子どもたちの能力が開花するのはどんなとき?

子どもたちの能力が開花するのはどんなとき?

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私たちは、2019年に一般社団法人シヅクリ(※)を立ち上げ、静岡県の地元企業に伴走していただきながら、中学校・高校の正規授業の中で「未来探究型のプログラム」を進めています。
このプログラムは、地元企業のリソース(資源、財源、資産)と地域のリソースを掛け合わせて、地域をよりよくするイノベーションプランを提案するというゴールに向かっていきます。
今回は、このプログラムを通して感じた、子どもたちの可能性・能力開発について書いていきたいと思います。

筆者:山下由修

  • 静岡市内小・中学校で勤務 、清水江尻小学校校長として、県内初のコミュニテイ・スクールの創設・運営
  • 大里中学校校長として、フレックス制勤務体制の確立、校内フリースクールの開設、プロジェクト型校内組織運営に着手
  • 2019一般社団法人シヅクリを創設、静岡を人材育成に奔走中

一般社団法人シヅクリ
『シヅクリ』という名前は、「子」ども成長、教「師」・大人に成長、高い「志」、「静」岡の未来に尽力したいという思いを込めています。
シヅクリプロジェクトに関わる全ての子どもたちや先生方、地域の方々が、自分の本当に大切にしたいことを真ん中に置いて、皆で地域の未来を創造することを目指しています。

ひらめきはどこからやってくる?

先日、ある高校を訪ねた時のこと。4人チームで企画を考案していましたが、授業を開始して10分以上たってもチームは沈黙のまま、何の進展もありません。私がチームに合流しても、ただただ頭を抱えたまま、重たい空気が続いていました。

先日、ある高校を訪ねた時のこと。4人チームで企画を考案していましたが、授業を開始して10分以上たってもチームは沈黙のまま、何の進展もありません。私がチームに合流しても、ただただ頭を抱えたまま、重たい空気が続いていました。
その時、ある女子生徒が口を開きました。
「どうにもこうにも何も浮かんでこないんです。どうしたらこの状況を打開するひらめきは生み出せるのでしょうか?」
正直な胸の内を言葉にしてくれた彼女に対して感動したものの、その返答には時間を要しました。私は、その質問の答えを持ち合わせていません。しかし、彼らの次の一歩に助力したいという一心でこう語りました。
「インスビレーション(ひらめき)が湧き出てくる場面として『3つのB』ということを聞いたことがあるよ。『3つのB』とは、Bus(バス・乗り物)、Bath(お風呂)、後一つは何だと思う?」
「Barbecue(バーベキュー)ですか?」
「なるほど、あるあるだね。素晴らしい。一応Bed(ベッド)って言われているんだよ。」
気付くと皆、満面の笑みでメモしていました。
「ただし、一つ条件があるんだよ。」
「それは、ずっとそのことを考え続けていること。」
私は、言い終わった直後でした。
4人は自分の手に『シヅクリ』と書いていたのです。
なんと素直で、しなやかな反応なのでしょう。きっと今頃、乗り物の中で、お風呂で、寝る前にビックアイディアが浮かんでいることでしょう。

生きながらに生まれ変われる?

ヒトは60兆もの細胞の集合体で、その全ての情報は遺伝子に組み込まれています。
しかし、遺伝子の働きが確実に判明しているのは2%程度。あとの98%は何の働きもしていないと考えられ、ジャンク(がらくた)と呼ばれているそうです。
つまり、私たちの中には、まだ98%もの潜在能力が秘められているということ。そして、この潜在能力は、電灯のスイッチのように点けたり消したりできるそうです。
つまり、眠っている能力のスイッチがオンになるとき、人は生きながらにして生まれ変わることができるということでもあります。

未来探究プログラムで子どもたちに伴走していると、突如飛び出してくるひらめきに驚かされることがよくあります。
誰かの一言をきっかけにして皆にスイッチが入り、次々とイノベーティブなアイディアが広がっていきます。この子たちは人類史上最高峰の潜在能力を持って生まれてきているんだと実感する瞬間です。
「この子たちの中には、どんな潜在能力が隠れているんだろう」とワクワクが止まらない時間でもあります。

子どもたちにスイッチが入る時

では、誰もが持っている潜在能力は、どうしたら引き出されるのでしょうか。

では、誰もが持っている潜在能力は、どうしたら引き出されるのでしょうか。

ベストセラーとなった書籍『最強の働き方』、『一流の育て方』の著者でもあるムーギー・キム氏は、「自分の本当に好きなこと」を「自分で決める」ということが原点だと言っています。
自分の本当に好きなことは、放っておいても頑張れます。しかし、好きなことでも誰かから押しつけられたことには、心から打ち込むことができないでしょう。
もし、自分の好きなことが「?」という場合は、他人の尺度で考えてしまっているのかもしれません。
主体的に生きることは、人生の満足度を高め、自己肯定感を高めることにもつながります。自分で決断することは、モチベーションの大きな源泉になるのはもちろんのこと。自分の中に眠っている潜在能力を呼び覚ますことにつながるのです。

歴史学者の磯田道史さんが子育ての極意としてこんな文章を書いています。

子育てに極意があるとすると、子どもの知りたい、楽しみたいと思う心、好奇心を育てることだ。自分は歴史学者として人類の進歩と退歩を見つめてきた。
人間が行動し、前進するには「動機」がいる。人間を最も本気にさせる源泉は、それを知りたい・楽しみたいと思う心である。歴史に名を残した人物はたいてい自分がやっていること自体を楽しんだ人々である。

ということは、子どもによい人生を送ってほしいと願うなら、好奇心の強い、物事を楽しめる人間に育てることが近道です。
子どもには、思い切り感情を外に出せる、大喜びできる瞬間を作ってあげること。「楽しめること」は間違いなく人間最大の能力です。
大人は、子どもの楽しめる能力を育てるために、手を貸してあげてください。
自分の本当に好きなことを自分自身で見つけ、行動に移すこと。これができれば、その先には結果に左右されない達成感と有用感が満ち満ちてくることでしょう。

好きなことの源泉である「自分がやりたいこと」は心の底から湧き上がってくるものです。そこから今「自分がやれること」がはっきりしてくるはず。やがて「自分がやらなければならない」という使命感が湧き出てくることでしょう。
それが眠っている自身の潜在能力を次々と呼び覚まし、人間最大の能力「楽しめること」につながっていくのではないでしょうか。

もしかしたら、現在の私たちや子どもたちは「やらなければならないこと」からスタートして、「やれること」を決め、「やりたいこと」はどこかに置き忘れてしまっているという逆転現象が起こっているのかもしれません。

自分の手に『シヅクリ』と書いた4人組に再会したら、「楽しんでいますか」という声掛けから合流したいと思います。

文:山下 由修

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