シングルマザー(母子家庭)・シングルファーザー(父子家庭)のひとり親世帯に対して、国や自治体ごとにいくつかの支援や制度があるのはご存知でしょうか。
手当や助成、貸付など、支援制度の多くは自治体に申請が必要です。今回は、ひとり親家庭が利用できる手当や支援について解説します。
シングルマザーの支援制度
シングルマザーの家庭は、2020年現在、約65万世帯と言われています。(※1)
母子家庭の平均年収は243万円で、全世帯の平均550万円と比べておよそ300万円も少ないのが実態です。
国や自治体では、経済面や子育て面で悩んでいるひとり親を支援する制度が増えています。
シングルマザーへの経済支援
厚生労働省では、ひとり親家庭に向けて子育て支援、就業支援、養育費相談支援、経済的支援の4項目の支援を実施しています。(※1)
子育て支援は、子どもの生活や学習の支援や保育園などへ優先的に入所できるなどの制度。
就業支援では、ハローワークなどでの仕事探しの支援だけでなく、仕事を得るための職業訓練への給付金制度もあります。
さらに養育費の相談窓口を自治体に設置する制度や、生活費や教育費の経済的支援が受けられる制度も増えています。
これらのうち、特に気になるのは経済的支援ではないでしょうか。
経済的な支援は主に、
- 手当が支給される制度
- 無利子で貸し付けが受けられる制度
- 税金などの控除制度
に分けられます。
次章から詳しく見ていきましょう。
シングルマザーの手当の種類
シングルマザーなどのひとり親家庭に支給される代表的な手当には、児童扶養手当・児童育成手当・児童手当の3種類があります。
どれも国や自治体への申請が必要なので、まずは以下の条件を確認してみましょう。
児童扶養手当
児童扶養手当は、シングルマザーなどのひとり親家庭にのみ支給される手当のひとつ。
18歳未満の子がいる家庭に支給されます。
国の制度ですので地域ごとの差などはありませんが、所得制限があります。
2人世帯で所得160万円以下の世帯では、児童扶養手当の全額43,070円(子ども一人の場合)を受給できます。
2人世帯で所得365万円以下の世帯では、手当の一部43,060円~10,160円の受給となります。(※2)
所得金額や世帯人数、子どもの人数ごとに受給できる額は異なります。
詳しく知りたい方は、市区町村の窓口で相談してみてください。
児童育成手当
児童育成手当は、自治体が実施しているシングルマザーなど、ひとり親の支援事業です。
国の制度ではないため、児童育成手当の制度のない自治体もあります。
児童扶養手当と同じく18歳までの子どもがいる世帯が対象で、所得制限があります。
支給される手当は、東京都の場合は子ども1人あたり13,500円です。(※3)
受給条件や手当の額は自治体ごとに異なりますので、自治体のホームページ等でご確認下さい。
児童手当
児童手当は、シングルマザーなどのひとり親世帯でなくても受給できる子育て世帯向けの手当です。
国の制度ですので、自治体ごとの差はありません。
中学卒業までの間が対象で、児童手当をもらうには所得制限があります。
児童手当の満額である3歳未満15,000円・3歳以上10,000円・中学生10,000円をもらうには、所得制限660万円以下が条件です(子ども一人の場合)。
特例給付の5,000円は、所得896万円以下が対象です。(※4)
生活費や教育費の貸付制度
手当の他にも、シングルマザーなどのひとり親家庭向けの無利子や低利子貸付の制度がいくつかあります。
代表的な制度は、
- 母子父子福祉資金
- 生活福祉資金
- ひとり親家庭住宅支援資金貸付
の3つで、手当とは異なり貸付ですので、返済が必要です。
母子父子福祉資金
20歳未満の子どもがいるシングルマザーなどのひとり親が、子どもの教育費や生活費、住宅資金などを無利子(保証人ありの場合)もしくは低利子(保証人なしの場合)で貸付が受けられる制度です。
資金の種類により借りられる金額の上限や借りられる期間、返す期間などが定められています。(※5)
詳しくは、内閣府のホームページ等でご確認下さい。
生活福祉資金
生活福祉資金は、低所得者向けの貸付制度。シングルマザーなどのひとり親だけの制度ではありません。
借りたお金は、生活費や教育費、住居費などに活用できます。
こちらも資金の種類ごとに、上限額や利子等が決められています。
新型コロナウイルス感染症の影響により生活費等が困窮している場合には、この生活福祉資金とは別に新型コロナウイルス感染症の特例貸付を受けることも可能です。(※6)
