今の常識が非常識?!医学の知識、今と昔で違うこと【医師解説】

今の常識が非常識?!医学の知識、今と昔で違うこと【医師解説】

医学の世界では、あらゆる分野で日々研究が進んでいます。私たちが子供の頃、当然のように家庭で行われていた応急処置。昔は常識とされていたことが、今ではあまりおすすめされていないこともあります。ここでは、今と昔で異なっている医学知識を解説していきます。

ケガをした際の消毒はNG

つい先日、10年ぶりに恩師と食事をしました。

つい先日、10年ぶりに恩師と食事をしました。久しぶりの再会ということもあってお酒がかなり進み、酔っぱらった状態で家に帰ったところ、玄関までの階段を上っている途中に転んでしまったのです。酔っていながらも何とか手で防御していたようですが、手の甲側の皮がむけてしまうようなケガをしました。

昔だったら、①消毒薬で消毒をする ②ばんそうこうを貼る ③血が止まったら乾かしてかさぶたになるのを待つ、というのが一般的な家庭で出来る治療法です。そのため、子供の頃、わが家の救急箱にはいつも消毒薬が入っていましたし、消毒薬のテレビCMも多く流れていました。学校でケガをして保健室に行っても消毒薬で消毒をされました。

しかし、今の医療では傷口は消毒しないのが常識です。私の息子が小学校でケガをし、妻が近所のクリニックに連れて行ったところ、「あぁ、学校で消毒されちゃったか……」と医師が思わずこぼしていたと言います。

消毒しない方がよいとされる理由は、消毒することで、傷口に残った正常な細胞まで壊してしまい、傷の治りが悪くなるからです。水道水で構わないので、傷口をよく洗い、清潔なタオルなどで拭いた後、キズパワーパッド®などのハイドロコロイドばんそうこうで傷口を覆うようにしましょう。乾かさず、かさぶたをつくらずに治す方が、傷口がきれいに治るとされています。

私自身、最近手をけがしてしまったのですが、傷口を洗い流して、キズパワーパッド®を貼っておいたら、1週間ほどできれいに治りました。

子供用の解熱剤は何を使う?

子供の頃、わが家の救急箱には、黄色の風呂桶で有名な解熱鎮痛薬が入っていました。私が子供だった40年前は小児救急体制も今ほど整備されておらず、何かあればまずは家庭常備薬で対応するのが一般的でした。

そして、夜に熱が出ると、解熱鎮痛薬の箱に記載された小児薬用量を母が飲ませてくれました。少なくとも10年前までは、その解熱鎮痛薬には小児薬用量が記載されていたのですが、今では「15歳未満は服用しないこと」と記載されています。

なぜ、記載が変わったのでしょうか?

実は、一部の解熱鎮痛薬や総合感冒薬に含まれている「サリチル酸」という成分が理由です。サリチル酸を小児に投与すると、脳症を起こし、中には重篤な後遺症を残したり、亡くなってしまったりすることが分かってきました。サリチル酸の仲間には、「アスピリン」や「サリチルアミド」もあります。

現在、風邪などで熱がある場合、小児科では「アセトアミノフェン」以外の解熱鎮痛薬を基本的には投与しません。ただし、小児科以外では、今でも「アセトアミノフェン」以外の解熱鎮痛薬を投与することがあります。

また、医師が処方する総合感冒薬にも「サリチル酸(サリチルアミド)」が含まれるものがあり、「幼児用」などとして、小児科以外では今も処方することがあります。

「幼児用」と表示された総合感冒薬の添付文書に、「2歳以上の水痘、インフルエンザの患者には原則投与しないこと」と記載されてはいますが、水痘、インフルエンザ以外でも海外を中心に脳症の報告があります。

もしも、夜間休日救急診療所や小児科専門医以外のクリニック等で、総合感冒薬や「アセトアミノフェン」(商品名は「カロナール®」「コカール®」など)以外の解熱鎮痛薬が処方された場合には、成分を必ず確認することをおすすめします。

嘔吐したらお茶はダメ

子供の体調が悪くなるのは大抵、夜遅くです。それは今も昔も変わりなく、私が子供の頃も胃腸炎で嘔吐をするのも大抵は夜中でした。

夜中に吐き気で目が覚めて、隣の部屋で寝ている母に向かって「お母さん! 気持ち悪い、吐きそう!」と叫ぶと、母は洗面器と大人用の大きな湯呑にお茶を入れてもってきてくれました。そして、吐きたくなったら、洗面器に吐いて、吐いたらお茶を飲むように言われました。これで特に大事に至ることなく大人になれたのだから、それでも良かったのかもしれません。

