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2022年3月に掲載した記事を再編集し、掲載しています。
毎日を健康に過ごすためには、免疫力を高めることが大切です。免疫とは、ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した時に私たちの体を守り、正常に保ってくれる大切なシステム。私たちの健康に欠かせないものです。今回は、免疫に詳しい医師監修のもと、食事や運動など、免疫力を高めるためのポイントを紹介します。

監修:前田邦博(まえだ・くにひろ)医師
医学博士、日本内科学会内科総合専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析学会透析専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。現在は、愛知県と三重県内の病院に勤務している。趣味はランニング。
免疫力とは?
「免疫力を高めましょう」と言われたことはありますか? 免疫とは、ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入した時に私たちの体を守り、正常に保ってくれる大切なシステム。免疫力が下がると、感染症にかかったり、ケガが治りにくくなったりします。つまり、健康のためには免疫が欠かせません。
「最低限、これだけをやっておけば免疫力が高まる」というものはありません。しかし、免疫力を高めるためには、食事、運動、睡眠といった生活習慣が重要なことは分かっています。
そこで、免疫力を高めるために日々の生活で意識したいポイントを7つ紹介します。
食事はよくかんで食べる
免疫力を高めるためには、まず、栄養バランスのとれた食事が大切です。忙しくて食事を抜いたり、過度なダイエットをしてカロリー不足になったりしていないでしょうか? 私たちと一緒で、免疫細胞も、活動するためのエネルギーなしでは働けません。3食バランスのいい食事を心がけましょう。
逆にストレスから間食が多くなり、その結果、高血糖状態が続くと免疫力が低下してしまいます。糖尿病の発症にも繋がるので、食べ過ぎも注意です。
ほかに、ビタミン類(ビタミンA・B・C・D・E)や亜鉛は、免疫力アップに欠かせない栄養素。免疫反応が最初に起こる粘膜の状態を整え、免疫細胞の活性化や抗酸化作用があると言われています。
また、腸内の善玉菌(腸内に生息する体にいい働きをする細菌)を増やすことも、免疫力を高めるのに有用です。善玉菌が多く含まれている乳酸菌やビフィズス菌、食物繊維やオリゴ糖を積極的にとりましょう。
食事の内容だけでなく、よくかんで唾液を出すことも大切です。唾液には免疫物質や抗菌物質が含まれています。最近は柔らかい食べ物が多いですが、1口につき30回を目安に、しっかりとかんで唾液を出しましょう。
適度に運動する
「運動は体にいいと分かっていても、なかなか続けられない」という人は多いのではないでしょうか? でも、無理に頑張らなくても大丈夫。体に負荷をかける激しい運動は、逆に免疫力を下げることが分かっています。
免疫力を高めるには、軽く汗ばむくらいの適度な運動が効果的。ウォーキングやストレッチ、ヨガ、ラジオ体操などの運動を、1日30分を目安に行いましょう。血行が良くなり、体温と新陳代謝が高まります。
さらに、腹式深呼吸を意識するだけでも、自律神経のバランスが整い、免疫力を高めるのに有効と言われています。特に最近は、YouTubeなどでもエクササイズの動画が多数アップされています。自宅でのエクササイズを習慣にしたことで、体力アップとダイエットに成功した人もいますよ。
質の高い睡眠をとる
睡眠は、免疫力を高めるために欠かせません。睡眠時間が7時間以上の人と、5時間未満の人を比較すると、風邪にかかる確率が4.5倍違うというデータ(※)もあります。
また、寝ている間には疲労を回復したり、細胞を修復したりする成長ホルモンが分泌され、質の高い睡眠をとることで、免疫を活性化させる物質も分泌されます。深いノンレム睡眠(脳と体が休息している状態の睡眠)が訪れる入眠後90分は免疫力の増強に密接に関係していて、「黄金の90分」と呼ばれています。
ぐっすりと眠るためのコツは、寝る3時間前までに食事を済ませること。就寝前はカフェインの摂取やスマートフォンの使用を避け、リラックスして過ごしましょう。
生活リズムを整える
規則正しい生活は、自律神経を整え、免疫力を高めると言われます。また、不規則な食事や偏食によって、腸内環境が乱れることも。生活のリズムが崩れてしまった場合は、毎日の起床時間をそろえて、午前中に太陽の光を浴びることから実践してみましょう。食事の時間を規則正しくすることも大切です。
湯船にゆっくりつかる
免疫力を高めるためには、体を温めることを意識してください。「冷えは万病のもと」と言われるように、体温が低いと血流が悪くなり、免疫力が下がってしまいます。
まずは夏場でも湯船にゆっくりとつかって、体を芯から温めることを意識してください。入浴は血液の循環を良くすることに加え、免疫細胞の60~70%が集まっている腸を温め、免疫力を高めてくれます。
入浴する時は、約40℃のお湯に15分程度つかること。肩までつかるようにすると、深部体温(体の中心部の体温)までしっかりと上がります。体温が上がった直後は寝付きにくくなるため、就寝1、2時間前に入浴できるといいですね。さらに、お風呂に入る前後に、水か白湯を飲むことで、発汗による脱水症状を防げますよ。
よく笑う
「笑う門には福来たる」という言葉があるように、笑いには免疫力を高める効果があります。笑うことで分泌されるホルモンにより、NK細胞(ナチュラルキラー細胞、病気細胞や感染細胞を殺す働きをする細胞)が活性化して、免疫力が高まると言われています。
また、笑うと唾液中の免疫物質IgA(外敵の侵入を防ぐ粘膜上の免疫物質)の濃度が上がり、免疫力がアップするという研究結果もあります。
反対に、悲しみやストレスによって分泌されるホルモンは、NK細胞の働きを悪くし、免疫力を下げてしまいます。心と体をリラックスさせ、毎日笑って暮らすことがストレス解消、免疫力アップの秘訣となるでしょう。
日光浴をする
さらに、日光浴も毎日の習慣にしましょう。朝起きて、部屋の窓側に立って、太陽の光を浴びるだけでもいいです。例えば、朝食をとるテーブルを日当たりのいい場所に置くのもおすすめです。
日光を浴びると、自律神経がリセットされ、体内でビタミンDが生成されます。これらは免疫力の維持には欠かせないもので、日照時間の短い国ではビタミンDのサプリメント摂取が推奨されているほどです。日照時間が長いエリアから短いエリアに引っ越すと、メンタル面に不調をきたすこともあるそうですよ。
日光浴は1日30分程度が理想ですが、難しい場合は数分でも構いません。たとえ曇りの日でも、部屋の照明より、太陽の光の方が明るいと言われています。ぜひ日光浴を毎日の習慣にしてみてくださいね。
最後に
私たちの健康の維持に、免疫力は欠かせないものです。ここで紹介したポイントは、決して難しいものではありません。
私自身、数年前に当直勤務を離れて以来、風邪をひきにくくなり、睡眠の重要性を改めて実感しました。ランニングが趣味ですが、マラソン大会後は免疫力が下がるため、体調管理には最新の注意を払っています。
みなさんも日々の生活の中で、免疫力を高めるための生活習慣を意識してみてくださいね。
文:林日向子
※参考:「保健指導リソースガイド」(日本医療・健康情報研究所)