睡眠は大切。頭では分かっていても、毎日忙しくて、慢性的に睡眠不足だという方もいるのではないでしょうか。そして、疲れているのになかなか寝付けない、寝ているはずなのに疲れがとれないなど。睡眠の「質」に関して悩みを抱えている人もいるかもしれません。今回は、「眠れない」「寝つきが悪い」という悩みを抱える方に、睡眠健康指導士が寝る前に避けたいこと・おすすめの快眠方法をご紹介します。
筆者:三輪田理恵(みわた りえ)
日本睡眠学会正会員・上級睡眠健康指導士・全米NLP協会公認NLPトレーナー
ライターとしてさまざまな分野の記事を執筆しながら、企業・学校・行政などで睡眠やメンタルに関する講座、個別コンサルティングをおこなう。
著作に『なぜ、あの人はよく眠れるのか』(主婦と生活社)がある。
眠れないのはなぜ?
睡眠の役割は、脳と体の疲れをとること。そして、よい睡眠のために「時間」と「質」どちらも大切になってきます。良い睡眠のためのポイントはこちらの記事も参考にしてみてください。
疲れているし、明日も早いのに…。布団に入っても、頭が冴えて眠れない、考えごとがぐるぐる巡って眠れないと言う人もいるのではないでしょうか。主に眠れない理由としては、以下が考えられます。
ストレス
ストレスを抱えた状態は脳が興奮状態になっています。本来であれば、脳も体もリラックスモードに切り替えて布団に入ることが快眠のポイント。ストレスが強いと、眠れなくなってしまいます。
体内時計の乱れ
人間の体は、朝起きて夜になると眠くなるようにできています。しかし、体内時計のリズムが崩れてしまうと、本来であれば寝たい夜の時間に眠れなくなってしまいます。
昼寝のしすぎや、夕方の居眠り、夜間に強い光を浴びることも体内時計のリズムを乱す原因になります。
睡眠環境
暑くて寝苦しい、枕が変わると眠れない、などの経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。暑い・寒い、騒がしい、眩しいなど、睡眠に適した環境が整っていないことも眠りを妨げます。自分にあった枕やマットレスなどを整えることも大切です。
飲食物
お酒を飲んだ直後は眠くなりますが、アルコールが分解される際の「アセトアルデヒド」という代謝産物が覚醒作用をもつため、睡眠の質を下げてしまいます。また、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは睡眠を妨げるため、夕方以降は控えるようにしましょう。
寝る前に避けたいことは?
眠りたいけど眠れない…そんない時にまずおさえておきたいポイントは「焦らない」「頑張らない」ということ。焦りはストレスを強くします。眠れないことがさらにストレスとなり、ますます眠りを妨げてしまいます。
その上で、快眠のために寝る前には以下の行動を避けるようにしましょう。
スマートフォン、パソコンを見る
寝る前のスマホ・パソコンはよくない…恐らく一度は見聞きした情報だと思います。目から入るブルーライトが睡眠のホルモンであるメラトニンの分泌を抑えてしまうため、脳を覚醒させてしまいます。
「意外とスマホ・パソコンを見ていても眠れるし大丈夫!」と思う方も、せめて寝る1時間前だけでもよいので使用を中止してみましょう。寝つきの違いを感じられると思います。
考えごとをする
一日の仕事や家事を終えてホッと一息つける時間。あれこれ考えごとをしたいタイミングではありますが、夜は脳も疲れておりネガティブモードになりやすい傾向に。この状態で考えごとをしても、よいアイデアは浮かびません。
また、悩みごとや考えごとを布団の中に持ち込んでしまうと、脳が活性化して眠れなくなってしまいます。
悩みごとや考えごとがあるときは、寝る前に紙に書き出して「明日の宿題」としてスッキリ忘れるようにしましょう。紙に書き出すことで整理されて解決することもあります。また、ぐっすり眠って翌朝のクリアな頭で考えた方が良いアイデアも浮かぶことが多いはずですよ。
