この記事は「中日こどもウイークリー」で2025年11月22日に掲載された記事を転載しています。
「おおおおはよう」。このように、話すときに言葉が滑らかに出てこない障害を「吃音(きつおん)」といいます。吃音がある人は100人に1人と、決して少なくありません。人前で話すことに不安を抱える人も多いです。
発話の障害
吃音とは、「言葉の繰り返し」「引き伸ばし」「言葉がなかなか出てこない」を主な症状とする発話の障害。なんとか声を出そうとすることで体や顔面が動く「随伴症状」もあります。
「さ、さ、さ、昨年度の高校入試で配慮をしてほしいと思い、障害者手帳を取得しました」
2025年10月下旬、吃音がある人たちのグループ「言友会」の全国大会が、徳島市内で開かれました。高知県に住む高校1年生の重松由依さん(16)が登壇し、約150人の参加者の前で、自身の体験を語りました。
重松由依さん
重松さんは3歳ごろから吃音を自覚。自分で考えて話すのは平気な一方、何かを見て読み上げることが苦手です。高校受験での面接を不安に思い、内科にある吃音相談外来を受診しました。
吃音の原因ははっきりとは分かっていませんが、本人の生まれ持った体質が大きいとされます。緊張しやすいなどの性格や、家庭環境によるものではありません。吃音をからかわれるなどの嫌な経験をすると、人と関わるのを避けるようになることもあります。
心の中につらさ抱える
この日は吃音がある子どもが集まる会も開かれ、重松さんのほか、数人の中高生が自身の経験を話しました。
「職員室に入るとき、先生を呼ぶあいさつが出てこず、『おまえしゃべれないのか』と言われた」「吃音であることを配慮されてか、先生に意図的に指名されないのがいやだ」「どもりを隠そうとすると、足に力が入ってしまう」
周囲の人の言葉や行動に傷つき、吃音を隠すために疲れてしまうこともあるそうです。一方で、「尊敬している言語聴覚士のように、吃音の子の居場所を自分もつくりたい」と、将来に向けた前向きな意見も出ていました。
重松さんは無事に高校に入学。現在も、授業での音読などは苦手ですが、1人では無理でも、誰かと一緒なら読むことができることも。「(もし吃音がある友達がいたら)その子の希望を聞いた上で、一緒に取り組むなどの手助けをしてほしい」と話しました。
努力でなおらない
国立障害者リハビリテーションセンターが2024年発表した調査結果によると、日本で3歳までの吃音発症率は8.9%です。従来の見方よりも吃音の症状を示す幼児が多く、吃音に対応できる専門家や施設を増やす必要性が指摘されています。
愛媛県鬼北町の旭川荘南愛媛病院院長で、自身が吃音当事者でもある岡部健一医師は吃音相談外来を開き、10年間で全国各地の200人以上の相談に応じてきました。
旭川荘南愛媛病院院長・岡部健一医師
あいさつや自分の名前が言えず、症状に波があるなど、周囲から理解されにくいことから、「吃音がある人は心にトゲが刺さっている」と語ります。「吃音は努力すればなおるものではありません。吃音について理解し、本人の意思を大切に見守って」と呼びかけています。





