ウイルス性胃腸炎|感染拡大防止法と落とし穴【医師が解説】

ウイルス性胃腸炎|感染拡大防止法と落とし穴【医師が解説】

嘔吐・下痢の人が発生した場合、適切な対策を取らないと、あっという間に感染は広がってしまいます。ウイルス性胃腸炎の主な原因の一つであるノロウイルスは、感染したばかりの人のうんちや嘔吐物に存在します。その数は、うんち1gに10億個以上、嘔吐物1g中には約10万個に。しかも、ノロウイルスは感染力がとても強いため、10~100個のウイルスが体に入っただけで感染してしまいます。
したがって、目に見えないわずかなウイルスの汚染に対しても注意が必要になると言えるでしょう。今回は、ウイルス性胃腸炎の感染予防について解説していきます。

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生
済生会横浜市東部病院小児肝臟消化器科部長。小児科専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
診療を続けていく中で、“コーチング”と“神経言語プログラミング(NLP)”と出会い、2020年3月米国 NLP&コーチング研究所認定NLP上級プロフェッショナルコーチの資格を取得、2022年全米NLP協会公認NLPトレーナーとなる。また、幼少時より武道の修行を続けており、現在は躰道七段教士、合気道二段、剣道二段であり、子供達や学生に指導を行っている。
「子供の一番星を輝かせる父親実践塾」Voicyにて毎朝6時から放送中。

感染拡大防止のポイント

家庭内や、保育園などの施設内でウィルス性胃腸炎の感染拡大を防ぐためにやってほしいこと。

家庭内や、保育園などの施設内でウイルス性胃腸炎の感染拡大を防ぐためにやってほしいこと。
まず、一つ目は「タオルの共有はしないこと」です。
人から人へ感染する病原体の多くは、手を介して感染します。石鹸でよく手を洗ったつもりでも病原体は手に残っており、その手を拭いたタオルにもウイルスは付着します。そして次にそのタオルを使った人の手にウイルスは付着して、手にウイルスがついた状態で食べたり飲んだりすることでウイルスが体の中に入って感染します。
また、現在、流行している新型コロナウイルスにはアルコール消毒の効果がありますが、冬場に毎年流行するノロウイルスはアルコール消毒では感染力をもったまま手に残ります。ですので、石鹸でよく手を洗った後は使い捨てのペーパータオル等で手を拭くようにしましょう。

二つ目は「トイレの水を流すときには蓋をすること」です。先ほどノロウイルスはうんち1g中に10億個以上のウイルスが存在すると説明しました。同様に胃腸炎の原因であるロタウイルスでも、患者のうんち1g中100億個のウイルスが存在します。
したがって、蓋をしないでトイレの水を流すと、ウイルス粒子が空気中に舞い上がり、トイレ中のいたるところに飛び散ります。
トイレ内にタオルをかけているご家庭もありますが、そのタオルにウイルスが付着し、ウイルスで汚染されたタオルを使うことで感染するということも起こります。タオル以外にもドアノブなどにもウイルスは付着しますので、そこから感染してしまう危険性も。また、ウイルス粒子は数十分間、空気中を漂っていますので、次にトイレに入った人がウイルス粒子を口から吸い込むと、感染してしまいます。
ちなみに、新型コロナウイルスも便から排泄されることが知られています。そのため、蓋をしてからトイレの水を流すということは、新型コロナの感染予防にもつながります。

正しい消毒方法とは?

ノロウイルスの場合、嘔吐物1g中には約10万個のウィルスが存在するとお伝えしました。そして、「嘔吐物は目に見える範囲以上に広がっている」ということを押さえておく必要があります

ノロウイルスの場合、嘔吐物1g中には約10万個のウイルスが存在するとお伝えしました。そして、「嘔吐物は目に見える範囲以上に広がっている」ということを押さえておく必要があります。

嘔吐をすると細かいしぶきが広範囲に広がることが実験で証明されています。したがって、嘔吐物を処理する場合には、目で確認できる汚染範囲よりも数十cm~1mほどは広く消毒処理をする必要があります。

まずは、その範囲を立ち入り禁止にしてから、処理をする人は自分が感染しないようにマスク、手袋、エプロン等を装着するようにしましょう。処理をする前に誰かが立ち入ってしまうと、足の裏にウイルスをくっつけて、あちらこちらにウイルスを運んでしまうからです。

処理をする際にはシューズカバーをつけておこなうことをおすすめします。そして、膝や手は床に絶対につかないこと。膝や手をついてしまうと、ウイルスが付着してしまい、そのまま移動するとウイルスを床に広げていくことになるからです。また、嘔吐した際にはウイルス粒子を含んだエアゾルも発生しますので、部屋の換気も重要です。
特にノロウイルスは乾燥するとウイルスが空気中に舞い上がり、空気感染することも知られています。フローリングは嘔吐物やうんちを処理した後に、次亜塩素酸消毒剤で消毒しましょう。
専用の消毒剤がない場合には、家庭用塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム濃度 6%)10ml(キャップ2杯分)を3リットルの水で薄めて消毒液をつくり、消毒をおこなうことも有効です。

嘔吐物やうんちをふき取った紙、手袋、ガウンなどは、まとめてビニール袋に入れ、家庭用塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム濃度 6%)50mlを3リットルの水で薄めた消毒液を一緒に入れます。
嘔吐物やうんちで汚れた衣類、シーツ等は、ビニール袋に密封します。次亜塩素酸消毒剤で消毒可能なものは、消毒して下さい。次亜塩素酸消毒剤を使用できないものはまとめて天気の良い日に洗濯して、陽の当たるところに干しましょう。

カーペットなどの消毒方法として、スチームアイロンで85℃以上1分間の消毒を勧めているような情報も見かけます。しかし、汚染範囲の面積とアイロンの面積を考えると現実的ではありません。スチームクリーナーを使用するのであれば可能かもしれませんが、85℃以上1分間をウイルスで汚染された床すべてに行うのは難しいように思います。

最後に

ここまで、ウイルス性胃腸炎感染拡大防止のための消毒方法をお伝えしましたが、厳密に言うと、ウイルスの種類によって消毒方法等は異なります。
しかし、嘔吐や下痢が始まったその場で原因ウイルスを特定することは不可能です。そのため、最も感染力が強いノロウイルスでの対策をとるようにしましょう。

文:十河 剛 

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