パパに「オムツを替えて」と毎回言わないと、替えてくれない。「子どもを見ていて」というと、本当に「見ているだけ」で子どもと関わろうとしていない。遊びに連れ出してもらうと、木登りとか危ない遊びをする……。パパの子どもとの関わり方に不満を持つママの声をよく聞きます。こんな時はどのようにしたらよいのでしょうか。

高祖常子さん(子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント)
資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事や行政の委員も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。
なぜ、パパの関わり方に不満?
このときの不満やイライラ・モヤモヤは、「ママの期待」と「パパの行動」に対するズレから生まれています。
●「オムツを替えて」と毎回言わないと、替えてくれない時
- ママ
- そろそろ、オムツ替えの時間ってわかるよね。泣いているんだから、おなかがすいたか、オムツ替えに決まっているよね。気づいて自主的にやって欲しい。
- パパ
- 言われないと分からない。言われないとやらない。
●「子どもを見ていて」と言った時
- ママ
- 子どもの相手をして一緒に遊んであげて欲しい。
- パパ
- 見ているだけ。場合によっては、横にただ一緒にいるだけ。
●木登りとか危ない遊びをする時
- ママ
- 子どもの成長段階に応じた安全な遊びをして欲しい。
- パパ
- 楽しそうだからやらせてみた。
このように文字にして読んでみると気づきますよね。
私が「当然こうすべき」と思っていることを、パパがしてくれないことに対しての不満です。
それでイライラしたり、パパに対して「普通、○○するよね!」「なんで、〇〇しないの!」と不満をぶつけたくなったりするのです。
関わりの中で社会性を身につける
そもそも、パパの子育ては、子どもの成長・発達にどのような影響を与えるのでしょうか。
家族社会学の視点では、以下のことがいわれています。
- 父親からの愛情を多く受けて育った子どもは成人後の自尊心が高く、人生に対する満足感も高い。
- 父親の子育て参加の頻度が高いほど成人後の子どもの教育・経済的な業績は高く、反対に、非行は少ない。
- 父親とたくさん遊んだ子どもは情緒性、社会性、自発性独立意識が高い。育児をする父親を持つ3歳児は情緒的・社会的発達が良い。
- 父親とかかわりが多い幼児は友人ネットワークが広い。
(石井クンツ昌子先生(お茶の水女子大学名誉教授)2020年5月「パパコミ」記事より)
この好影響はパパだけの関わりというよりも、ママ+パパの関わりによるものが大きいといえるでしょう。
シングルで子育てをしている人も多いと思います。ここでいう「パパ」は、必ずしも男性でなくても良いのです。子育てはママだけでなく、別な大人の関わりが増えることによって好影響が増えるということ。もちろん、危険なことは線を引くべきですが、違った関わり方があることは子どもの社会性を身につける意味でもプラスに働きます。
たとえば、絵本を読む場合でも、ママとパパでは絵本の選び方が違うでしょう。同じ絵本でも声のトーンや読み方、子どもとのやりとりなども違いますよね。いろいろな声がある、いろいろな読み方がある、いろいろな言葉をかけてくれる……。そんな関わりを重ねることによって、子どもは成長していくのです。
話し合い「具体的に」確認を!
では、ママはどのようにしたらイライラ・モヤモヤを回避できるのでしょうか。
それは、やはりコミュニケーションしかありません。
生物学的に、女性の方が「察する」能力が高いと言われています。男性にとっては、たとえパートナーであっても「察する」のは大変難しいこと。要は伝えるしかないのです。
そして、大切なのは「伝え方」です。
一度にたくさんの注意点を言われたら、ママだってうんざりしますよね。それはパートナーでも同じです。「どうしてもここだけは押さえたい」こと、そして子供の成長発達も、共有しましょう。
「虫歯が心配だからまだチョコレートは食べさせてない。だから遊び先でも、食べさせないでね」とか、「あそこの公園の滑り台、私と一緒になら滑れるようになったんだよ」など。
そのようなコミュニケーションがあれば、「これはまだ食べさせないんだな」と、注意してくれるでしょう。また「滑り台は一緒なら滑れるんだな」とわかれば、配慮しながら一緒に滑ってくれるはず。少しずつ1人でも滑れるようにサポートしながらチャレンジさせてみるという方法をパパがしてくれるかもしれません。
最後に
「パパと遊ぶときは、こんな遊びが楽しい」とか、「ママだったらこんな風に言うかな」など。子ども自身も相手によって、関わり方を変えることがあります。それは悪いことではなく、人の多様性を知り、それぞれに合わせたコミュニケーションを取ることができるという社会性を身につけているということです。
どうしても押さえてほしいところは伝え、共有すること。その上で「パパはこういう風に遊ぶのか」「こういう風に対応するのか」と、ママ自身も違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
文:高祖常子