ですが、私が生まれた1970年代に経口補水療法が開発され、2000年代以降に発表された急性胃腸炎のガイドラインには、経口補水液を飲ませるように記載されています。

一方、私が生まれた1970年代に経口補水療法が進み、2000年代以降に発表された急性胃腸炎のガイドラインには、経口補水液を飲ませるように記載されています。

ただ、2020年代の現在においても、多くの育児書や小児救急関連のホームページには嘔吐や下痢の時に飲ませるものとして、経口補水液とともに「白湯、薄めたお茶」と記載されていることが多い現状です。しかし、これは正しくありません。

嘔吐や下痢では、水分とともにナトリウムなどの塩分(電解質)が大量に失われます。したがって、水分だけではなく、塩分(電解質)を補充しなければならないのですが、白湯やお茶には塩分(電解質)が含まれていません。

ナトリウムには、「浸透圧」と言って、水を引っ張ってくる力があります。例えば、野菜に塩を振ると、野菜の中の水が染み出てくるのは、この浸透圧のためです。ですから、体からナトリウムが失われると、水を体にとどめておくことができなくなり、余計に脱水が進んでしまいます。

また、胃腸炎で傷ついた腸は、水分がうまく吸収できなくなっています。しかし、経口補水液の糖分と塩分のバランスは、傷ついた腸でも効率よく水分と塩分を吸収できるように設計されています。そのため、白湯やお茶ではなく、経口補水液がすすめられているのです。

同様の理由で、熱中症予防や治療においても、水やお茶はおすすめできません。経口補水液などの塩分の含まれたものを飲まないと、脱水が進行して熱中症を発症させたり、熱中症を重症化させたりすることがあります。

けいれんしたら舌を噛むはウソ

私がまだ小学生だった頃、兄妹3人でアニメを見ていると、末の妹が上の妹に向かって、「お姉ちゃん、何しているの?」と呼びかけました。すぐに上の妹の方を見ると、口から泡を吹いてガタガタとけいれんをしていたのです。

すぐに母のところへ行き異変を伝えると、母はすぐに上の妹のもとに行き、私に向かって「割りばし持ってきて!」と叫びました。台所から割りばしを持って来て母へ渡すと、母は妹の口の中に割りばしを突っ込みました。後で理由を聞くと、「けいれんをすると舌を噛み切ることがあるから」ということでした。

母から救急車を呼ぶように言われ、119番へ電話して、その後は母に指示されるままに救急隊を迎えに外に出ました。今考えると、ここまでてきぱきと小学生の息子に指示が出せる母に対しては尊敬以外の何ものもありません。しかし実は、「けいれんしたら舌を噛み切るから」はウソです。

小児科医になって25年以上になりますが、けいれんして舌を噛み切った子を見たことがありません。むしろ、けいれんしたときに口の中に何かを入れるのは、舌を奥に押し込んで窒息の原因になるので、絶対にやってはいけないことの1つです。

けいれんが起こったら、吐いたものが喉に詰まらないよう横向きに寝かせ、様子を観察します。けいれんの様子が診断につながることもあるので、今であればスマホなどで撮影してもいいです。5分以上持続するようであれば、救急車を呼びましょう。

最後に

子供が体調に異変をきたすと、パニックになってしまう親御さんもいるかもしれません。昔の知識にとらわれ過ぎず、正しい知識を身につけて、落ち着いて適切な処置を行うようにしてください。

文:十河剛

筆者:十河剛 (そごうつよし) 先生

筆者:十河剛 (そごうつよし)
済生会横浜市東部病院小児肝臟消化器科部長。小児科専門医・指導医、肝臓専門医・指導医、消化器内視鏡専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
診療を続けていく中で、“コーチング”と“神経言語プログラミング(NLP)”と出会い、2020年3月米国 NLP&コーチング研究所認定NLP上級プロフェッショナルコーチの資格を取得、2022年全米NLP協会公認NLPトレーナーとなる。また、幼少時より武道の修行を続けており、現在は躰道七段教士、合気道二段、剣道二段であり、子供達や学生に指導を行っている。
「子供の一番星を輝かせる父親実践塾」Voicyにて毎朝6時から放送中。
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