赤ちゃんの夜泣きがひどいとママやパパは睡眠不足でストレスが溜まりますよね。
ただ、夜泣きをするのは成長の証です。ここでは発達ごとの夜泣きの原因と、基本の対策について発達の専門家が解説します。
カウンセラー:いしづかみほさん
夜泣きの原因は、赤ちゃんの睡眠の未熟さや感覚の過敏さ、脳の情報処理がおいつかないなど、ほとんどが成長過程では必然と言えることばかり。「愛情不足?自分の関わり方の問題?」など、ママやパパが自分を責める材料にしないこと。辛い時は、人の助けを借りるなどして自分の睡眠時間を確保してくださいね。
夜泣きとは?いつからいつまで?
夜泣きとは、夜間に赤ちゃんが泣いてしまい、眠らないでぐずることをいいます。
一般的に、生後4~6か月頃に始まり、2歳頃にはおさまると言われています。
何度も起きて泣いたり、突然激しく泣き出したり、うとうとし始めると泣いたりと、泣き方は赤ちゃんごとにそれぞれ異なります。
夜泣きがどうして「悩みの種」になるかというと、
- 原因がわからない
- 家族やご近所さん、みんな寝ているので迷惑だと思ってしまう
- 自分も寝たいのに寝られない
といった理由から。
誰もが寝る時間帯に長時間泣かれると、ママやパパは疲労が溜まります。断続的にしか眠れないことにも、ストレスを感じますよね。
月齢別、夜泣きの原因と特徴
夜泣きの原因は月齢毎に異なります。原因と特徴は以下です。
0~3ヶ月のころ
昼夜の区別があまりついておらず、昼も夜も断続的に寝たり起きたりを繰り返します。泣く理由は主に、「不快」。
4~6ヶ月のころ
昼夜の区別がつき始めますが、大人の睡眠サイクルとはズレがあります。一般的には、この時期に夜泣きが始まることが多いとされています。
1歳~2歳
睡眠サイクルは整ってくるものの、外での活動が増えたり卒乳の時期と重なったりして、夜泣きをするという子もいます。夜泣きはこの時期に徐々に収まっていきます。
夜泣きの3大原因とは
夜泣きの原因には、大きく3つがあげられます。
体内時計によるもの
新生児は、昼夜の区別なく3~4時間程度のサイクルで「お乳を飲む」「寝る」を繰り返しています。
生後16週くらいで少しずつ体内時計ができていき、昼間に目覚めている時間が多くなり、夜にまとまって眠るようになります。
大人の睡眠は、体を休める睡眠であるレム睡眠と大脳を休ませる睡眠であるノンレム睡眠が90分程度のサイクルでやってきます。一方で、赤ちゃんはそれが約50~60分のサイクルでやってきます。
また、大人の睡眠の約70~80%がノンレム睡眠であるのに対し、生後3ヶ月頃の赤ちゃんはレム睡眠とノンレム睡眠が半々くらい。2~3歳頃になると大人と同じくらいの比率になります。赤ちゃんは大人のように深くまとまった時間眠ることができないのです。
眠りが浅い時にぐずったり、泣き出したりすることもあり、体内時計が発達段階であることが、夜泣きの原因のひとつといわれています。
感覚の過敏さ
光や音、布団や着ているものの材質、気配、香りなどの感覚刺激に過敏な子どもはちょっとした違和感をキャッチしやすく、それが夜泣きの原因になることもあります。
部屋の明るさが変化しただけでも目を覚ましたり、ちょっとした物音や、人が動いている気配で泣き出したりする子どももいます。
情報処理中
赤ちゃんは、寝ている間に脳の中で記憶の定着を行っています。その情報処理が追いつかないことも、夜泣きの原因になります。
日中たくさん外で遊び、多くの人に会った日や、何かとてもショックなことがあった日に、夜泣きをしていませんか?
