思春期はいつから?子どもとの関わり方と親にできること

思春期はいつから?子どもとの関わり方と親にできること

思春期は、子どもが大人へと成長するための移行期間を指します。
親子関係は各家庭で千差万別なので、関わり方に正解があるとはいえません。
今回は、思春期とは何か、この時期の親の関わり方のポイントを「愛着形成」の視点も交えての専門家が解説します。

いしづかみほ

カウンセラー:いしづかみほさん
親として、子どもの心と体に何が起きているのかがわかるだけで、お互いのコミュニケーションは楽になるものです。この記事が、そんなコミュニケーションの一助になれたらと思います。

思春期とは?いつからいつまで?

思春期とは、小学生高学年から高校生くらいまでの年代のことです。

思春期とは、小学生高学年から高校生くらいまでの年代のことです。

医学的には、第二次性徴の発現の始まりから成長の終わりまで。外見的に性差がはっきりとわかるようになり、生殖能力を持つようになる時期のことを指します。

思春期の性的発達は決まった順番で現れますが、その変化の始まる時期や変化の速さは人それぞれ。個人差がとても大きいものです。

男の子であれば声変りをする、陰毛が生える、体格が変わる、ひげやわき毛が生える、ニキビができやすくなるといった変化があります。
女の子であれば、胸がふくらみ始め、初潮を迎え、体つきも変わってきます。

外見の変化に伴い、「人からはどう見られているか」ということにそれまで以上に意識が向きます。異性を意識するようになり、性に対しての欲求も高まる時期といえるでしょう。

身体の変化に伴う心の動き

こうした身体の変化は、ホルモンバランスが変わることによって生じます。また、身体面だけでなく精神面でも、イライラしたり落ち込んだり、突然やる気がみなぎったりといった気分の上がり下がりが起こります。

自分の中で何が起こっているかよくわからないけれど、自分にはどうしようもできないくらい感情が揺れ動く。思春期は、そんな自分のホルモンバランスの変化、身体の変化に、心が後から対応していこうとがんばっている時期でもあります。

大切なのは、この時期の身体の変化を、子ども自身が肯定的にとらえられるようにすることです。
そうすることによって、思春期に生まれがちな葛藤や自己嫌悪感、他者との比較で自尊感情が傷つくといった体験を減らすことにつながります。

近年は、学校でもこれまで以上に性教育について学ぶ機会が増えています。インターネットなどでも簡単に情報を得ることができるため、子どもたちもある程度の知識を得ているといえるでしょう。

けれど、自分の身体の変化をどう受け取るかは人それぞれです。子どもの様子をしっかりと見守り、周りの大人が関わることが、なにより大切です。

ここでは、その関わり方のポイントを、男の子・女の子に分けてお話いたします。

思春期の男の子との関わり方

男の子の性的発達を、皆さんはどのようにとらえていますか。

男の子の性的発達を、皆さんはどのようにとらえていますか。
「せっかくのボーイソプラノが、声変りによって聞けなくなってしまった」と嘆いていたママがいました。ママががっかりする気持ちもわからなくもないですが、最も驚いているのはお子さん本人かも知れません。子どもの気持ちを本人が吐露する前に、私たちは自分の感じたことを不用意にポロっと言い過ぎたりします。

自分の中に湧いた気持ちや感想をそのまま言葉にする前に、ちょっとひと呼吸。その湧いたものを感じてみましょう。
「寂しい」という自分の気持ちをいったん脇に置いて、目の前で身体の変化にとまどうわが子の気持ちを想像してみませんか。

このひと呼吸が大事です。相手にかける言葉や表現が変わってくるものです。

思春期の女の子への関わり方

女の子の場合は、下着選び、生理用品の取り扱い等について、具体的な対処法を事前に情報共有しておくことをおすすめします。

女の子の場合は、下着選び、生理用品の取り扱い等について、具体的な対処法を事前に情報共有しておくことをおすすめします。わかっていても、出血に対して動揺してしまうお子さんはかなりいます。

いざという時に相談しやすい関係性を作っておくことも大切です。身体が変化することの意味についても話しておけると、よりよいでしょう。

また、PMS(月経前症候群)や生理痛など、自分の気持ちのアップダウンや体調不良の原因になり得る知識を話しておくことも、自己理解を深める手助けとなります。

「愛着形成」から見た思春期とは

身体の変化によって気持ちがアンバランスになりがちになる思春期は、愛着形成の面から見ると「一次愛着機能の内在化」の時期に重なります。

一次愛着の内在化とは?

