きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、食にまつわる人気の職業、国家資格の「管理栄養士」です。栄養士の活躍の場は、医療施設、介護保険施設、小・中学校、企業、行政、研究機関などさまざま。今回は、医療施設で栄養相談をおこなう管理栄養士の方にお話を聞きました。

37歳/14年目
岐阜県総合医療センター
管理栄養士
子どもの頃の夢は?
両親が小学校の教員だったこともあり、子どもの頃の夢は教員です。母親の影響で大河ドラマを見たり、絵を書いたりすることが好きだったので、歴史か美術の先生になりたいと思っていました。
仕事についたきっかけは?
小さい頃から、レシピ本を見てワクワクし、作るのも楽しくて、さらに友人にあげて喜んでもらえることもとてもうれしく感じていました。高校生の頃にはコンビニめぐりが日課となり、新商品をチェックして試すことにもはまっていました。
その頃には、食に関連した仕事・できれば商品開発などがしたいと思い、食について学べる大学に進学します。
高校・大学の時は、進路選択などで悩んだ際、先生方に相談する機会が多く、助けられ・仲間に支えられてきました。そのおかげで今の自分があるのだと思うようになり、自分も人が困った時に支えていける存在になりたいと考え、カウンセリングについての勉強会に参加するようになっていました。
大学で学んだ栄養学と大学の外で学んだカウンセリングをいかして、栄養相談業務などで病気で困った人のサポートができる仕事がしたいと思い、病院への就職を選びました。
仕事内容は?
病院での管理栄養士の仕事は多岐にわたります。入院患者さんの栄養状態の把握、食事内容や形態の調整、時には胃や点滴からの栄養補給のプランの提案、さまざまな分野のチーム医療への参加など。その中で主に私は、外来患者さんの栄養相談業務を担当しています。
1日の流れの例
8時30分
始業
・ 朝のミーティング
・予約の患者さんのカルテの最終確認
・栄養相談用の資料の準備
(患者さんの当日の予定を確認して、外来をスムーズに回れるように配慮します)
9時~12時45分
午前の栄養相談
・1件あたり30~45分
・必要に応じて体組成・握力の測定などを実施、食事記録の確認
・栄養相談後に診察がある場合は、医師に伝えたいことをカルテに記載
休憩
(予約状況によりばらつきあり)
13時30分~15時30分
午後の栄養相談
(化学療法中の患者さんの栄養相談の依頼が当日に入ることも)
15時30分
・栄養相談の記録作成
・翌日分の予約状況の確認と担当の振り分け
17時15分
終業
相談件数は日によって異なりますが、1日に6~9人の面談を実施しています。
仕事につくために努力したこと
・資格取得のための勉強
病院で働くためは国家資格である管理栄養士の合格が必須になるため、特に大学4年生の時はずっと大学の学習室や通学時間に勉強していました。
・調理の勉強
調理技術を磨くために創作イタリアンのお店でアルバイトをしていました。
下処理から自分の店で仕込みをしている店だったので、食材の扱い方なども学ぶことができました。
・カウンセリングの勉強
大学では学べないカウンセリング技術を磨くために、東京~大阪の範囲で勉強会に定期的に参加していました。
仕事の楽しいところ・やりがい
関わった方が元気になる姿を目の当たりにできることが一番のやりがいです。目の輝き・皮膚のハリ・肌の血色・髪の毛のつや・声色など、継続して面談すると良い変化を共有でき、うまくいったことを一緒に喜ぶことができます。
以前勤めていた病院は、毎週自分で献立を立てて、調理作業を手伝っていました。食事時間になると食事介助を手伝ったり、食べている様子を見に行ったりすることもあり、その時は、直接「おいしい」という言葉を聞けることがとてもうれしかったです。
長年、口から食べることができず点滴だけだった患者さんに対して、他の医療スタッフと相談しながら体調や好みにあわせた料理を試行錯誤して作ったことがありました。すると「おいしい」と言って食べてくれるようになり、日に日にその患者さんの状態が良くなり、自分で食事を食べ、起き上がれるまでに回復。その姿を目の当たりにした時には、すごく感動しました。
「食べる」ことは、人に活力や輝きを与えてくれるのだということを、患者さんから教えていただいています。
今の職場では、栄養相談時に使用するレシピを作成することもあります。あれもダメ、これもダメだとストレスになってしまうので、コンビニや冷凍食品の上手な使い方をお伝えすることも。「栄養相談」というとお説教されるイメージの方もいるのですが、その人のライフスタイルの中で楽しく取り入れられるものを提案できるよう心掛けています。
患者さんから「こんなアイディアもあるんだ」「実践しているよ」「おいしかったよ」などと言われるとうれしく思います。
仕事の大変なところ
病気の状態によっては、身体が機能しなくなり、生活習慣の変更を余儀なくされたり、精神的な不調をきたしたりする方もいます。「食」を通じたサポートに限界を感じる時は、自分自身のできる範囲を超えてしまうため、難しく感じます。
将来の目標や夢は?
栄養相談をもっと身近で楽しいものにしていきたいです。そして、栄養相談で見つけた気づきを実践できる場所を提供したいと考えています。
具体的には、おいしい食事をゆったりとした空間で食べたり、自分で作れるようになったりなど、食事や栄養に関するヒントを発信できる地域コミュニティを作りたいです。
そのために、さまざまな心理学の要素も取り入れて、相談者の方がその人らしく生きていける栄養相談の技法を体系化したいです。
将来この仕事につきたい人へ
今の自分の身体と心が健康であることは、当たり前ではありません。家族や学校の先生、友達、バイト仲間、顔は見えなくても多くの人がつながり、お互いに支え・支えられて生きています。
そういった日常に感謝をした上で、自分の強み知って食や栄養の分野でいかしたいという思いがあるならば、ぜひ、やってみたいと思うことにどんどん挑戦していくことをおすすめします。
また、自分や周囲の人の小さな良い変化に気がつくように視野を広げていってください。自分がリフレッシュ・リラックスできる手段もいくつか探しておくこともおすすめです。
この記事の感想や「こんな人の話を聞きたい!」「こんな仕事に興味がある!」自薦・他薦問わず「この人にインタビューしてほしい!」など。みなさんの声をお待ちしています。
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