心と体を解き放つ、子どもの「やりたい!」をかなえるプレーパーク

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「のびのび外遊びできる場所がない」、「習い事で放課後が埋まってしまう」……。中部電力が企画・開催した小学校低学年のお子さまをもつお母さん、お父さんによるワークショップでは、子どもの遊び場や時間の使い方に関する悩みの声が、たくさん聴かれました。
今回、中部電力ICT戦略室の奥村香保里が取材したのは「てんぱくプレーパーク」。プレーパークとは、子どもがやってみたいことに挑戦できる「禁止事項のない遊び場」です。自然の中で弾ける子どもたちの生き生きとした表情に、奥村も心を動かされていました。

大人の役割は子どもの自由を見守ること

名古屋市南東部、「天白公園」の一角にある「てんぱくプレーパーク」は、雑木林の中に広がる100㎡ほどの空間です。

プレーパークは全国に400箇所以上ありますが、多くは「第2○曜」など限られた日程での開催で、常設型のプレーパークはまだまだ少ない状況。ここ、てんぱくプレーパークは数少ない常設型の一つで、火曜〜金曜と第3土曜と翌日曜の10時から17時までの開園時間内なら誰でも自由に利用できます。

0歳から120歳まで!誰でも遊べる場所

発端は1982年。名古屋市が天白公園整備計画を提示したことをきっかけに、地元住民は「天白公園を考える会」を立ち上げました。会のメンバーが中心となり、学習講演会、政策提言、市民参加イベントなど多彩な活動をする中で、東京都世田谷区の羽根木プレーパークを視察。その主旨に共鳴した地域住民らによって非営利団体「てんぱくプレーパークの会」が発足され、愛知県初のプレーパークを開園しました。

現在は、代表である沢井史恵さんをはじめ、プレーパークに常駐し子どもの遊びを見守るプレーリーダーの雪岡抄代子さん、地域住民を中心とした10名ほどの役員と世話人、近隣のお母さんたちの協力によって運営されています。

てんぱくプレーパーク代表の沢井史恵さん

沢井さんいわく、大人の役割は、原則として見守ること。プレーパークでは、「危ない」「汚い」「やってはダメ」「早くしなさい」という口出しはNGです。何をして遊ぶか、何をして過ごすかは子どもの主体性に任せています

木に登ったり、落ち葉を敷き詰めたプールに飛び込んだり、火をおこしてべっこう飴をつくったり。子どもは自然と対話しながら、思いつく遊びを次々と実践。大人の都合で決められた予定や制限から解放され、「やってみたい!」と思うことにどんどんチャレンジしていきます

小屋の屋根から落ち葉プールへダイブ!
焚き火でのべっこう飴づくりは冬の定番

かつては保育士として、保育の現場に携わっていた経験をもつプレーリーダーの雪岡さんは「大人が教えることなんて何もありません。子どもの発想に追いつくことで精一杯。子どもたちが思いついたこと、やりたいことを試行錯誤しながら実現できる環境を考えていくこと、手出し口出しをせず見守るのが私(大人)の役割です」と話してくださいました。

プレーリーダーの雪岡さん(一番右)

危険から遠ざけておけば安全?

とはいえ、野外でわんぱくに遊ばせるとなると、子どもがケガをしないか心配になるのが親心。危険から遠ざけるあまり、外での遊ばせ方がわからないお母さんも多いそうです。そんな声に対して沢井さんはこう答えます。

「危険を測るのは経験値、感覚。たとえば小さいときに転んだ経験がないと、大きくなって転んだとき、受け身がとれなくて大ケガをしてしまうかもしれないですよね。火を使った遊びにしてもそう。慣れている子は火の怖さも知っています。火に慣れていない子は、上手な子の手元をしっかり見て、扱い方を学んでいくんです」

初めの頃は、戸惑いながらも興味津々

プレーパークは、上級生の動きを見て経験を積みながら怖い、危ないという危機管理能力を自然と身につけていく場。もちろん、本当に危ない局面では、プレーリーダーをはじめとした大人がすぐさまストップをかけます。

ときには大人から見てヒヤヒヤする場面も

「イギリスで遊び場づくりを推進していた方の言葉に、心が折れるより、骨が折れる方がまし!というフレーズがあるんです。近年は子どものケガには敏感なのに、心が折れることには鈍感な大人が増えているのでは……と感じます」

また、「危険を取り除くことばかりを考えすぎず、子どもを信じて解き放つことで、お母さん自身も心を解放してみてほしい」と言葉を継いでいました。

子どもが安らげる場所の選択肢の一つに

プレーリーダーの雪岡さんのお話では、最近の小学生は習い事などで忙しく、プレーパークへ来ても15分しか遊べないこともしばしば。がんじがらめになっていて、自分が本当に暇だという時間=遊びの時間がないと言います。

代表の沢井さんは「遊びとは本当の意味で心が解き放たれることです。子どもにとって遊ぶということは、食べる、寝ると同じくらい生きるために必要なこと。最近の子どもたちは常に評価にさらされている。失敗も成功もない、評価を必要としない遊びの中で思いきり自由に過ごしてほしい」と語っていました。

