長い妊娠期間を経て出産を迎えると、待ったなしに育児がスタートします。赤ちゃんのお世話に手いっぱいで、自分の食事がおろそかになっていないでしょうか。妊娠中の食事や離乳食に関する情報は多く出回っているのに、赤ちゃんが生まれたあと、産後ママに焦点をあてた食事に関しては意外と情報が少ないものです。「母乳育児中はどんな食事を心掛けるべき?」「ファストフードや甘いものは食べちゃダメ?」など。
ここでは、産後ママの食事メニューにおいて体にいい摂りたい栄養やNG食材などを詳しくご紹介します。
産後の食事、何に気を付ける?
出産は赤ちゃんだけでなく、母体にとって大きな負担を伴いますよね。産後は、妊娠や出産で大きく変化するホルモンバランスが徐々に出産前の状態に戻る、とても大切な期間です。
ただ出産と同時に始まる育児に翻弄され、十分な休養もままならないのも事実です。育児の合間に簡単に食事を済ませる、という方も多いかもしれませんね。
しかし産後ママの身体は、出産後の回復のために非常に大事な期間です。産後、特に気を付けたいのは、
- 水分補給
- バランスのよい食事
この2点です。
水分補給
授乳中は普段以上に、母乳で栄養分や水分を使ってしまいます。赤ちゃんが大きくなるにつれて、母乳を飲む量も増え、多いときには一日に約0.8リットルもの母乳を飲むと言われています。(※1)
一方、成人女性1日に必要な水分量の目安は、1.5リットル。
これらをあわせると、1日に2.3リットルの水分を必要としていることになります。
授乳中のママにはこまめな水分補給が欠かせません。
バランスのよい食事
授乳の有無に関わらず、産後の身体にバランスのよい食生活は必須です。とは言え、産後すぐの時期は、赤ちゃんのお世話に追われ、調理や買い出しに時間をかけられないことも多いものです。忙しいときには無理に食事を作ることにこだわらず、以下の方法も取り入れてみてください。
ストック食材の活用
すぐに食べられて栄養価の高い食材をストックしておくと便利です。
ストック食材の例
- 納豆
- ツナ缶
- チーズ
- 蒸し大豆
- 冷凍野菜 など
これらの食材を使い、「何でものっけ丼」にすると、簡単に1品が作れます。さらに、インスタントのお味噌汁などを加えれば、水分補給になる上、調理の手間もかかりません。
ファストフードよりも栄養価が高く、手軽に食べられ、さらにお財布にも嬉しい、いうことなしのレシピです。
お惣菜や宅配の活用
産後のつらい時期は、調理済みのお惣菜や食材の宅配サービスを利用するのも一つの方法です。
最近では、産後ママ向けのお弁当や食材キットなど、栄養バランスが考えられた宅配サービスもあるようです。産後の食事の選択肢の1つとして、検討してみてはいかがでしょうか。
このようなサービスを使えば、体調が悪い時など、いざというときにも安心ですね。
産後のメニューで摂りたい栄養素
赤ちゃんに栄養を届ける母乳は、ママの血液を材料として作られます。とくに授乳中の食事は、妊娠後期と同程度のエネルギー摂取基準が推奨されています。
母乳を通してたくさんの栄養を赤ちゃんに届けるため、普段以上にバランスのとれた食生活を意識したいもの。産後のママの身体づくりは、赤ちゃんの栄養面においても大事になります。
ここでは、産後、積極的に摂りたい栄養素のなかから、2つの栄養素を取り上げてご紹介します。
カルシウム
厚生労働省の調査によると、成人女性の一日に必要なカルシウム摂取推奨量は約650mgです。一方で、「国民健康・栄養調査委」によると、成人女性の1日の平均摂取量は494㎎。(※2)
日本人は「カルシウム摂取量が不足しがち」と言われるのは事実のようです。1日あたりおよそ150mg不足しています。
カルシウムを含む食材
ホルモンバランスが大きく変化しやすい出産期。また、授乳期には一時的に骨量が減少しやすくなると言われています。(※3)
普段から不足しがちなカルシウムですが、赤ちゃんにとっても骨や筋肉の形成に重要な栄養素です。普段以上により積極的に摂取することを心がけてみてください。
カルシウムと聞くと、乳製品や小魚をイメージしがち。ただ他にも、大豆製品や野菜など、カルシウムが多く含まれる食材はあります。
カルシウムを多く含む食材(100gあたり)(食品成分データベースより)(※4)
- 切干だいこん(乾)500㎎
- 小松菜 170㎎
- チンゲン菜 100㎎
- ほうれん草 49㎎
- 高野豆腐(乾)630㎎
- 木綿豆腐 93㎎
- 絹豆腐 75㎎
- 納豆 90㎎
一日の摂取量を同じ食材で満たそうとするのは、意外と大変です。普段の食生活に複数の食材を取り入れれば、メニューにも困りません。これらの食材をバランスよく取り入れ、カルシウムを意識して摂るよう心掛けましょう。
たんぱく質
カルシウムと並び、授乳中に多く摂りたいのが「たんぱく質」です。政府が発表する国民健康・栄養調査の中でも、たんぱく質などはとくに授乳中には多く摂ることを推奨されています。
