中学生の不登校の原因は?親がとるべき対応や勉強方法

中学生の不登校の原因は?親がとるべき対応や勉強方法

不登校の中学生は増えているものの、その原因はひとつではありません。
自分の子どもが不登校になると、はじめてのことにどう対応すべきなのか、親として何ができるのか悩んでしまいますよね。
ここでは、不登校の中学生をもつ親御さんや周りの大人に向けて、対応方法のヒントやお子さんの勉強方法、不登校からの進路の決め方について専門家が解説します。

いしづかみほ

カウンセラー:いしづかみほさん
不登校のお子さんの事例は、ひとつとして同じものはなく、そのきっかけは本当にさまざまです。そして、中学生となると、卒業後の進路のことが気になり「学校に行かせなくては」と急かしてしまいがち。
家庭という安全基地から外に出て、友だち・仲間との絆を形成するからこその課題もたくさん浮上してくるのがこの中学生の時期です。
不登校の問題は、周りの大人にとってもこれまでの固定観念や常識、体裁の枠を超える勇気が試されているといえるでしょう。

中学生の不登校の原因は?

中学生の不登校の原因は一つではありません。

中学生の不登校の原因は一つではありません。

  • 友だちとのトラブル
  • 先輩とのトラブル
  • 先生が怖い、嫌い
  • 部活が厳しい
  • 勉強が難しい
  • 朝起きられない
  • 通学が大変

など、不登校になる理由は本当にさまざまで、いくつかの原因が重なっていることもあります。

こうしてまとめてしまうと、
「それは心の持ちようでどうにでもなるものでは」
「がんばって乗り越えることや我慢を学ばなくては」
「そうは言っても受験もあるのだし、学校には通わないと」
と、言いたくなる方もいるのではないでしょうか。
根性や我慢や頑張りで、不登校は解消できるのでしょうか。
実際にあったケースを紹介しながら、お話をさせていただきます。

対人恐怖からの不登校実例

中学1年生の1学期から少しずつ休むことが多くなり、2学期からは完全に不登校になった、という女子生徒のご相談を受けたことがあります。

勉強はわりと好きで、数学は自分で教科書を見ながらでもある程度理解できるといった具合。私に対しては目を見てはっきりと自分の気持ちを言葉にできる子でした。
けれど、学校ではクラスの友だちと話をすることができず、先生から話しかけられても無言で、教室に入ることがどうしてもできないという相談でした。

不登校になったきっかけははっきりしておらず、朝体調があまりすぐれないという日が続き、ちょっとずつ休む日が増え、いつの間にか学校へ行かなくなってしまったとのことでした。

それでも彼女は、授業が始まってからの時間や放課後などになんとか登校していました。
友だちと会わずにすむタイミングを見計らっていたのです。保健室やスクールカウンセラーの相談室に通い、自習をしたり先生と話をしたりして、数時間を過ごし下校することを日課としていました。保健室登校が出席扱いとなるためです。
けれど、それも何日かに1回になり、何週間に1回になりました。

そんな中、学級担任の先生と直接会ってお話をさせていただく機会を持つことができたので、彼女と一緒に中学校に行くことになりました。

校門から相談室までの道を一緒に歩いてみて、初めてわかりました。校門をくぐったとたん、彼女の身体が目に見えて緊張し、顔は赤くなり表情がこわばったのです。
すれ違う同級生や先輩たちとなるべく目を合わせないように下を向き、まるで自分の気配を消すかのようにして足早に相談室に向かいます。

ああこれは苦しいねと、思いました。

彼女は、人と会うことが苦痛に「感じられる」を通り越していました。がんばって学校に行こうとするけれど、人とすれ違うだけで身体に反応が出るくらい(顔が赤くなる、身体が緊張でこわばるなど)になっていたのです。

不登校で解決すべき本当の問題

不登校の理由はさまざまです。
本人も、何がきっかけだったのかを思い出せないということもあります。

身体に刻まれた恐怖やみじめさ、人から非難されている感じ、嘲笑されている感じ、ひとりぼっちな感じなど、本人はいろいろ感じているはず。
こうした感情は、本人にとっては、解決したくてもできない、どうしたらいいかわからない出口のない感覚だったりするものです。

