小学生、中学生の間で増えている不登校。高校生の不登校も少なくありません。もし、わが子が不登校になってしまったら。できることなら不登校の原因を退け、子どもを支えてあげたいと思うことでしょう。
今回は、文部科学省の調査をもとに、不登校の原因をまとめました。親がすべき対応や心構えについても触れていますので、参考にしていただけたらと思います。
不登校の主な原因とは
令和2年度の調査によると、不登校の児童の割合は以下の通りです。
- 小学生 1%
- 中学生 約4%
- 高校生 約1.4%
決して多い数字ではありませんが、小中学生は8年連続で増加しています。
不登校が増えていると聞くと、いじめや暴力との関係が頭をよぎる方も少なくないかもしれません。しかし、不登校の主な原因はいじめではなく、本人の無気力や親子のかかわりが主な原因の1つと言われています。
文部科学省の調査結果では、不登校の原因を下記のように分類しています。
不登校の主な原因
<学校にかかる状況>
- いじめ
- いじめを除く友人関係の問題
- 学業の不振
- 進路の不安
- クラブ活動・部活動等の不適応
- 学校のきまり等の問題
- 入学・転編入学・進級時の不適応
<家庭にかかる状況>
- 家庭の生活環境の変化
- 親子のかかわり方
- 家庭内の不和
<本人にかかる状況>
- 生活リズムの乱れ・あそび・非行
- 無気力・不安
小学生・中学生・高校生とも、これらのうち最も多いのは、本人にかかる状況の「無気力・不安」で、全体の約4~5割を占めています。
次章からは、小学生・中学生・高校生それぞれの不登校の割合や原因、対策を解説します。
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小学生の不登校、原因と対応
令和2年の文部科学省の調査によると、小学生の不登校は全体の約1%。そのうち約44%は、年間90日以上を欠席しています。
不登校の子は約1%とまだ多いという状況ではありません。しかし、不登校になると約半数は長期にわたり欠席していることが分かります。
不登校の原因
文部科学省の「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、小学生の不登校の原因は以下とされています。
- 学校 15%
- 家庭 20%
- 本人 60%
- その他 5%
小学生の不登校の主な要因で多いのは、本人の状況です。次いで家庭の問題が多く、学校の問題は約15%にすぎません。
細かく分類すると、割合が高いのは
- 本人の無気力・不安…46.3%
- 親子のかかわり…14.6%
- 生活リズムの乱れ・あそび・非行…14.0%
- いじめを除く友人関係の問題…6.7%
の4つです。
小学生の不登校は、「無気力・不安」が他の項目よりも圧倒的に多いことがわかります。
親子のかかわりや生活リズムの乱れを要因とした不登校もあり、家での暮らしが不登校の一因ともなり得るようです。
不登校ぎみだったり、不登校になってしまったりした場合、学校内外の専門機関に相談しましょう。
小学生では、学校内の相談やカウンセリングを受けたり、病院や診療所に相談したり、教育委員会の窓口や教育支援センターに相談する人が多いようです。
中学生の不登校、原因と対応
小学生・中学生・高校生の中で、最も不登校が多いのは中学生です。令和2年の調査では、中学生の不登校の割合は約4%。8年連続で増加しています。
不登校のうち、約6割は年間90日以上欠席しており、長期的に学校を休んでいるようです。
不登校の原因
文部科学省の「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、中学生の不登校の原因は以下とされています。
- 学校 27%
- 家庭 10%
- 本人 58%
- その他 5%
中学生の不登校の主な要因は、本人の無気力・不安や学校の問題。思春期は、発達上、友達とのかかわりが重要な時期だと言われています。
家族よりも友達とのかかわりの中で自我を成長させていきます。そのため、友達とのかかわりが上手くいかないと不登校につながることも多いと言われています。
不登校の原因を細かく分類すると、
- 本人の無気力・不安…47.1%
- いじめを除く友人関係の問題…12.5%
- 生活リズムの乱れ・あそび・非行…11.0%
- 学業不振…6.5%
- 親子のかかわり…6.2%
が主な要因として挙げられます。
最も多い要因が「無気力・不安」である点は小学生と変わりません。しかし、中学生では「友人関係」や「学業不振」も不登校の主な要因となっています。
