みんなで学び、考えるイベント@長久手市。子どもの自主性を引き出すには

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テーマ:子育て

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子育て世代の皆さんとつながる中で、より子育てしやすいまちづくりに貢献したいという思いからスタートしたCOE LOGの活動。長久手市長をはじめ識者の方へインタビューをしたり、子育て世帯を訪問して生の声を取材したりするなど、リアルな子育ての実態を探る活動を続けてきました。
その中で浮き彫りになってきた課題の一つが「子どもの自主性」。子どもの「これがやりたい!」を引き出すために、親として何ができるだろう、という思いから、長久手市と長久手市のNPO法人ながいくの協力のもと、長久手市文化の家を会場に「子どもの自主性」について考えるイベントを実施しました。今回はその様子をレポートします。

みんなで一緒に学ぶ講演会&共に考え、シェアするワークショップ

未来を生きる子どもの自主性を引き出すために、大人ができることとは? その道標を探る講演会とワークショップを開催しました。

人生100年時代、大切なのは「意思決定」すること

イベント第1部ではふたりの専門家を招いて講演会を開催し、子どもの自主性とは何か、どう引き出せばよいのかなどをお話ししていただきました。
1人目の登壇者は湯川カナさん。

小学校6年生の娘さんを子育て中の湯川さん

一般社団法人リベルタ学舎代表理事で兵庫県広報官 。早稲田大学在学中に学生起業に参加し、Yahoo! JAPANの創設メンバーに。その後、数億円分のストックオプションを返上してスペインに移住。10年後に帰国して女性や若者の社会参画や起業を支援するリベルタ学舎を設立されました。

湯川さんはまず、「なぜ今、自主性が必要とされるのか」という観点から解説。2007年生まれの子どもの半数以上が107歳まで生きる時代になるという推計データと、倒産企業の平均寿命が23.2年であるというデータを比較し、たとえ企業や組織の後ろ盾がなくなっても仕事ができる、生きていける人になる必要があると訴えました。

その上で「AIが進化する時代では、テクニックや判断といった、機械の方が早く確実にできることを生業にしていては、人間は職を失ってしまいます。変化の激しいこれからの時代を生き抜くために人間がやるべきことは、自分自身の『主』として、意思決定することです」と語りました。

子どもの存在自体を認めよう

また、スペインでの子育て経験を踏まえつつ、スペインと日本の価値観の違いにも触れました。「これから100年生き抜く子どもを育てるには『DO』を褒めずに、『BE』を認めることが大切です。「○○ができて偉いね!」などと言って褒めるというのは、実は保護者自身や、やがて過去のものとなる現代の価値判断を押し付けることになります。第三者に認められるよりも自分自身を肯定できることが大事。そのためには『早く、ちゃんと』『できたこと』を褒めるのではなく、『存在自体』や『あり方』を認めることが重要です」と、会場に集まった保護者に向けて熱く語りかけました。

「第三者に認められることよりも自分自身を肯定できることが大事」と話す湯川さん

講演の最後には「見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい」というマハトマ・ガンディーの言葉を引用。子どもの自主性を育むためには、まず保護者自身が自主性を持って生き生きとした人間になり、その背中を見せることが大切であるとメッセージを送りました。

遊びがゴールで学びが手段となるやりとりを

2人目の登壇者は金子遥洵(ようじゅん)さん。

2009年以来、東京都付近で子どものやる気を引き出すためのワークショップを実施する金子さん

特定非営利活動法人Motivation Maker代表理事。東京大学大学院在学中にMotivation Makerの活動に加わり、2014年6月代表理事に就任。おもに小学生向けのワークショップの企画や運営を手がけています。

金子さんは、「子ども自身が自分の好きなことをわかっていて、周りの人もそれに気づいている状態が理想です。そのためには、子どもがやりたいと思うことを口に出して話せる環境をつくってほしい」と呼びかけました。そうすることで「大人としては、会話を通して子どもの興味を広げたり深めたりするきっかけをつくることができますし、子どもとしては、自分の話を聴いてもらえるのだという安心感が生まれます。『やりたい!』を発言できる環境があれば、子どもが興味の芽を抑えてしまうことはなくなるはずです」と解説しました。

また自主性を引き出す方法として、4つのアイデアを提示しました。

  • 大人が自分の好きなものを大切にする
  • 保護者自身が「すごい」と思うものを子どもと一緒に見る
  • 興味を引き出して深める問いかけをする
  • 大人の期待を先読みさせない工夫をする

中でも、興味の引き出し方についての例として、単に漢字の勉強を強いるのではなく、かるた形式のカードゲームをするという遊びの要素を目的に掲げたという実例を紹介。子どもはかるたをやるために、漢字を調べたり、大人に聞いたりしながら漢字を使ってカードを自作したそうです。「遊びがゴールで、学びが手段。学びが手段となるようなやりとりが大事です」と語りかけました。

「ゲームの要素を取り入れる工夫も効果的」と金子さん

2人の講演の最後は、会場に集まった保護者からの質問タイム。

ー 子どもが苦手な教科は、強要しない方が良い?

湯川

やりたいことや目的があって、そのために必要なことならするようになる。子ども自身が必要性に気づくことが大切

金子

例えば地学や物理が苦手なら、科目名ではなく、宇宙とかロボットなど、子どもが関心を抱きそうな言葉に置き換えると興味を引き出しやすいのでは

ー 習い事を辞めたいという子どもの意思を、どの程度尊重するべき?