何の制約もない中、思いついた遊びを楽しむ

雪岡さんも言います。「子どもが自分らしくのびのびできる場所が必ずしもプレーパークというわけではない。その子にとって、のびのびできる場所、ほっとできる場所があればいい。児童館や学童、トワイライトスクール、習い事など、その選択肢の一つにプレーパークがあればいいなと思っています。暇な時間がないと思いきり遊ぶ、遊び込むまではいかないかもしれないけれど、子どもたち一人ひとりに、そんな時間や場所、仲間があってほしいです。」

大人や若者も集まる多世代交流の場に

プレーパークは開園時間内であれば来る時間も帰る時間も一切拘束はなく、誰でも無料でいつでも遊べる場所。平日の午前中には主に未就園児とお母さん、午後になると保育園や幼稚園帰りの親子、夕方になると小学生といった具合に、自然に人が集まって交流し、いつの間にかそれぞれ家路につきます。

取材当日は、月に1回、不定期で開催される「森のランチ会」の日。薪を使って火をおこし、参加者が各自持ち寄る野菜を入れ、バラエティに富んだ具だくさんのキムチ鍋と豆乳鍋をつくりました。

豆乳鍋は子ども用、ピリ辛キムチ鍋は大人用

冬の開園日は、ほぼ毎日かまどで火を焚くので、その日の食材やアイデアに合わせてマシュマロやみかん、パンを焼いたり、お母さんたちはコーヒーを淹れたり。寒空の下で火を囲みながら、大人も子どもも自然に会話が弾みます。

ほくほくの焼き芋の甘さに子どもたちも感動

ビギナーが参加しやすいようにと開園している第3土曜・日曜は、中学生や高校生たちも集まり、世代を超えて子どもたちが遊びを通して交流します。週末の開園日に限らず、学校帰りなどにふらりとここを訪れて、学校や友人、親子関係の悩みを吐露する中学生や高校生も多いとか。

参加している保護者からは「うちは一人っ子なので、ここに来ることで兄弟姉妹のような上下関係を体感しているみたい」、「先輩ママに話を聴いてもらうだけで、気持ちが楽になります」、「子育ての悩みで一人モヤモヤしているとき、家の子もそうだったよ!という一言に救われます」という声が続々。子どもにとっての遊びの場であるだけではなく、大人にとっても羽休めの場になっているようです。

「楽しいから」とママだけで来ている人も

認知を広げ、他の地域にも増やしていきたい

今後の課題については、資金面とプレーリーダーの人材確保。プレーリーダーの人件費などは現在、プレーパークの主旨に賛同してくれた方々による会費やカンパでまかなっている状態で、その他の材料費などは役員や世話人たちが持ち出しをするケースもあるのだとか。

オリジナルTシャツの売上げも重要な資金源に

「今後はNPO法人化をめざし、行政の協力も仰ぎながらプレーリーダーの人員を増やすことで、もっと多くの方に楽しんでいただける環境を整えたい。土曜・日曜開催を増やすことや、セミナーの開催などを通じて、プレーパークの理念を広く知ってもらい、いろいろな地域に増えていって欲しい」と沢井さんは話してくださいました。

取材をしたICT戦略室の奥村は「たとえば人材確保の面では、大学生とのマッチングの機会創出なども方法の一つ。プレーパークを知ってもらうためのワークショップやセミナーなどの際には、民間企業として場所提供の面などからもバックアップできるかもしれない」と協力に向けての可能性を模索していました。

子どもたちのエピソードに笑みがこぼれる

Profile

「てんぱくプレーパーク」代表 沢井史恵さん
瀬戸市生まれ。結婚を機に天白区へ移住。長女を出産後「天白公園」を散歩していたときに「てんぱくプレーパーク」の存在を知り、参加するように。パートタイムの仕事をしながら役員を務め、2012年5月、前代表からの要請により代表に就任。現在は児童館の職員として勤務しながらプレーパークの普及に努める。
「てんぱくプレーパーク」プレーリーダー 雪岡抄代子さん
小学校6年生の息子をもつママ。保育士として大阪の保育園で勤務し、結婚を機に名古屋へ。出産後はパートタイム勤務などで保育の現場に携わる。息子と一緒に「天白公園」で遊んでいたとき、偶然通りかかった「てんぱくプレーパーク」の活動に賛同。保育士への再就職なども検討したが「これが一番やりたかったこと」と志願してプレーリーダーに。

参加した中部電力社員のコメント

ICT戦略室 奥村香保里
ワークショップなどを通じ、習い事などに追われて忙しい小学生の実態を目の当たりにしましたが、ここは小学生にとって安らぎの場になっていると感じました。上級生の子は、下級生の子が挑戦していることに手を出しすぎることなく、遊びを通して自然に面倒をみている。理想的な多世代交流の形なのかもしれません。またお母さんたちは、大人の時間や都合に合わせるのではなく、子どもたちのペースに合わせて動いているという印象を受けました。
今後は地元の民間企業として、課題である人材の確保や、プレーパーク自体の認知度向上のためのきっかけづくりの面などをサポートしていけるしくみづくりを考えたいです。

文/花野静恵

撮影/北川友美・小塚清彦

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