そんな日は、眠っていても脳の中で情報処理が忙しく行われていることで、夜泣きをしている可能性もあります。
夜泣きの対策
夜泣きをなくす、減らすために、具体的にどのような対策をとっていくかをご紹介していきます。
睡眠環境を整える
まずは、赤ちゃんの様子を観察して、よく眠れる環境を整えていきましょう。
ママやパパが真っ暗で寝られるタイプだとしても、赤ちゃんは少し灯かりがある方がいいタイプ、ということもあります。音がないと寝られない子もいれば、音がない方が眠れるという子もいます。
特に感覚刺激に敏感なお子さんは、そのポイントを見つけ出すことが重要です。
肌に触れるものに過敏な赤ちゃんの場合には、お気に入りのタオルケットを洗濯しただけで、独特のやわらかさが損なわれ寝つけない原因になり得ます。
またママの添い寝がダメ、というケースもありますし、家のにおいがしないところでは眠れない、という子もいました。
暑さ寒さや、においの感じ方には個人差があります。
「赤ちゃんはこういうものだ」という先入観を捨てましょう。心地よく眠れる環境というのは人それぞれなのです。
入眠儀式を作る
眠る前にするルーティーンを「入眠儀式」と言います。
- 家族や家にあるものに「おやすみなさい」を言ってまわる。
- 布団に入る1時間前にお風呂に入る。
- 一定のリズムでトントンやさしくたたく。
- 音楽を流す。
- 絵本を読んであげる。
- ハグをする、腕や足をしっかりとつかんであげるなど、圧迫刺激を入れる。
など、どんな儀式でもかまいません。
「これをやったら眠るんだな」と赤ちゃんにインプットされるまで、根気強くつづけましょう。
また夜泣きで完全に目が覚めてしまった子どもにも、再度この入眠儀式をして眠りに誘うということも、試してみてください。
日光に当たる、活動する
夜、眠るためには、朝しっかりと光を浴びることと、日中、身体が少し疲れるくらいまでしっかり活動することが大切です。
特に日中光を浴びることは、夜眠気を催すホルモンである「メラトニン」の分泌を促すことにつながります。メラトニンは、朝の光を浴びてからおよそ14~16時間後に分泌が高まります。たとえば、朝7時に起きて日の光を浴びると、夜21時頃に眠くなるという計算になります。
その効果を維持するためにも、夜あまり強い光を浴びないようにするのもポイントです。
親は寝られる時に寝ておく
赤ちゃんの夜泣きは、ママやパパが「今寝たい」「続けて眠りたい」という時に、その眠りを妨げますよね。
わが子の夜泣きがひどかった時期に、「一生寝ない人はいないから」と、何度も自分に言い聞かせたことを思い出します。その時は、起きているわが子に付き合い、夜中に遊んだり絵本を読んだりしました。
何をしても泣き止まない、という時には、いったん寝ることを諦めてみましょう。完全に起きる。起きて、できる対処をする。苦しみは、「今寝たい」「続けて眠りたい」という自分の心の設定から始まっていると切り替えてみましょう。
そして、ママやパパは寝られるときに寝ることが大切です。
寝不足になると記憶や感情コントロールをしてくれる前頭葉のはたらきがにぶり、ママ自身もイライラを抑えられなくなってきます。睡眠不足でイライラしてしまうのは脳の機能上、仕方のないことです。赤ちゃんにイラ立つ自分を責めたり、自己嫌悪に陥ったりせず、自分自身を休ませてあげる工夫をしていきましょう。
人の助けを借りる
ひとりでは無理!苦しい!ということを認めて、人の助けを借りることも大事です。
同居の家族やご近所さんに申し訳ないという気持ちでいっぱい、ということもありますよね。そんな時には、赤ちゃんの状態をみんなに理解してもらえるよう話してみてはどうでしょうか。
ひとりで解決しなくては、と自分を追い込まないでください。
家族に助けてもらうことが難しい方は、お住まいの地域の保健師さんや助産師さんによる新生児訪問指導や、子育て相談窓口、発達センター、かかりつけのお医者さんに相談をしてみましょう。
ひどい夜泣き、受診の目安は?
夜中に突然激しく泣き出すことが、病気のサインということもあります。
明らかにいつもと違う、という時は病院を受診してください。
- 突然顔色が青白くなり、激しく泣くことを繰り返す
- ぐったりとして身体が熱っぽい
- 水分を受け付けない
など、泣くだけでなく他の気になる点が見てとれる時には迷わず病院へ。
また、緊急ではないものの、夜中突然起きて泣きながら走り回るなど、泣き方が尋常ではないといった場合は、夜驚症の可能性もあります。
通常5分くらい泣けばおさまるもので、本人は朝起きるとそのことを覚えていないことがほとんどです。
夜驚症が疑われる場合は、かかりつけの小児科の先生に相談しましょう。
最後に
寝かせよう!と必死になればなるほど、むしろぱっちりと目を覚ます(ように見える)赤ちゃん。
かわいいし愛しているけれど、なんで寝てくれないの、泣き続けるのと、こちらが泣きたい思いになることもありますよね。
そんな時は、いったん深呼吸を。
夜泣きは一般的に、2歳頃にはおさまると言われています。
人に助けてもらっていいのです。
話をして、理解を求めましょう。
寝る時間を確保するために、家事の手を抜いたっていいんですよ。
文:いしづかみほ
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