「そんなものは捉え方次第だろう」という意見もあります。同じように感じられない、自分なら気にしない、という方もいるでしょう。

けれど、その子には「そのように」感じられるのです。
前述の女子生徒は、捉え方を変えようとしてみても、気にしないようにがんばってみても、身体が反応を示してしまうほどに苦しかったという例です。

大人がその子と同じように感じられなくとも、「あなたにはこれが苦痛なんだね」「あなたはそう感じているんだね」と理解をすることはできるはずです。

ここで大切なのは、「学校に行かないこと」が問題ではないということ。
解決・解消すべきなんらかの問題や課題があるため、学校に行けなくなったのだという視点を持つことです。

ということは、根本的な問題を解決すれば、自然と学校には行くようになるということです。

そのために、保健室登校があり養護の先生が話を聞いてくれる環境があり、スクールカウンセラーや教育委員会の相談窓口があります。
専門のカウンセラーに相談に行くのもよいでしょう。
大元の問題解決へのテコ入れなくして不登校を解消しようというのが、土台無理な話なのです。

不登校、家族でできる対応は?

根本的な問題を解決するために、家族や周りの大人にできることは、いくつもあります。

根本的な問題を解決するために、家族や周りの大人にできることは、いくつもあります。
基本的な対応として見直したいのは、「愛着形成」と「生活リズムを整えること」の2点です。

中学生でも愛着形成を

まずは、わかりやすく愛を形にして表現することが大切です。
家にはあなたを愛する家族がいて、ここは安心できる大丈夫な場所なのだと伝えましょう。
小学生の不登校、原因と対策は?母子分離不安との関連性
の記事でご紹介した愛着形成を、ここでまた改めておこなっていくのです。
お子さんが困っている時に助けとなる行動を起こすことは、言葉以上に愛が伝わるものですよ。

「高校に行けなくなるよ」といった脅しはNGです。
「悲しい」「心配している」など、自分の感情を使ってお子さんを思い通りに動かすのもやめましょう。

生活リズムを整える

夜間、あまり眠れずにいて朝が辛いようなら、生活のサイクルを見直しましょう。

「寝なさい」「起きなさい」「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」では変化は起きません。どんな環境ならゆっくり眠れるのか、朝気持ちよく目覚めるためにはどんな工夫ができるのかを考えましょう。
「させる」というよりも「誘う」という感覚で声をかけましょう。
一緒にやったり、やりやすくなるような工夫を提案してあげたり、環境を整えたりといった姿勢が必要です。

不登校中の勉強の進め方は?

学校には行けないけれど塾には行ける、というお子さんは一定数います。「学校に行ってないのに塾や習い事に行くなんて」という発想を、いったん脇に置いてみてください。

学校には行けないけれど塾には行ける、というお子さんは一定数います。「学校に行ってないのに塾や習い事に行くなんて」という発想を、いったん脇に置いてみてください。

学校や家庭以外に、行く場所や話す相手があるということは、大切ですよね。
その子が行きたいと思える場所、会いたいと思える相手、楽しいと感じる空間を、奪い取る必要はありません。
「栄養補給しているんだな」くらいの感覚で大人は子どもを見守ってあげてよいのです。

お子さんが学習に関して不安を訴えているようなら、塾の個別指導や家庭教師、ボランティアの学習支援等を活用されてみるのはどうでしょうか。
学校の保健室や相談室に行って勉強を見てもらうこともできますし、フリースクールでサポートを受けることもできます。

中学卒業後の進路選び

高校に進学をすることを前提としたならば、以下のような進路があります。

  • 全日制高校
  • 定時制高校
  • 通信制高校
  • 高卒認定試験
  • 高等専修学校

など

お子さんの様子と学力、中学時代にどのくらい欠席したか等を考慮して、進路選びをするとよいでしょう。

全日制高校

受験はできますが、欠席事由を問われることが多いです。
自己申告書を出すことである程度事情を考慮してもらえるという学校もあります。
私立の推薦入試などは各学年の欠席日数が審議の対象となりますが、一般入試であれば内申点よりも入学試験の結果の方を優先するとも言われています。
志望する高校がどのような対応をしているかを直接問い合わせてみてください。

