きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、救急車に乗り、傷病者の対応をおこなう救急医療のスペシャリスト、「救急救命士(消防士)」です。人の命に関わる最前線で働く方にお話を聞きました。

39歳/17年目
愛知県大府市の消防署に勤務
子どもの頃の夢は?
宇宙飛行士になりたいと思っていました。
この仕事についたきっかけは?
高校生の時、同じバスケットボール部の友達が練習中にケガをしたことがありました。その時、自分自身がもっと何かできたのではないかと思ったことが救急救命士になろうとしたきっかけです。
仕事内容は?
あくまで職業は「消防士」。その中で「救急救命士」の資格があるという位置付けになります。
消防署によって違いがありますが、私の勤務する大府市では火事の現場にも行きます。そのため、救急と消防の仕事、両方をおこなっています(消防は自治体単位の組織なので、所属によって違いがあり、救急車にしか乗らない救急救命士もいます)。
仕事の時間は8時30分から翌朝の8時30分までの24時間。その中で食事、入浴、休憩、仮眠 も取ります。
基本的には、出動に備えていることが1番の仕事。その時は何をしていても、指令があれば1分程度で出動します。なので、お風呂に入っている時が最もドキドキします。
現場での仕事の流れ
① 指令を受けて出動
(到着まで、平均8分位かかります)
② 現場到着。傷病者に接触し必要な観察や処置を行い、同時に関係者に状況を確認
(状況によっては点滴や、投薬などを医師の指示で行います)
③ 救急車の中へ傷病者を移動
(担架などを使用することが多いです)
④ 病院へ受け入れの確認
(コロナの影響もあり、最近は長くなる傾向にあります)
⑤ 病院へ向かう
(救急車は揺れに注意しながら運転しています)
⑥ 病院で医師へ申し送りを行い、必要書類を記載し提出
次に備えて片付けや機器のチェックを行う
⑦ 消防署へ帰る
(この途中で出動することもあります)
⑧ 消防署へ到着
(事務所で報告書の作成をします)
救急車の仕事は、病気やケガの人を病院まで搬送すること。必ずしもこの通りに活動するわけではありませんが、一般的な流れになります。
出動以外では、訓練、勉強会、出動した事案の検討会、事務処理、必要な機材の点検、掃除、トレーニングなど、月ごとにその日の予定が事前に決められています。ただし、出動が最優先なので、これらの予定はできなかったり、変わったりすることもあります。
訓練の中でトレーニングをおこないますが、各自が自由時間に走ったり筋トレをしたり、出動に支障がない程度でおこなうことも。そして、多くの人は休みの日に各自で体を鍛えています。
仕事につくために努力したこと
救急救命士の資格取得のための勉強(専門学校2年)と、地方公務員試験の合格のため勉強・体力向上に努めたことです。
多くの救急救命士は消防士として勤務しています。救急救命士になるためには、国家資格である「救急救命士」の試験に合格し、消防士試験に採用される必要があり、先に消防士になって、消防署から救急救命士の資格を取りに行くこともあります。
仕事の楽しいところ・やりがい
「楽しさ」という面では、正直あまり感じないかもしれません。でも、困っている人や助けを求めている人のために働くことは、大きなやりがいを感じます。
仕事の大変なところは?
24時間勤務でみんなと生活のリズムが違うこと。瞬時に判断を求められることや、頑張ったとしても必ずしも良い結果にならないところです。
将来の目標や夢は何ですか?
急に心臓が止まった人は、その場にいる人(バイスタンダー)の協力で結果が大きく変わります。AEDや心臓マッサージなど、以前に比べれば多くの人が知ってくれていますが、知っているからやれるとは限りません。
1人でも多くの人が、元の生活に戻れるように、AEDや心臓マッサージを普及していきたいです。
将来この仕事につきたい人へ
外から見る景色と、中から見る景色は違いがあると思います。現場では、充実感はありますが、楽しさはありません。苦しんでいる人やその家族に関わる仕事なので、常に緊張感を持ちながら活動しています。
また、どれだけしっかりと活動しても、良い結果や、傷病者が望んだ結果になるとは限りません。現場では理不尽なことも起こります。それでも、困っている人、助けを求めている人のお手伝いができることは、とても不思議な感覚。誰かの役に立てる、自分たちが必要とされていることは、大きなやりがいの1つです。
決して華やかな仕事ではなく、きつく、悔しい気持ちになることも多い仕事です。ただ、この仕事でしか感じることのできないことがあると思います。
誰かのために仕事をしたい、1人ではなくチームで仕事がしたい、何が起こるかわからないことを受け入れられる人は、ぜひこの仕事を目指してください! もし一緒の職場になったときは、みんなで助け合って頑張りましょう。
この記事の感想や「こんな人の話を聞きたい!」「こんな仕事に興味がある!」自薦・他薦問わず「この人にインタビューしてほしい!」など。みなさんの声をお待ちしています。
★投稿はこちらからどうぞ★