで吊り上げ救助します。

③遭難者を病院に搬送し、空港に戻ります。

1件当たりの所要時間は1時間から2時間程度(場所や状況による)。ただ、「風が強い」「視界が悪い」などでヘリコプターが飛べない時は地上からの救助になるため、早朝から現場に出動し、下山が夜間になったりすることもあります。

長野県警察では主要な山岳地帯を管轄する5つの警察署に、地上部隊として山岳救助隊を配置しています。私の所属する課では、県内全域のヘリコプターでの救助と地上からの救助を担当しています。

仕事の楽しいところ・やりがい

無事に救助できて「ありがとう」と言っていただけるときはうれしいですね。そして、複数人で救助に当たるため、チームの力を結集してやり遂げた時は達成感が大きいです。

昨年あった現場では、午前10時頃に救助要請を受け、ヘリコプターで現場に向かいましたが、天候の関係で救助ができず、空港に戻って来ました。そこから出直し、地上からクライミング(岩登り)をして救助に向かったのですが、遭難者を交代で背負って下山し、無事に救急隊へ引き継いだのは午後8時。大変な現場でしたが、みんなで力を合わせて最後までやり切り、救助することができたのは感慨深いです。

仕事の大変なところ

やはり、現場が過酷だということです。

やはり、現場が過酷だということです。特に冬山での救助ですと、気温はマイナス10度以下、風速10m以上で、体感温度がマイナス20度になるというケースもあります。そうした状況ではさまざまなリスクを伴うため、情報収集や状況確認を行い、細心の注意を払いながらチームで救助に当たっています。

仕事につくために努力したこと

どちらかというとこの仕事に就いてからの方が努力したと言えるかもしれません。

どちらかというとこの仕事に就いてからの方が努力したと言えるかもしれません。訓練では30~40キロの荷物を背負って山に入ることもあり、体力をつけるためにプライベートでも山に入ってトレーニングをしました。今でも、公私ともにトレーニングを行い、救助現場で必要な筋力・体力の向上に努めています。

また、交番勤務時代は希望する山岳遭難救助隊に入隊できるよう、目の前の仕事をしっかり行い、実績を上げられるように頑張りました。

今後の目標は?

長野県警察の山岳遭難救助隊は結成されてから、まだ1度も殉職者が出ていません。先輩たちが築いてきてくださった歴史を大切にしながら、今後も救助に当たっていきたいです。

この仕事を目指す人へ

やりたいことを言葉にすることが大切だと思います。私も、「山岳救助をやりたい」と周りの人に言うようにしていました。ぜひ目標を明言して、夢を叶えていってください。

文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部

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