【ひきこもりのリアル】6年間の時を経て、働く今を語る<前編>

【ひきこもりのリアル】6年間の時を経て、働く今を語る<前編>

ひきこもりとは、さまざまな要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則6ヵ月以上にわたり、おおむね家庭にとどまり続けている状態を指します。

6年間のひきこもり生活を経て、今では働きながら、ひとり暮らしもしているNさん。ひきこもり当時、どんなことを考えていたのか。そして、どんなきっかけで、外に出られるようになったのか。名古屋市にある子ども・若者を対象とした支援施設「若者シェアガレージ」で、話を聞きました。

「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(厚生労働省)より

若者シェアガレージとは?

名古屋市北区の大曽根駅から徒歩5分。JR線近くのビルの一角に、「若者シェアガレージ」があります。

名古屋市北区の大曽根駅から徒歩5分。JR線近くのビルの一角に、「若者シェアガレージ」があります。棚に並ぶカップスープ、レトルトカレー、調味料、生理用品などは企業や個人からの寄付物資で、自身で選んで持ち帰ることが出来ます。名古屋市在住の18~25歳の若者が、誰でも利用できる場所です。

6年間のひきこもり生活を経て、今では週5日働いているNさんも、「これ、いいかな」とシェアガレージにある物品を手に取ります。やがて棚の前に座り、「緊張してちょっと震えますね」と言いながら、学校に行けなくなった当時からこれまでのことを話してくれました。

ひきこもりに至った経緯

――Nさんの小中学生時代を教えてください

――Nさんの小中学生時代を教えてください

小学校はまずまず普通に通っていました。高学年になって、いくつか自分の失敗を笑われたり、恥ずかしいことが起きたりしました。中学生ではそれが加速度的に増えたように思います。例えばプールの授業の後に、制服に着替えなくてはいけないのに、1人だけ体操服だったり。みんなの前で発表する時とかもうまく話せないし、バレーボール部の顧問にもきつく怒られたりしたこともありました。

家で母に話すことが出来ればよかったのですが、愚痴を言ったり、自分の気持ちを話したりするのが下手で。感情を言葉に出来ない代わりに、物を壊すこともありました。仮病を使って休む日が増えて、中3の半年はもう学校に行っていませんでした。

――学校に行かない時間は少し楽だったのですか?

ストレス軽減にはなっていたと思いますが、罪悪感はありましたね。中学を卒業した時は、解放された気分でした。

――その後はどうされたのですか?

進学も考えました。でも、通信制高校の見学に行った時、上履きを持ってくることを知らなくて、靴下で回らなくてはいけなかったんです。もうそれが恥ずかしくて……。その後の引きこもりは4年くらいだったのですが、何も考えられず、ただしんどい、きつい、外に出たくない。ほとんどの時間を自分の部屋で寝て過ごしました。

当時は部屋にパソコンもなかったので、リビングの共有パソコンでゲームやアニメを見て、親や兄弟が帰ってきたら自分の部屋に戻って。会えば、いろいろ言われるかもしれないから。

――動き出されたのはいつごろですか?

19歳の夏くらいです。多少回復してきて、両親に「高認(高等学校卒業程度認定試験)を受けたい」って相談しました。

19歳の夏くらいです。多少回復してきて、両親に「高認(高等学校卒業程度認定試験)を受けたい」って相談しました。自分の中の固定観念があって、大学を受けるための切符が欲しかったんだと思います。「人生を元に戻さなくちゃ」って。無事に高認はとれたのですが、大事なエネルギーを全部使っちゃったんですね。そのころ飲食店でのアルバイトもやってみたのですが、1か月しか続かなくて、充電が切れた感じで、また2年ひきこもりました。

この時は、前のひきこもりより少し余裕があったので、自分のことを知りたい気持ちも出て来て、ブックオフで心理学や精神疾患の本を立ち読みしていました。

――実際にクリニックに受診することもあったのでしょうか?

母が心療内科を探してくれました。今考えれば、間違いなくうつだったと思います。1か月くらいお風呂に入らない時もあったし。でも、病院に行くなど、自分で動き出すにはハードルが高かったんですね。受診して、話を聞いてもらったり、診断を受けたりして、自分のことを知れたのはよかったです。

カウンセラーさんと話して、自分の気持ちを言葉に出来たことはすごく助けになりました。発達障害と言われましたが、それを聞いて、「あ、そうなんだ」と腑に落ちた感じでした。

相談機関との出合い

――若者シェアガレージを運営する相談機関につながったのもこのころですね。名古屋市子ども・若者総合相談センター

――若者シェアガレージを運営する相談機関につながったのもこのころですね。

「こわか」(名古屋市子ども・若者総合相談センター)も母が教えてくれて。仕事の相談ですごくお世話になりました。最初の飲食店のアルバイトを1か月で辞めてしまったので、次は「裏方の仕事がいい」と思い、こわかでいくつかの仕事を選んでもらいました。

その中の1社が、今働いている清掃の会社です。一緒に見学に行ってもらい、1日3時間、週2日から働き始めました。徐々に増やしていって、今は7時間の週5日、週37.5時間働いています。こわかの相談員さんには、「どうやって上司に相談したらいいか」とか、仕事の愚痴も言えるようになりました。今日もこの(インタビューの)後は仕事に行きます。

後編では、Nさんのひきこもり時代を振り返りながら、今の生活、これからのことについて話を聞いています。

若者シェアガレージ
名古屋市在住・在学の18歳~25歳が利用できる食料や生活物資の提供拠点。名古屋市の公的な事業で、企業や個人からの寄付も受け付けています。
https://cowaka.net/share-garage

名古屋市子ども・若者総合相談センター
名古屋市に住む0~39歳とその保護者を対象にしたなんでも相談窓口。不登校、家族関係、友人とのことや仕事のこと、一緒に考えたり、より専門的な窓口を一緒に探したりします。初回は予約が必要。
https://cowaka.net/

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