定時制高校

定時制高校には、17時~21時に4時間程度授業をしている学校と、三部制(午前部・午後部・夜間部)から自分に合ったコースを選べる学校などがあります。長時間学校にいるのが苦痛とか、朝起きることが難しいといったお子さんにはよいでしょう。
卒業までにかかる年数も、3年間のコースと4年間のコースが選べます。学校説明会に行ったり学校案内を調べたりして、各学校のカリキュラムの違いを見比べてみてください。
実際に学校に通うことをイメージしながら、お子さんやご家族の生活サイクルを元に学校を選びましょう。

通信制高校

オンラインで授業を受けたり課題を提出したりすることで、高校卒業資格をとれる学校です。
実際に学校へ行く「スクーリング」の回数は選ぶことができるため、自分に合った関わり方ができることも特長です。
通学そのものに苦痛を感じるお子さんにはおすすめですが、課題の提出など自己管理がある程度できることが前提となることを考慮に入れておきましょう。

サポート校

サポート校とは、文字通り通信制高校の卒業資格を取ることをサポートする学校です。
通信制高校では、課題の提出などにおいて自己管理が必要になり、それができないと卒業が難しくなります。サポート校では、高校卒業に向けてのサポートをおこないます。

塾のような設備や校舎を持っていて、そこに通うことも可能。キャンプやサークル、体育祭や音楽祭などの学校行事があったり、職業体験を推奨している学校もあったりと、各校特色があります。
メンタルケアに力を入れているサポート校もあるので、お子さんに合った学校を探してください。
インターネットで調べてパンフレットを取り寄せる、実際に足を運び見学をするなどしてみるとよいでしょう。

感じ方は「人それぞれ」

実例でご紹介した女子生徒の進路はというと、中学校の欠席日数もある程度考慮してくれる私立高校を受験し合格しました。

そして中学校の卒業式当日。
大勢が集まる場所ではどうしても緊張してしまうので、体育館での式に参加することはできませんでした。しかし、校長先生のはからいで、校長室で一対一で卒業証書を授与してもらうことになりました。

いよいよ校長先生が女子生徒に卒業証書を授与するというその時に、3年生の先生方が全員、ぞろぞろと校長室に入ってきました。突然のことに、彼女は顔を真っ赤にして体を硬直させ、震え始めました。あとから本人に聞いたことですが、その瞬間は怖くて怖くて足が震え、立っているのがやっとだったそうです。

先生方にしてみれば、がんばって卒業の日を迎えた彼女の門出を祝ってあげたいという一心だったのだと思います。精一杯の励ましだったのでしょう。
けれど、感じ方は人それぞれ違うのです。
その先生方の思いが彼女に伝わるまでには、しばらくの年月がかかりました。彼女の心の成熟が進むにつれ、それが思いやりの行動だったと理解されるに至ったのです。

最後に

不登校になる理由は本当にさまざまです。言われたこと、されたことに対してのお子さんの感じ方も千差万別といえるでしょう。

不登校になる理由は本当にさまざまです。言われたこと、されたことに対してのお子さんの感じ方も千差万別といえるでしょう。よかれと思ってやっていることが逆効果になってしまうこともあります。
そもそも「相手と自分の感じ方は違っているのが当たり前」と理解すること。その上で、違いを受け入れ尊重し合えるようになれたら、素晴らしいと思います。

文:いしづか みほ

大手進学塾の講師を経て、不登校、発達症、虐待とネグレクト、愛着障害等々の教育相談と学習指導、カウンセリングを20年にわたり行ってきた。漫画家。イラストレーター。カウンセラーでセラピスト。
著書「マンガでわかる!発達症との向き合い方」(impress Quick Books)

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