詳しくは、お住まいの地域や厚生労働省のホームページをご確認下さい。
ひとり親家庭住宅支援資金貸付
ひとり親家庭住宅支援資金貸付は、シングルマザーなどのひとり親家庭で児童扶養手当を受けている家庭が対象。家の借り上げ等に必要な資金の貸付を受けられる制度です。
自治体が運営する母子・父子自立支援プログラムに参加しているひとり親であることが条件です。
月々40,000円以内を12か月間無利子で借りられます。(※7)
これらの貸付は併用も可能。貸付は、生活費や教育費といった日常的な出費に充てることもできます。
使い道により、上限金額などの条件が異なりますので、自治体のホームページ等でご確認下さい。
税金などの控除制度
シングルマザーなどのひとり親世帯では、所得税や住民税の優遇や医療費の助成なども受けられます。
手当や貸付のように直接家計を助ける制度ではないものの、支出を抑えられるのは大きなメリットといえるでしょう。
ひとり親が対象となる控除や減免には、
- 所得税のひとり親控除
- 住民税の免除
- 国民年金や国民健康保険の減免
- ひとり親家庭等医療費助成
などがあります。
所得税のひとり親控除
令和2年分の所得税から「ひとり親控除」がスタートしました。
ひとり親であれば、基礎控除等とは別に35万円の控除が受けられます。
ただし対象となるのは、家族の合計所得が500万円以下の家庭です。(※8)
所得税が免除されるわけではありませんのでご注意ください。
住民税の免除
ひとり親で所得の条件を満たした場合は、住民税が免除される場合もあります。
東京都武蔵野市の場合、ひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下の場合に、住民税が非課税になります。(※9)
市区町村ごとに異なりますので、お住まいの地域の窓口やホームページでご確認ください。
国民年金や国民健康保険の減免
収入が少なく年金や県法保険料の支払いが難しい場合には、費用の免除が受けられる場合があります。
こちらも所得制限などの基準があり、申請して承認された場合だけが対象です。(※10)
日本年金機構の窓口や自治体に相談してみて下さい。
ひとり親家庭等医療費助成
ひとり親家庭の親が受けられる医療費の助成です。
子どもの医療費は、シングルマザーなどのひとり親に限らず医療費の助成が受けられます。
しかし、ひとり親家庭の場合は、こどもの医療費だけでなく、親の医療費も助成が受けられるのをご存じでしょうか。
助成の条件は自治体ごとに決められており、所得制限の金額や助成金額などが異なります。
東京都の場合、助成の上限金額は通院で1ヶ月上限14,000円、入院は57,600円です。(※11)
詳しくは、自治体の窓口やホームページでご確認ください。
最後に
シングルマザー(母子家庭)が受けられる主な支援をご紹介いたしました。
各支援制度には条件があり、その条件は自治体ごとに定められているものもあります。
またこれらとは別に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている場合に利用できる助成や貸付などの制度もあります。
気になる支援があれば、市区町村の子育て支援窓口などに相談してみてください。
(※2022年10月現在の制度をご紹介しています)
文:COELOG編集部
※1 ひとり親家庭等の支援について/厚生労働省
※2 児童扶養手当について/厚生労働省
※3 児童育成手当(育成手当)(東京都制度)/東京都福祉保健財団
※4 児童手当制度のご案内/内閣府
※5 母子父子寡婦福祉資金貸付金制度/男女共同参画局
※6 生活福祉資金貸付制度/厚生労働省
※7 ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業住宅支援資金のご案内/東京都社会福祉協議会
※8 No.1171 ひとり親控除/国税庁
※9 住民税が非課税になるのはどんな人ですか/武蔵野市
※10 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度/日本年金機構
※11 ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)/東京都福祉保健局
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