家庭学習を習慣にしたい、自分から勉強してほしい、と願うママやパパは少なくないはず。
特に小学生のうちは、まだ勉強が習慣化しておらず、どうしたものかと頭が痛いものです。
小学生が家庭学習を習慣化するポイントを発達の専門家に伺いました。
カウンセラー:いしづかみほさん
小学生が家庭学習を習慣化するには、まずは勉強を「簡単!」「できる!」と感じられるようにすることが大切です。
課題を与えるなら、たやすくクリアできるものを設定してあげましょう。学校の宿題は、完璧に仕上げようと無理をしないように。
習慣化には時間と手間がかかるものです。がんばりすぎずにいきましょう!
家庭学習、習慣のつけ方は?
習慣とはそもそも何でしょうか。
日常の決まりきった行動のこと。
長い間そうすることによって、そうすることがあたかも決まりのようになったこと。
反復によって習得し、少ない心的努力で繰り返せる、固定した行動のこと。
こうした行動を「習慣」といいます。
習慣化は、「そもそも時間がかかること」と理解しましょう。子どもたちの根気以上に、関わるパパママたちの根気が必要です。
そして、「勉強しなさい」「勉強した?」という声かけは、習慣化の足しにはならないということも覚えておいてください。
では、具体的にどのように取り組めば、勉強が習慣化されるのでしょうか?
そのポイントと取り組み方の工夫について、ご紹介します。
家庭学習の習慣化、ポイントは?
小学生のうちに家庭学習を習慣化するには、いくつかのポイントがあります。
- 一回に取り組む時間は短く
- 決めた分量を決めた分だけ
- 勉強以外の注意事項を減らす
- 解ける問題をやる
- 具体的にほめる
- 一緒に座る
- その子が集中できる環境を作る
ひとつひとつ、詳しく解説しましょう。
一回に取り組む時間は短く
習慣化するには、一回の学習時間は短く設定することが大切です。
つまり、「長時間やらせようとしない」ということ。
小学生の学習時間の目安が、「学年×10分」などといった話を耳にすることもあります。たしかに、本人の学力向上は学習の「質×量」で決まるということも事実といえるでしょう。
しかし、今回は学力向上ではなく「勉強の習慣をつける」という視点でお伝えしていきます。
よく「長時間集中力がもたないのですが、どうしたらいいのでしょう?」というご相談を受けますが、それはむしろ当たり前のことです。脳に入ってくる感覚刺激の整理が未熟な子どもたちにとって、次から次へと興味の対象が変化するのは当然のことなのです。
さらに、ADHDのお子さんにとっては座っていること自体が苦痛だったりします。
一回の勉強時間を短くしましょう。おすすめは、ノルマ制にすることです。
算数の計算問題を5問解いて正解だったら終わり。
漢字を3つ練習して、何も見ないでそれが書けるようになっていたら終わり。
音読を、1回最初から最後まで読み切ったら終わり。
という具合に、時間でなく勉強の量で区切るのです。
ただ漫然とやるのではなくて、「できるようになったかどうか」というところまで完結させられるとよいですね。
決めたノルマが終わっていなくても、10~15分間座って取り組めたらいったん休憩を取ることをおすすめします。
決めた分量を決めた分だけ
一日の勉強量を決め、それが終わったらその日の勉強は終わりにします。
つまり、追加をしない、ということです。
思ったより早く子どもたちが課題を終わらせられた時に、つい「あともうちょっと」と欲張ったりしていませんか?
ノルマを最初に決めたのに、パパママがそれを破って追加をするのはやめましょう。
ここまでやったら終わり!というゴールを目指してがんばったのに、終わってホッと気が抜けた後に再度エンジンをかけ直すのは、大人でもなかなかできるものではありませんよね。
次回以降の勉強に向けても、あまりよい影響はありません。
「がんばって終わらせても、また追加が来るならのんびり時間をかけた方が得」と考える子どももいるはずです。
勉強以外の注意事項を減らす
勉強をしているとき、パパママは勉強以外の注意は控えるべきです。
つまり、行儀や姿勢のことを言い過ぎないということです。
姿勢や鉛筆の持ち方、ノートを抑える手の置きどころ等々、気になったことを言いたくなるかもしれません。ただ、次から次へと指摘されてしまうと、子どもは気をつけることが多すぎて勉強に取り組むこと自体が苦痛になってしまいます。
これらのことは、勉強の習慣づけをすることとは別のこととして対処しましょう。
姿勢や筆圧などは、前庭覚や固有覚を鍛えると改善されていきます。
<前庭覚とは>
前庭覚は平衡感覚ともいい、姿勢のコントロールや眼球運動に関わっています。トランポリンやゆらゆら揺れる遊び、お布団をゴロゴロ転がる遊びなどを通して鍛えることができます。
<固有覚とは>
固有覚は、力の入れ具合や関節の曲げ具合に関わる感覚です。
固有覚はそれ単体で鍛えることの難しい感覚です。公園の遊具などを使う遊びや、タオルの両端を二人で引っ張り合って均衡を保つ遊びなどを通して力加減を体得していきます。また、肩たたきをしてもらい「それはちょっと痛い」「それはちょうどいい」と、加減を伝えてあげることもよいでしょう。
机と椅子の高さが子どもの身体のサイズが合っているかどうか、鉛筆の濃さが本人の心地よい書き心地になっているかどうかなども、見直してみるとよいでしょう。
解ける問題をやる
勉強の習慣化ということだけを考えた時に、毎日取り組む課題は「解ける問題」「見て写せばいいもの」を選びましょう。もしも、わからなさそうな問題、できるかできないか微妙な線の問題を入れたいなら、1問か2問。
習慣づけの始まりは、勉強は楽勝!という体験の積み重ねから。
「勉強って簡単に取り組めるものなんだ」という刷り込みがポイントです。
大人でも、それが仕事に必要なスキルだったり、目標達成のために必要なことだったりと理解していても、苦手なこと、時間のかかることに取り組むのにはエネルギーが必要となりますよね。子どもならなおさらのことです
勉強楽勝!自分はできる!