湯川

辞めたいのに続けてもいつか嫌いになってしまう。なぜ辞めたいのかを、まずはきちんと聴くところから始めては

金子

一生続けると思うと辛くなるので、2年間など期間を区切ってみると良いかもしれません

参加者と活発な意見交換がおこなわれました

ストーリー仕掛けのワークショップに挑戦!

第1部の講演会で、子どもの自主性について専門家から多くのヒントを得た参加者の方々。第2部では、そのアドバイスや気づきを踏まえて、子どもの自主性を引き出す方法について具体的に考え、アイデアを出し合う参加型ワークショップを行いました。
ワークショップの設計は、ワークショップデザイナーの臼井 隆志さんにご協力いただきました。

「小学校の頃好きだった人」というテーマで自己紹介

ワークショップ前半では、ストーリーをつくるというグループワークを実施しました。登場人物は、かなえたい夢を持つ主人公、それを阻む対立者、力を貸してくれる協力者という3人。この主人公が自分の子どもだったら・・・と想像しながら、夢をかなえる方法を考えます。

設定を考え、イラストを描いてイメージを共有

ここで重要になるのが、「協力者」の存在です。次のステップでは、主人公が好きなことに夢中になれる環境をつくるために、協力者は何をすればいいのか、具体的なアドバイス、サポートなどをみんなで考えました。

主人公のために協力者ができることをどんどん書き出す

「主人公の失敗も成功も受け止めて共感する」
「相談に乗る」
「対立者を叱る、説得する」
「昔話をする」
「素敵な本を貸す」
「最近のやり方を伝える」
「褒めまくる」

などさまざまな方法が書き出されました。

自分と子どものストーリーを他者目線で見直す

ワークショップ後半では、参加者自身が子どもの「協力者」になるにはどうしたらいいか、考えました。
グループ内で、「話をする人」「話を聞く人」「観察する人」に分かれ、一人ひとりの話をじっくりと聴いていきます。

持ち時間が足りないほど話が盛りあがるグループもありました
  • 子どもが熱中している間はできる限り自由にさせてあげたい
  • 子どものやりたいことを認めたいけれど、親としての立場もある
  • 本人にとっては何気ない行動や声かけでも、他の家庭から見れば参考になることも

お互いにいいところを見つけ合い、自分にはなかった視点で考えてみたことで、視野が広がりました。

付せんを貼る場所がなくなるほど、たくさんの意見が集まりました

最後に、参加者全員で意見をまとめました。

参加者の皆さんは、子どもの自主性を引き出すために、今日からできるたくさんのヒントを持ち帰ったようです。

子ども向けワークショップでは自由な発想が開花!

保護者の学びの場である今回の講演会とワークショップと同時に、子どもたち自身の自主性を引き出すワークショップも開催されました。

第1部の講演会の時間を使い、子どもたちは段ボールを使った工作に挑戦。工作教室は、栄徳高校の学生や長久手市職員、そして長久手市で子育て支援に取り組むNPO法人ながいくのコラボチームにより実施されました。

段ボールで思い思いの電車をつくって、電車ごっこ♪

第2部の時間では、お父さん、お母さんと同様に、主人公と対立者、協力者のキャラクターを考えて人形づくり。主人公を自分に置き換えて、好きなことを思いきりできるような、理想の学校や公園について考えました。
ワークショップには、第1部講演会の登壇者である金子さんも参加。あっという間に子どもたちと打ち解け、人気者になっていました。

次々とキャラクターが完成し、壮大なストーリー展開に!?

できあがったものを見たお父さん、お母さんからは「家だとつい、汚れるから散らかるからと止めてしまうけど、こんなに工作が好きだとは思いませんでした」、「こんなことを考えつくなんて驚きです。家でももっと伸び伸びと考えたり、つくったりする時間を持てるようにしたいです」との感想が聞かれるなど、子どもたちの自由な発想や伸びやかさなどを、改めて実感する機会になったようです。

参加した中部電力社員のコメント

栗林 修
長久手市の施設をお借りし、市役所の方やNPO法人ながいくの方にもご協力いただきながら、今日、長久手市でイベントを実現できたことは一つの成果だと感じます。社会全体として、今後はより一層子育て支援が大きなテーマになると思いますので、今日のようなコミュニティづくりの場を通して、行政と地域住民の方の橋渡し役を担っていきたいです。
梶田瞳美
今日のイベントは、これまでのCOE LOGの活動を通じて築きあげてきた長久手市役所や地域の方との信頼関係があればこそ、実現できたのだと感じました。今後継続していくためにも、自治体、長久手市民の方、NPO法人、子どもたちなど、それぞれの立場や個々人の視点から感じたことを振り返り、整理することが先決だと思います。
松下洋平
新しい展開を考える上では、自治体や地域の方と共に考え、取り組むということが出発点になるのだということを今日、痛感しました。そのまちに暮らす人、子育てをする人など、当事者の方の生の声が、一番エネルギーを持っているということを強く感じたので、引き続き皆さんとの協力態勢を強化していきたいと思っています。

イベント情報

「自分でやる子」を育むコミュニケーションとは?
みんなで一緒にまなび、考えるワークショップ&講演会

  • 日時:3月24日(日)13時~16時
  • 場所:長久手市文化の家(愛知県長久手市)
  • 第1部/専門家による講演会「子どもの自主性ってなんだろう?」
    <登壇者>
     湯川カナさん(一般社団法人リベルタ学舎 代表理事/兵庫県広報官)
     金子遥洵さん(特定非営利活動法人Motivation Maker代表理事)
    第2部/参加型ワークショップ

文/花野静恵

撮影/古川寛二

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