子どもは予想もしない行動をするため、トラブルがつきもの。今回は、転落・転倒によって頭を打ってしまったり、海や川でおぼれてしまったり、または誤飲や火傷などのトラブルに直面した際の対処法について、小児科医が解説します。
JA愛知厚生連 豊田厚生病院 副院長兼小児科代表部長 梶田光春医師
1984年、名古屋大学医学部卒業。同年、医師免許取得。2000年10月よりJA愛知厚生連 豊田厚生病院に勤務し、2015年4月、副院長に就任。専門は先天代謝異常症、小児神経疾患。名古屋大学医学部臨床准教授、および愛知医科大学客員教授も務める。医学博士。
子どもが頭を打った時
転倒・転落などにより頭を打ってしまった時は、腫れている部分があれば冷却しましょう。また、当日は外出や入浴を控えて、安静に過ごすようにしてください。元気に過ごしていても、2、3日は慎重に様子を見て、顔色や歩き方などに異変があれば医療機関を受診するようにしてください。
1つでも当てはまったらすぐに医療機関・医師に相談を!
- 何回も嘔吐して元気がない
- 打った部分にへこみがある
- 大きなたんこぶができた
- いつもと手足の動きが異なる
1つでも当てはまったらすぐに救急車(119番)!
- 意識に異常がある
- 高い場所から落ちた
- けいれんがある
子どもが誤飲した時
誤飲は予防が肝心です。たばこ、洗剤、玩具、硬貨、医薬品などは、子どもの手の届かない高さの場所や、鍵がかかる場所に置くようにしましょう。仰向けの姿勢や、歩いたり遊んだりしながら食べ物を食べないようにすることも予防になります。
誤飲をしてしまい、自宅で手当てする際は、何を飲み込んだかによって対処法が異なります。例えば医薬品、化粧品、洗剤、漂白剤、乾燥剤、殺虫剤、灯油などは中毒を引き起こす危険があります。吐かせたり、水や牛乳を飲ませたりせず、すぐに医療機関を受診しましょう。
そのほか、吐かせていいもの、ダメなものがあります。誤飲した時の電話相談窓口である「中毒110番(※)」などの電話サービスを利用して、適切な対応を確認しましょう。
※中毒110番:072-727-2499(大阪中毒110番) 、029-852-9999(つくば中毒110番)、072-726-9922(たばこ誤飲事故専用電話)
1つでも当てはまったらすぐに医療機関・医師に相談を!
- 子ども用の医薬品を1度にたくさん飲み込んだ
- 大人用の医薬品や除草剤・殺虫剤などの薬品類を飲み込んだ
- アルカリ電池やリチウム電池など、ボタン型電池を飲み込んだ
- 画びょうなどとがったものを飲み込んだ
- たばこ(2cm以上)や灰皿の水を飲み込んだ
1つでも当てはまったらすぐに救急車(119番)!
- 激しく咳き込んだりゼーゼーしたり、普段と呼吸が異なる
- 苦しそうにしている
- けいれんや嘔吐などがある
- 意識に異常がある
- だ液や嘔吐物に血が混じっている
子どもが火傷した時
火傷は、熱いものや液体に触れることで生じます。こたつなど、体の同じ場所に長時間熱が当たると、低温火傷になる場合もあります。見た目は軽傷のようでも、皮膚の深部の組織まで傷付き、重度になっている場合もありますので注意が必要です。また塩酸などの化学物質が皮膚に付いた時でも火傷になることもあります。
火傷をしてしまったら、洗面器などに水をためながら、流水で20~30分冷やしてください。この際、水流が直接患部に当たって刺激しないように気を付けましょう。頭や顔など水を直接かけられない場所は、濡れタオルを交換して冷やすこと。くれぐれも市販の冷却シートは使わないでください。
1つでも当てはまったらすぐに医療機関・医師に相談を!
- 患部が500円玉より大きい
- 患部が手・足・顔である
- 皮膚が白っぽく変色している
- 水ぶくれができた
1つでも当てはまったらすぐに救急車(119番)!
- 火傷の範囲が身体の10%以上(腕1本分程度)である
- 原因が薬品・化学物質である
- 患部が顔で、熱気(煙や蒸気)を吸い込んだ
子どもがおぼれた時
水のある所でうつ伏せに転んでしまうと、わずかな水でも口と鼻がふさがれて、おぼれることがあります。その際に水をたくさん飲んでしまうことで、極端に血液が薄められ、命に関わる状態になるケースも。特にお風呂や水遊びの時などは、子どもから目を離さないように注意することが肝心です。
おぼれた時には、濡れた衣類を脱がせて身体をふき、毛布などでくるんで保温して安静にさせましょう。意識がない場合には、周りの人に救急車を呼んでもらい、心肺蘇生法を行ってください。
1つでも当てはまったらすぐに医療機関・医師に相談を!
- 汚い水でおぼれた
- おぼれたあと、熱や咳が出る
1つでも当てはまったらすぐに救急車(119番)!
- 意識がない
- 身体が動かない
- 呼吸がない
最後に
子どものケガやトラブルは、状況によって、また原因によっても対応が異なります。対処法を間違えてしまうと、より重篤な状態を招いてしまうことも。
そうならないためにも、家庭でのケアに迷った時は、医療機関や行政が設置している相談窓口へ問い合わせるなどして、適切な対応をとるようにしてください。
イラスト:竹内舞/文:花野静恵
この記事は「頼れる病院・クリニック2022-2023」(ゲイン刊)に掲載された記事をもとにしています。掲載内容は取材時のものです。