中学生は、小学生~高校生の間で最も不登校が多い時期です。そのため、学校内でカウンセリングや教育委員会が設置する教育支援センターなど、地域によっては支援窓口が充実しているかもしれません。
学内外の窓口に相談したり、病院や診療所に相談したりする人が多いようです。
高校生の不登校、原因と対応
高校生の不登校は、令和2年の調査では約1.4%です。中学生と比べると半分以下の割合です。
また不登校のうち年間90日以上欠席している子の割合は約20%と、小中学生よりも少なくなっています。
不登校の原因
文部科学省の「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によると、高校生の不登校の原因は以下とされています。
- 学校 32%
- 家庭 7%
- 本人 53%
- その他 8%
高校生の不登校の主な要因は、約半数が本人の状況です。
次いで学校の問題が多く、家庭を要因とした不登校は小中学生よりも少ないようです。
- 本人の無気力・不安…37.7%
- 生活リズムの乱れ・あそび・非行…15.4%
- 入学・編入学・進級時の不適応…9.2%
- いじめを除く友人関係の問題…8.8%
- 学業不振…6.1%
高校生の不登校要因の詳細は上記の通りです。
小中学生同様「無気力・不安」が最も多いものの、「入学や進級時の不適応」も挙げられています。中途退学者数を見ても、高1時点が最も多く退学者全体の86%を占めています。
高校生の不登校は、教育支援センターなどに指導や相談にいく人は少ないよう。主な相談先は、学校のカウンセリングや病院などです。
高校生になると、なかなか親と話してくれないというケースもあるかもしれません。また、子どもとのコミュニケーションが難しく、不登校の原因が分からずに悩むこともあるでしょう。そんな時は、学校など身近な窓口に相談するのも方法のひとつです。
原因が分からないときの対応
すでに子どもが不登校だったり、不登校ぎみだったりすると、親として気になるのは原因やきっかけではないでしょうか。ただ、不登校の原因は1つではないかもしれませんし、子どもが話してくれない場合もあります。
不登校の原因がわからないと、親にとっては辛いもの。また、不登校のきっかけや理由を聞き出したくなりますが、子どもが話したがらないうちは待つ姿勢も大切です。
学校に行くのが正しい?
子どもの意見に耳を貸さず「学校に行きなさい」というのは避けた方がよいかもしれません。
文部科学省では、基本的な姿勢として「学校に行けるようになることだけが不登校解決の目標ではない」と示しています。
さらに不登校の生徒の意思を尊重しつつ、個々の状況に応じたサポートをするとしています。
わたしたち親も、「学校に行きなさい」というよりは、本人の意見を聞き、意思を尊重すること。それができるサポートを一緒に考えるのが、先へ進む第一歩なのかもしれません。
学校以外の教育の場も
近年は、学校に行けない場合でも教育を受けられる場所はいくつかあります。
教育支援センターや民間のフリースクール、またインターネットを活用したICT教育などで学ぶこともでき、多くの不登校の生徒が利用しています。
そして、学校外の教育機関でも、一定の条件を満たせば出席扱いになるケースも。教育の機会を奪ってしまうことのないよう、学校以外の選択肢を示してあげることも必要です。
不登校の原因が分からなくても、子どもの意思を尊重しながら対応できるようにしたいですね。
最後に
まずは、どんな子どもでも不登校になる可能性があることを心得ておくこと。
不登校の原因は、いじめなど学校の問題だけではありません。友達とのかかわりや親子のかかわりが、不登校の一因になることもありますし、複数の要因が重なって起こることもあります。
その上で、もし子どもが不登校になったとしても、親の不安や焦りの気持ちから子どもを責めたり、登校を強要したりしないようにしましょう。
小学生・中学生・高校生と成長するにつれ、不登校の要因は変わります。不登校に悩んだら、子どもの気持ちを第一優先に考えていきましょう。親自身も一人で抱え込まず、早めに学内外の専門家に相談できるとよいですね。
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参照:
令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について/文部科学省
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針(概要)/文部科学省
文:COE LOG編集部