自己肯定感にも関わる部分です。ぜひ、調子に乗らせてあげてください。勉強を習慣にしたいようなことにしていきましょう。
具体的にほめる
「できたね」「えらいね」「よくやったね」では、何ができたのか、どんなところがえらかったのか、何をよくやったのか、が子どもたちに伝わりません。
「漢字練習して、新しい漢字を3つも覚えたの、すごいね」
「かけ算九九、7の段は昨日まで言えなかったのに、すらすら言えるようになったね!」
といった具合に、昨日まではどうだったのか、今日勉強をしてどうなったのか、ほめられるところを具体的にほめましょう。「昨日よりも1文字多く漢字練習ができたね」でもよいのです。
一緒に座る
忙しい時間帯に子どもの勉強のためにいったん手を止めて一緒に席に着く。
これはなかなか、実践が難しいかもしれません。
けれど、勉強が習慣になるまではそばについていてあげてほしいものです。低学年のお子さんは、リビングや食卓で勉強をするという子も多いですよ。
手元を見てあげて、できるだけスムーズに勉強が進むよう声をかけてあげてください。手が止まってしまうようなら、次に進めるよう促してあげましょう。わからないことがありそうなら、子どもの話を聞いてあげてください。
お茶を飲みながらでもよいのです。
お子さんの傍らに座り、その様子をゆっくり眺め、その声にじっくり耳を傾ける。そんな時間を、1日の間に数分、ぜひとってあげてください。
その子が集中できる環境を作る
静かな場所で、ひとりで取り組む方が勉強に集中できるのではないか?と考えがちですが、お子さんひとりひとり、勉強しやすい環境は違っています。
勉強する時には、「覚えるくらいに見たアニメをタブレットで再生しながら勉強する」という子がいました。彼は聴覚過敏のため、どんなに小さな音でも拾ってしまい集中が妨げられるという子でした。その彼が編み出したのがこの、「タブレットでアニメ再生」という方法でした。
この方法がどうして聴覚過敏の彼にとって有効かというと、アニメの音に集中することで、他の雑音が気にならなくなるからです。彼は経験的にこの方法を編み出しましたが、脳に入ってくる感覚刺激を交通整理するという感覚統合の観点から見ると、たいへん理にかなったやり方です。
このやり方のポイントは、「覚えるくらいに見た」という点。理由は「初めて見るアニメだと映像の方も気になってしまい、見たくなってしまうから」だそうです。
「この電気、字が見づらい」と言って、電球の種類によっては目がチカチカして勉強に集中できないという子もいました。
どんな環境が合っているのかを、本人に聞いてみましょう。
そのリクエストの全てに応えることが難しくとも、ぜひ話し合いをしてみてください。
最後に
習慣にする、ということは、毎日長期間にわたり取り組み続ける、ということです。
勉強を習慣にするということは、例えば椅子に座りノートに鉛筆で1文字を書き始めること、教科書を開き音読の最初のひと声を発することから始まります。
であるならば、それが簡単であればあるほど、心地よければ心地よいほど、楽しければ楽しいほど、習慣になりやすいということです。
「苦しくてもがんばって取り組む」は、もうちょっとハイレベルな挑戦。
入り口は入りやすく、でよいのです。
宿題に関しては、「完璧にして出す」という固定観念を手放して、わからないところはわからないまま、終わらなければ終わらないまま出して、先生からも指導をしてもらうことをおすすめします。全部を家庭で完結する必要はありません。ママやパパもすべてを背負わずに、関わっていきましょう。
文:いしづか みほ
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