成人女性が、一日に必要なたんぱく質の摂取推奨量は約50g。授乳中は、母乳にたんぱく質を消費してしまいます。摂取推奨量に追加し、20gが必要と言われています。
たんぱく質は、筋肉のもととなる他、血液や、髪や美肌に欠かせないコラーゲンにもなるため、健康的な身体に欠かせません。
赤ちゃんのためだけではなく、産後もキレイでいたいママにとって、たんぱく質は必要不可欠です。
たんぱく質を摂るレシピ
産後は、日常的にたんぱく質を取り入れる習慣を身につけたいもの。お肉や魚、卵、乳製品などの動物性たんぱく質のほか、大豆やなどの植物性たんぱく質も積極的に摂るようにしましょう。
簡単なたんぱく質レシピの例
- サラダに大豆をプラス
- 納豆を1日の食事の中にプラス
- 卵やチーズを使ったスイーツ
- 青菜を使う際は小松菜を積極的に取り入れる
- おみそ汁に豆乳をプラス
など、あまり調理の手間をかけずとも食べられるレシピも豊富です。
豆類やかつお節など、いつも食べている食材の中にも意外とたんぱく質を多く含むものもあります。
いつもの食事にプラスしやすいたんぱく質の一例をご紹介します。
たんぱく質を含む食材(100gあたり)(食品成分データベースより)(※4)
- かつお節 77.1g
- 高野豆腐(乾)50.5g
- きな粉 37.0g
- ささみ 36.1g
- とりむね肉(皮なし) 38.8g
- 納豆 16.5g
- 蒸し大豆 16.6g
- 卵 12.3g
調理の手間をかけずに、ちょい足しできる食材もあります。毎日の食事でも摂取しやすいのではないでしょうか。
1つの食材で必要な摂取量を満たそうと思うと意外と大変です。さまざまな食材を取り入れながら、朝食やおやつにも取り入れていきましょう。
食べてはいけない食材はある?
バランスのとれた食事を心掛けてはいるものの、「たまには好きなものを食べたい!」という時もありますよね。
ただし、産後は注意したい食材や避けるべき食材がいくつかあります。
産後、注意したい食材
- お酒などのアルコール
- カフェイン
- カップラーメンなど加工食品
- ファストフード
- スイーツ
アルコールやカフェインは、血液から母乳を通して赤ちゃんの発育に影響を与えてしまうため、注意が必要です。(※5)
また産後に関わらず、栄養素を効率よく摂取するためには、カップラーメンや加工食品、ファストフードやスイーツを多量に摂取することは控えたほうがいいでしょう。
産後は、これらを絶対に食べてはいけないというものではありません。ただ、毎日ファストフードや甘いものばかりを摂取するのは、一般的に健康的な食生活とは言えませんよね。
食べ過ぎや偏ったものばかりの偏食などはホルモンバランスの乱れに繋がります。バランスの良い食生活を心がけましょう。
産後に限りませんが、食べたいものを極端に制限してストレスをためるより、ほどよく好きなもの・食べたいものをとるのがベターです。ママ自身が食事を楽しむことをおススメします。
産後は、食事のダイエットよりエクササイズを
産後太りが気になると、食事を制限したダイエットを考えてしまいますよね。
しかし産後は、体力を回復させる重要な時期。
産後太りの原因は、骨盤のゆがみや筋力の低下であることもあり、食事でダイエットをするよりはエクササイズや呼吸を取り入れて、身体を整える方がよいかもしれません。
- 姿勢を意識する
- 気づいたときに深呼吸する
- こまめに体重をチェックする
- 家事の合間にエクササイズを取り入れる
など、無理のない範囲で行うのが、産後ダイエットのコツです。
エクササイズのやり方については、産後ダイエット成功のコツは?産後に太る原因と対策の記事を参考にしてみてください。
最後に
育児が大変なときは、食事づくりがストレスに感じることもあるでしょう。難しいときは無理をせずに、ご紹介した方法も取り入れながら上手に手抜きをしていきましょう。
授乳中の育児も食事も、ママ自身が前向きで健康でいられることを第一に、毎日の食生活もストレスフリーで楽しく過ごしていきたいですね。
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参考
※1日本人の食事摂取基準(2020年版)|厚生労働省
※2国民健康・栄養調査(令和元年)|厚生労働省
※3妊産婦のための食生活指針|厚生労働省
※4食品成分データベース|文部科学省
※5妊娠前から始める妊産婦のための食生活指針|厚生労働省
文:中村美帆
食生活アドバイザー 、食育インストラクター。出産を機に金融機関を退職後、カラダとココロの健康をテーマにヨガ講師・おやつ講師として活動。地産地消にこだわった親子おやつ教室や児童施設でのキッズヨガ教室など子育て支援にも携わる。
また、地元のお茶農家と連携したお茶ブランドTEA BASE「三重県産デカフェ茶」の企画販売を手掛け、地域で地元経済を応援する仕組み作りを目指して、多方面にて三重の魅力を発信中。三重県出身。二児の母。
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