「自分は自分らしくいて大丈夫、ここに戻ってくれば必ず守られるという場所」=「心の安全基地」で子どもが自分自身の中に築くことです。

思春期は、絶対の安全基地であったママやパパの元を離れ、同世代の友人や先輩、先生との関わりの中で、子どもが自分の中に安全基地を築く準備をしていく時期と重なります。

「ママと赤ちゃんの間の生物学的結びつきが、やがて情緒的結びつきになる」というのが愛着理論です。赤ちゃんの不安や不快を養育者であるママが解消するということを繰り返していくうちに、ママは赤ちゃんにとっての安心・安全を保障してくれる「安全基地」となります。この安全基地を基点として、子どもたちは愛着形成の対象を家族や親せき、近所の大人たちへと拡げていくわけです。

ママやパパがそばにいなくても、自身の万能感(なんでもできる、トライできる、自分は受け入れられる、という感覚)と、世界への信頼(世界は自分に応えてくれる、信頼するに足るところであるという感覚)が揺るがない状態になること。
それが、一次愛着が内在化された状態です。

思春期になると、子どもたちは親に相談していたことを、友だちや先輩に相談するようになります。身近な仲間たちとの間でのトライ&エラーを繰り返して成長していきます。

思春期を迎える前にできること

思春期を迎える前にできることはたくさんあります。そして、思春期真っただ中でも、できることはぜひ試してみてください。

思春期を迎える前にできることはたくさんあります。そして、思春期真っただ中でも、できることはぜひ試してみてください。
以下、7つをご紹介いたします。

「あなたは大丈夫」と、条件付きでなく伝える

何かができるから愛されるわけではありません。役立つから大切にされるわけでもありません。そのままのお子さんの存在が愛しいのだということを、しっかりと伝えましょう。

子どもの感情を言語化してあげる

自分の心を言葉にするという習慣が身につくと、気づきにくい自分の感情に気づけるようになります。
気づいた感情を表現できるようになっておくと、思春期を迎えた時に、伝えたくても伝えられない気持ちを言語化できます。ぐっとコミュニケーションが楽になりますよ。

心を込めて話を聴く

「うちの親は自分の話を聴いてくれる」という信頼は、子どもにとって大きな安心感につながります。

自尊心を育む

言葉でいうのは簡単ですが、これはとても地道な取り組みです。
ポイントは以下です。

  • お子さんのプラスの行動を拾い、当たり前にできていることをフィードバックしましょう。そうすると、ほめることは、たくさんあるはずです。
  • 結果を肯定的にとらえるよう心がけましょう。同じ結果でも、どうとらえるかでまったく違った体験となるものです。
  • どんな結果に終わったとしても、それをやりたい、そうしたい動機を認めましょう。
  • 達成可能な目標を一緒に作りましょう。これは、ほめる機会を作ることになります。
  • 「行動」は否定しても、「人格」は絶対に否定しないようにしましょう。

希望を持って、応援する

「期待」ではありません。期待は、強すぎるとかけられた側にはプレッシャーになり、期待した側にはそれが外れた時に不満や裏切られた感じを持つことにつながります。「希望」をもって応援していきましょう。

「自立」の基盤は「依存 」

自立と依存は対立概念ではありません。本当に自立している人は、人に上手に助けを求めることができるものです。
ただ、助けてもらわなければいけない状況なのかが自分でわからない、ということもあります。そういう意味では、失敗をするということは重要な体験です。
なぜなら、「ここまではできるけれど、ここからはできない」という線引きができるようになるからです。

親も困ったら子どもに助けてもらう、くらいの気楽さで、助け助けられの関係を築いておけるとよいでしょう。
そして、いざとなったら全身全霊を賭けてあなたを助けると、思っているなら、なお素晴らしいことです。

スキンシップを忘れずに

スキンシップはとても大事です。
肌に触れること、身をゆだねることの心地よさをたくさん体感させてあげてください。

思春期は、親自身も共に成長する時です。
子どもが全然話をしてくれなくなった…、なんだか毎日イライラしてすぐキレる…、落ち込んだら部屋から出てこない…、夜遅くまで起きていて何をしいているかわからない…、恋人ができたみたいだけど教えてくれない…など。

寂しかったり心配だったり、「あんなにかわいかったわが子はどこへ?」と思ってしまいそうなのが思春期です。しかし、自立を始めるわが子との、新しい関わり方を獲得する時期と捉えていきましょう。

大切にしたい5つの心がけ

子どもと関わる中で大切にしたいのは、以下の5つの心がけです。

  • 「ここは安全だよ」というメッセージを送り続けること
  • 「あなたが感じていることを知りたいよ」という思い
  • いつでも反応できる敏感さ
  • 「いつもいつでも正直な自分でいるよ」という一貫性
  • 「何でも話して大丈夫」という裁きのない姿勢

思春期に限らず、子どもと、人と関わる中での基本として、これらを大切にしていってください。

最後に

思春期の息子が私に対して大声でキレた時、激しい苛立ちを覚えた経験があります

思春期の息子が私に対して大声でキレた時、激しい苛立ちを覚えた経験があります。赤ちゃんの頃は受けいれられた泣き声が、身体が大きいという理由だけで抑止しがたい感情になったのです。
当時の私は、大声で彼の叫びを圧したのですが、解決にはなりませんでした。わかったふりも、効果はありませんでした。正論パンチも、効きませんでした。

発達に関する知識を当時の自分が持っていたら、もう少し早く楽にわが子と分かり合えたかなと思うこともあります。
子どもの成長の過程で心と体に何が起きているのかがわかるだけで、お互いのコミュニケーションは楽になるはずですよ。

文:いしづかみほ

大手進学塾の講師を経て、不登校、発達症、虐待とネグレクト、愛着障害等々の教育相談と学習指導、カウンセリングを20年にわたり行ってきた。漫画家。イラストレーター。カウンセラーでセラピスト。
著書「マンガでわかる!発達症との向き合い方」(impress Quick Books)

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