きずなネットでは、進路や職業選びの参考にしてもらえるよう、さまざまな仕事に携わる人の声を紹介しています。
今回は、気象データを収集・分析して、天候を予測する気象予報士です。活躍の場はさまざまですが、中でも、NHK名古屋放送局で天気予報を伝える気象キャスターとして活躍している方に話を聞きました。

この仕事を選んだ理由は?
小学生の頃から天気予報を見るのが好きな子どもでした。台風が来たり、警報が出たりすると、学校や部活の練習が休みになりますよね 。 そんな下心もあり、天気予報を見ていた記憶があります。
中学生の時に気象予報士という仕事を知り、「かっこいいな」と意識するようになりました。その時点では、特に気象予報士を目指していたわけではなく、高校、大学へと進学。大学は就職の選択肢が多いイメージから経済学部を選び、趣味でバンド活動などもしていました。
割と時間のある大学生活 だったため、それだったら「思い切って気象予報士を目指そう」と一念発起。大学1年から勉強を始め、4年の夏に合格しました。大学卒業後は、気象キャスターを全国の放送局に派遣する「オフィス気象キャスター」に入社し、これまでに中京テレビ、 KFB福島放送、そして現在のNHK名古屋放送局と、各地の放送局で天気予報を担当してきました。
仕事内容は?
気象予報士の仕事は簡単に言うと、気象庁などが発表する気象データを収集・分析しながら天気を予想し、公に発表することです。中でも私はテレビを通して天気予報を伝える気象キャスターとして、現在、平日はNHK名古屋放送局の番組に1日6回出演。天気はもちろん、みなさんの暮らしが便利で豊かになるような生活情報もお届けしています。
放送がある日の流れ
3時 起床、朝食
3時45分 NHK名古屋放送局に出社
早朝のため、自宅からタクシーで放送局へ。到着したら、用意された衣装に着替える
4時 気象データを確認
その時点での気象データを確認・分析し、放送で伝える内容をまとめる
5時10分 ヘアメイク
5時30分 放送準備
解説画像やテロップの作成を依頼するなど、放送前の最終準備を行う
5時56分~5時59分 放送本番
気象情報コーナー(東海・北陸地方向け)に出演
6時28分~6時30分 放送本番
気象情報コーナー(東海・北陸地方向け)に出演
6時53分~7時 放送本番
気象情報コーナー(東海3県向け)に出演
7時45分~8時 放送本番
「おはよう東海」の気象情報コーナー(東海3県向け)に出演
8時 休憩
連続テレビ小説を見て、昼食をとる
9時 気象データを確認、放送準備
気象データを確認・分析し、放送前の最終準備を行う
11時30分~12時 放送本番
東海北陸地方の魅力を伝える情報番組「ぐるっと !」に番組MCとして出演。気象情報コーナーも担当
12時 翌日の準備
翌日の放送の準備などを行う
14時 退社、帰宅
17時 夕食
19時30分 就寝
平日は朝6時前の番組に出演するため、早朝に起床し、出社するスタイルです。2024年4月からはお昼前の情報番組「ぐるっと!」の番組MCも担当。気象キャスターの枠にとどまらず、いろいろな情報を届けるお手伝いをしています。
この仕事の楽しいところは?
気象予報士は、例えば気象衛星からの雲画像やアメダスのデータ、気象レーダーによる雨雲の動きなど、さまざまな気象データをもとに、日々変わりゆく天気を予想しています。さらに、私は気象キャスターとして、それを自分の言葉で直接みなさんにお届けしていて、予想から伝えるところまで一貫して出来るというのは楽しいですし、やりがいがありますね。
日々天気と向き合っていると、天気からその土地の魅力を再発見することがあります。例えば、以前勤務していた福島県だと、寒暖差が大きく米づくりに適した気候のため、地酒が有名ですし、愛知県だと日照時間が長いので、花の栽培が盛んです。そうした発見がある度に、その土地のことがもっと好きになりますね。
さらに、天気はみなさんの生活に直結しているので、例えば、「今日は洗濯日和です」とか「午後から雨なので、傘を持って出かけてください」とか、暮らしが 豊かになるような情報を届けられることもうれしいです。
この仕事の大変なところは?
何と言っても、時間との戦いです。時間には2つあって、1つ目が放送時間までに情報を整理し、まとめること。そして、2つ目が決められた放送時間の中で、必要な情報を的確に伝えること。刻々と変わる天気と向き合いながら、みなさんに分かりやすく、役立つ情報をお届け出来るよう奮闘しています。
さらに、みなさんの大切な命と財産を守るため、防災情報を伝えることも気象予報士・気象キャスターの大切な使命です。私が「大雨で危険なので、避難してください!」と呼びかけた際、「まあ、この程度だったら大丈夫だろう」と、行動に移してもらえないことがないよう、日々試行錯誤しています。
仕事につくために努力したこと
気象予報士になるためには、国家資格である気象予報士試験に合格しなくてはなりません。試験科目には力学や熱力学など、物理の知識も必要になりますが、私は根っからの文系人間。勉強には非常に苦労しました。
試験直前には、朝から晩まで大学の図書館にこもって勉強していましたが、結局最後まで受かる自信はなかったため、試験勉強と並行して就職活動も行っていました。
就職活動では、防災や報道に興味があったので、メディア業界を中心に応募。地元である愛知県のケーブルテレビに内定をいただき、入社準備も進めていました。そんな中、大学4年生の夏に気象予報士試験に合格したため、改めて気象予報士としての就職活動を行い、現在の会社に入社することを決めました。
気象予報士の活躍の場はさまざまあって、私のように気象キャスターとして、各地の放送局と契約を結んで出演するほか、地方自治体に所属して防災情報を発信したり、民間の気象会社で予報業務を行ったり。また、海運や航空業界など、気象と密接に関わる企業に入って、専門知識を活かして働いている方もいます。
今後の目標は?
気象予報士の大きな使命は、防災情報を伝えて、みなさんの大切な命と財産を守ることです。最近では、各地で異常気象による災害が頻発しています。私たちが発信する情報で、少しでも被害を減らすことが目標ですし、そう出来るよう努力をしたいと思っています。
この仕事につきたい人へ
もし、「天気に興味がある」「空を見るのが好き」などという気持ちがありましたら、その興味や関心を大切にしてください。そして、毎日、空を見上げ、天気を意識してみてください。そうすると、真っ赤な夕焼けや雨上がりの虹など、きれいな景色に出合う可能性が高まります。
例えば、私の好きな気象現象の1つが虹です。一口に虹と言っても、みなさんがイメージする7色の半円形の虹だけでなく、太陽の周りの雲が虹色に色付いて見える彩雲や、太陽の周りに虹色の光の輪が出現するハロ(日暈)など、いろいろな種類があります。
土井さんが撮影した虹
土井さんが撮影した彩雲
毎日空を見上げて、気象のメカニズムを少し勉強することで、「今日の天気は、虹が出そうだな」と、予想できるようになり、もっと天気が好きになりますよ。そして、そうした経験は、将来気象予報士になった時にもきっと役立つと思います。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部
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