明るい場所へ行く
朝、光を浴びることで睡眠ホルモンの「メラトニン」が減少し、体内時計がリセットされます。夜寝る前に明るい光を浴びたり、スマホを使ったりすると、眠りたい時間にメラトニンが分泌されなくなってしまいます。
寝る前に過ごす部屋の照明はできるだけ落とすようにしましょう。また、目を閉じていてもまぶたを通して人は光を感知します。電気をつけっぱなしで寝ると睡眠の質を下げてしまうため、避けるようにしましょう。
夕方の居眠り
仕事帰りの電車の中でウトウト、食後にソファに横になってウトウト…。気持ちのよい時間ではありますが、夕方以降の居眠りは睡眠の質を下げてしまいます。
人間は起きている時間が長ければ長いほど、睡眠のエネルギーが溜まっていきます。これを「睡眠圧」といいますが、夜寝る時にこの睡眠圧を高めた状態で眠れた方が、質の高い睡眠をとることができます。
昼寝を長くとりすぎたり、夕方に居眠りをしたりすると、睡眠圧を逃してしまうことになりかねません。夕方の眠気はできるだけガマンできた方が、体内時計も乱れず、質の高い睡眠をとることができるはずです。
激しい運動をする
毎日忙しい中で、唯一運動できる時間が夜だけ…という方もいるかもしれません。日中の適度な運動は、体温を上げ、血流をよくしてくれるため睡眠にはプラスに働きます。
しかし、寝る直前に筋トレなどの激しい運動をすると交感神経が優位になり体が活動モードに。寝つけなくなってしまいます。就寝2時間以内に運動をした人は寝つきが悪くなり、睡眠時間が短くなったという研究結果もあります。
ぐっすり眠るためには、体を温める程度の軽い運動を夕方におこなえるのが理想です。
自分の生活スタイルの中で、強度・時間を調整して運動ができるとよいですね。
寝る前におすすめの快眠方法
睡眠と心には密接な関係があります。眠れない人はもちろんのこと、今以上にぐっすり眠りたい人に。快眠のためにおすすめなのは、寝る前のルーティーンを決めることです。
よく知られる実験に「パブロフの犬」があります。ベルを鳴らしてから犬にえさを与え続けると、ベルを鳴らしただけで、犬が唾液を出すようになるというもの。ロシアの生理学者イアン・パブロフが発見した生理現象です。
梅干しやレモンなど、酸っぱいモノを見ただけで唾液が出るといのも、私たちが過去の経験から、梅干しやレモンが酸っぱいということを知っているからです。閉店間際のスーパーで「蛍の光」の音楽が流れると無意識に急いでしまうのも、同じ原理といえるでしょう。
これをやったら、もう眠るのだな…と心と体にインプットしてしまえば、自動的に眠りやすくなります。
そのために、自分なりの快眠のルーティーンを作っていきましょう。
おすすめの睡眠ルーティーンの一例
- 寝る3時間前までにすべての飲食をすませる。
- ストレスになっていることを書き出す。
- ぬるめの湯船にゆっくり浸かり、体を芯まで温める。
- 好きな音楽を聴き、アロマの匂いを楽しみながらストレッチをおこなう
- 布団に入って、ゆっくり深呼吸をする
ポイントは、さきほどご紹介した「寝る前に避けたいこと」以外で、自分自身が心地よいアクションをおこなうことです。寝る前の快眠のルーティーンによって、心と体を就寝に向けて整えていきましょう。
最後に
快眠のためのおすすめの方法をご紹介しましたが、分かっていてもなかなかできない、仕事や家事で毎日がいっぱいいっぱい。そんな方もいるかと思います。
生活スタイルは人それぞれ。そして、睡眠は個人的なものです。大切なのは自分なりのリズムをつくること、自分なりの眠れるルーティーンを作ることです。
寝る前を心と体がリラックスできる時間にすることが、ぐっすり眠れる第一歩に。何か1つでもよいので、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
文:三輪田理恵
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