きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、読者からリクエストのあった国際関係の仕事です。中でも、JICA中部で国際協力に携わる方に話を聞きました。

五十嵐 海里 さん
この仕事を選んだ理由は?

子どもの頃から「海外に行きたい」という夢がありました。通訳などの仕事も考えましたが、人の役に立つ仕事をしたいという思いから、国際協力に関心を持つように。特に原体験となったのは、中学生の時に青少年赤十字のタイ派遣プログラムに参加したことです。
このプログラムは東日本大震災で被災した中学生をタイに派遣するというプログラムで、宮城県出身の私も参加しました。タイ赤十字社が運営するヘビの血清センターや献血センターの見学、現地の家庭へのホームステイなど、現地での生活を肌で感じた経験は大きなものでした。
当時は「異国の人が、どうしてこんなによくしてくれるんだろう?」と思っていましたが、後にJICAや日本政府によるODA(政府開発援助)で、さまざまな国と信頼関係を築いてきたことを知ります。この経験から、日本と海外のつなぎ役として国際協力に携わる仕事がしたいという思いが芽生えました。
仕事内容は?
ラオス出張にて、起業家育成プログラムに参加した社会起業家を訪問した時の写真(五十嵐さん提供)
現在はJICA中部の市民参加協力課に所属し、主に2つの業務を担当しています。
- JICA海外協力隊事業
ボランティア募集事業の広報を行い、中部地域のみなさんの参加を促したり、帰国後、海外で培った経験を地域で活かすための支援をしたりしています。
- 草の根技術協力
自治体・大学・企業・NPO(非営利団体)など、地域のさまざまな組織と連携し、開発途上国の課題解決を目指すプロジェクトを企画・実施しています。
ある日の流れ
※事務所で作業をする日
9:30 出勤
メールチェック、その日の業務内容の確認
10:00 打ち合せ
外部団体の関係者とミーティング
11:00 資料作成
イベント用資料の作成
12:30 昼休憩
13:30 打ち合せ
関係者とオンラインでミーティング
14:30 事務作業
資料作成、問い合わせ対応、外部向け資料のチェックなど
17:45 退勤
出張などで外出する機会も多く、JICA海外協力隊の派遣前に協力隊員とともに自治体を表敬訪問したり、帰国して日本国内で活躍している隊員の活動を視察したり。海外出張では、JICAが実施する事業の1つ「草の根技術協力事業」の現地モニタリングや成果評価、カウンターパート(相手側の対応窓口)との打ち合わせなどを行います。
この仕事の楽しいところは?
ラオス出張にて、経営幹部養成プログラムに参加したIT系スタートアップを訪問した時の写真(五十嵐さん提供)
今の部署では、自治体や大学、NPO、企業など、さまざまな人と出会えることが大きな魅力です。それぞれの事業や国際協力への思いに触れるたび、新たな視点を得られます。
また、以前の部署ではアジア地域の中小企業振興や投資促進を進める技術協力プロジェクトに関わっていました。キルギスでの観光開発プロジェクトでは、世界遺産の遺跡を活用した絵付け体験や家庭での食事体験などの観光商品を地域住民と試行・開発。日本から、メールやオンラインでやりとりしながらサポートしていましたが、その後、現地へ足を運んだ際、商品が形になっているのを確認し、大きな達成感と感動を味わいました。
この仕事の大変なところは?
海外のさまざまな団体・組織と協働してきましたが、予測不可能なことの連続でした。出張直前にアポイントがキャンセルされたり、カウンターパートに人事異動があり、引継ぎなどないまま、突然担当者がいなくなったりしたことも。そうした時、臨機応変に対応する力が求められるのは、この仕事ならではの大変さです。
仕事につくために努力したこと

国際協力の仕事につくために、何か専門知識を身につけたいと考え、大学では法学を専攻し、社会をつくる基盤としての法律を学びました。現在の業務では、直接法律を扱う場面は少ないものの、法的な思考力が企画や提案の際に役立っています。
また、学生時代は英語力向上のために留学を経験しました。ただ語学を学ぶだけでは仕事に必要な力は身につかないと考え、留学生と共同で取り組む授業などに参加し、異文化環境でもコミュニケーションを図れるよう心掛けてきました。
国際協力の道に進むと決めた時点でJICAへの就職を考えていましたが、希望が叶って大学卒業後に入構し、今の仕事についています。
今後の目標は?
カンボジアにある、中小企業育成の拠点となっているカンボジア日本センターの写真(五十嵐さん提供)
JICAには、国際協力の枠組みにおいて多様な支援スキームがあります。それらを深く理解し、相手国の課題に寄り添いながら最適な提案が出来ることを目指しています。
そのためには、部署を超えて幅広い経験を積み、より柔軟で実効性のある国際協力を実現したいです。
この仕事につきたい人へ
国際協力に関わる仕事はJICAだけでなく、大学職員、NPO、国連職員など多様な形があります。私の場合は、たくさんの本を読むことで、自分のやりたいことを明確にしていきました。まずは、本を読んだり、人の話を聞いたりして視野を広げることで「自分は何をしたいのか」が明確になるのではないでしょうか。
ぜひ、積極的に情報収集をして、自分なりのキャリアの形を見つけていってください。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部
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