インクルーシブ教育とは?簡単に解説!日本の実践例や現状の課題

インクルーシブ教育とは?簡単に解説!日本の実践例や現状の課題

インクルーシブ教育という言葉を耳にしたことはありますか。インクルーシブ教育とは、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもを受け入れる教育を指します。
人間の多様性を尊重する共生社会の実現に向け、学校や教育委員会でさまざまな取り組みが進められています。
今回は主に、小学校におけるインクルーシブ教育システムの取り組み例や課題をご紹介します。

インクルーシブ教育とは

インクルーシブ教育(インクルーシブ教育システム)は、障がいのある子も障がいのない子も一緒に学ぶことです。

インクルーシブ教育(インクルーシブ教育システム)は、障がいの有無にかかわらず一緒に学ぶことです。

文部科学省の「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」には、下記のように記載されています。

障害者の権利に関する条約第24条によれば、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。

「障害者の権利に関する条約」では、障がいの有無にかかわらず同じように教育の機会が与えられ、個々に合わせた「合理的配慮」を受けられる教育システムが必要だと示されています。
2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」で「インクルーシブ教育」が取り上げられ、2013年に「障害のある子供の就学先決定の仕組みに関する学校教育法施行令」の改正。そして、2017年~2019年にかけて「特別支援学校や小学校等の学習指導要領等の改訂」が行われました。
子ども一人一人の教育的ニーズに適用するしくみづくりが進められています。

現在のインクルーシブ教育

インクルーシブ教育の目指すべきところは、障がいのある子とない子が可能な限り一緒に学ぶことです。

インクルーシブ教育の目指すべきところは、障がいの有無にかかわらず可能な限り一緒に学ぶことです。
ただし重要なのは、子どもが学校で充実した時間を過ごし、一人一人が自分に合った教育を受けられるしくみを整えること。
そのためには、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校が連携した「多様な学びの場」を用意する必要があると考えられています。

通常の学級で授業を受けつつ、障がいに応じた特別な指導を受けるかたちの「通級」もその教育の1つです。

東京都の「通級」による指導は、特別な指導の場として「特別支援教室」や「通級指導学級」が設けられています。「特別支援教室」は、指導員が在籍校に訪問し、通っている学校で特別な指導を受けるもの。「通級指導学級」は、通っている学校以外の場所で特別な指導を受けるもので、東京都では弱視通級指導学級、難聴通級指導学級、言語障害通級指導学級(小学校のみ)があります。
通級による指導の実施形態は、自治体によってさまざまです。

文部科学省では、2021年に特別支援教育に関する方向性が改めて示されました。

特別支援教育をさらに進展させていくため、

  • 障がいのある子とない子が可能な限り一緒に教育を受けられる条件の整備
  • 通常の学級と通級による指導、特別支援学級、特別支援学校などの連続性のある多様な学びの場の充実・整備

の2点が掲げられています。

可能な限り一緒に学ぶことを目標とし、それを実現するために一人一人に合った教育が受けられるようシステムを構築している。というのが、インクルーシブ教育の現状だと言えそうです。

小学校の取り組み事例

文部科学省が2016年に実施したインクルーシブ教育システム構築モデル事業では、「学校での取り組み」、「地域の取り組み」、「地域内の幼稚園から高校までの教育資源を活用する取り組み」の3つに分類され、それぞれに実践研究が進められました。

文部科学省が2016年に実施したインクルーシブ教育システム構築モデル事業では、「学校での取り組み」、「地域の取り組み」、「地域内の幼稚園から高校までの教育資源を活用する取り組み」の3つに分類され、それぞれに実践研究が進められました。

2021年には、特別支援教育を実現させるための具体策として、下記項目が示されています。

  • 就学前における早期からの相談・支援の充実
  • 特別支援学校における教育環境の整備
  • 小中学校における障がいのある子供の学びの充実
  • ICT利活用等による特別支援教育の質の向上
  • 関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実

「小中学校における障害のある子供の学びの充実」には、障がいのない子とともに学ぶことも含まれます。
具体的には、

  • 特別支援学級と通常学級の子が共に学ぶ活動の充実
  • 小学校で専門性の高い通級による指導を受けるための環境整備
  • 通級による指導等の多様で柔軟な学びの場の在り方の更なる検討

などが示されています。

「通級」による指導は、取り入れている学校も多いのではないでしょうか。障がいの程度に応じて、通級の頻度も異なります。
また普段は通常学級と特別支援学級で分かれているものの、行事は一緒に行うなどの取り組みをしている学校もあるようです。

インクルーシブ教育の課題

インクルーシブ教育はシステムが確立されているとは言えず、まだまだ課題も多いといえるでしょう。
子どもたちが多様性を受け入れられるのか、授業に遅れが出ないか、先生のクラス運営の負荷の増大などの問題も考えられます。
障がいのない子が相手を理解し受け入れられるか、いじめなどにつながらないかも、懸念される点です。
学校に任せるだけでなく、家庭でも子どもと話し合ったり、本や映画などを通じて親子で理解を深めたりすることも必要かもしれませんね。

SDGsにつながるインクルーシブ教育

持続可能な開発目標であるSDGsにも、インクルーシブ教育の理念につながる目標が定められています。

持続可能な開発目標であるSDGsにも、インクルーシブ教育の理念につながる目標が定められています。

  • 目標4「質の高い教育をみんなに」
    すべての人に包摂的かつ公正な質の高い 教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
  • 目標10「人や国の不平等をなくそう」
    国内及び各国家間の不平等を是正する

インクルーシブ教育システムの導入により、これらの目標達成に近づくはずです。
学校や障がいのある子の問題だけではなく、障がいのない子や保護者、社会の理解が欠かせません。学校だけでなく地域内で、障がいのある子と交流する機会を持つことでお互いの理解を深められるのではないでしょうか。

SDGsについては、SDGsとは?簡単に解説!みんなに聞いた今日からできることの記事も参考にしてみてください。

最後に

インクルーシブ教育の理念は、障がいの有無にかかわらず一緒に学ぶことです。
現状、多くの学校では一緒に学ぶための体制づくりや啓もうの段階にあると言えます。
SDGsの目標達成が求められる中、今後は学校でもさらに障がいの垣根を超えた学びの場が設けられていくはずです。
学校に任せるだけでなく、共生社会に向け、親子で話し合うことも大切ですね。

文:COE LOG編集部

あわせて読みたい

参考:
文部科学省│インクルーシブ教育システム構築モデル事業の概要図
文部科学省│インクルーシブ教育システム構築モデル事業 成果報告書(概要)
文部科学省│障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~
文部科学省│新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議 報告

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