1年を締めくくるこの時期、子どもの「がんばったこと」にも目を向けてみませんか。今回のテーマは「年末のふり返り学習術」です。テストの点数や成績表だけでは見えない“がんばり”をどうやって見つけるのか、学習塾で25年以上の指導経験を持つ加藤教子先生に聞きました。
記事の最後には、前回の記事でお寄せいただいたコメントに対するアンサーも。ぜひ、最後までお読みください!

学習塾経営者・講師 加藤教子(かとう・のりこ)
愛知県出身。名古屋市千種区で「かとうのりこ進学教室」を主宰。25年以上にわたり小中高生の個別指導に携わり、中学受験から大学受験まで、医学部や東大・京大・早慶など難関大学への合格実績多数。総合格者数700名以上。一人ひとりの個性や家庭環境に寄り添い、偏差値20~30アップも実現する指導法で、多くの保護者から信頼を得ている。
「過程」に目を向ける大切さ
年末は1年をふり返る絶好の機会です。学校ではテストの点数や成績表など、数字で評価されることが多いですが、実際はそれだけでは見えない子どもの成長や努力があります。
「結果」よりも、がんばった「過程」に目を向けるという視点が、保護者にも子どもたちにも新しい気づきをもたらします。とくに年末は、新年に向けた目標を立てやすい良いタイミングです。
数字で評価される経験が多い中で、自分のがんばりを認める時間を持つことは、普段なかなかできません。しかし、その時間をつくることで、自己肯定感が育ち、親子での対話も深まります。さらに、新年の目標を考えるきっかけにもなるはずです。
まずは、1つでも良いので今年がんばったことを見つけてみましょう。親子で一緒にふり返りながら、年を越すことが大切だと思います。
点数では見えないがんばり

テストの点数や成績表だけでは、子どもの努力や成長は十分に評価できません。点数はどうしても目につきやすいものですが、たとえば、同じ60点でも「良い60点」と「悪い60点」があります。答案を丁寧に見ていくと、これまで努力してきた分野は、たとえ満点ではなくても確実に力がついていることが多く、問題の解き方をみると成長がよくわかります。
また、生活の中でのがんばりを認めることもとても大切です。「休まず毎週塾に通えた」「宿題をきちんと提出できた」など、結果に結びつかなかった部分があっても、その過程での“がんばり”を認めることは、子どもが自信を持って前に進む力になります。
成長に気づくきっかけづくり
子どもは、自分の成長を言葉で表すことが苦手な傾向があります。
私の教室に、「50文字以内で答えなさい」といったような国語の記述問題を、いつも空欄のままにしてしまう生徒がいました。そこで、「まずは半分だけ書いてみようか」と声をかけ、さらに難しければ「10文字でも良いから書いてみよう」と小さな一歩を促しました。そのプロセスを繰り返すうちに、つまずくポイントがだんだん見えてきて、最終的には50文字すべてを書けるようになったのです。
子どもは自分の成長に気づかないことが多いものです。実際、その生徒に過去の答案を見せると「こんなに書けていなかったっけ?」と驚きます。小学生でも中学生でも、高校生でも、自分が成長していることにはなかなか気がつかないようです。
塾でのふり返りの実践

私の教室では、さまざまなタイミングで「ふり返りシート」というものを活用しています。今年1番「良かったこと」「大変だったこと」、今後「改善したいこと」などを書きだしてもらうシートです。とくに中学受験生は、受験期に授業が終わるたびに書いてもらっています。
書く内容は1つでも構いません。誰かに見せるものでもありません。このシートは、自分の成長に気づくためのもの。また、書き出すことで改善点も明確になり、次のがんばりにつながるきっかけになると考えています。
「問題を解く時間が早くなった」や「計算問題のミスが減った」など、生徒のあげる“がんばり”はさまざま。反省ではなく、自分ができるようになったことに目を向ける時間にするのが重要です。
生徒たちも、この時間を通して「できるようになったかも」と自分の成長に気づき、表情が変わることもあります。また、指導側も大変だったことを共有でき、苦手克服に向けて一緒に戦略を立てていく前向きな関係が生まれます。
「できなかったこと」ではなく、「できたこと」「成長したこと」に目を向ける。そのことが、子どもにとって大きなメリットになるのです。
「がんばり発見シート」の作り方

塾では、学習内容をふり返り次につなげる「ふり返りシート」を使っていますが、家庭では、子どものがんばりや成長を“見つける”ことを目的にした「がんばり発見シート」として取り組むのがおすすめです。まずは、今年をふり返る時間をつくってみましょう。
✅今年がんばったこと
✅つらかったけれど、やめなかったこと
✅直していきたいこと
これらの質問は、勉強面でも生活面でもOK。子どもが自分で書くのが難しければ、会話の中で少しずつ引き出していきましょう。親も一緒に自分の「がんばったこと」を共有すると、より和やかな雰囲気でふり返りができます。
何より大切なのは、親子で一緒に取り組むこと。親がそばで見守り、やさしく声かけすることで、子どもの考え方や積極性にも少しずつ変化が生まれていきます。
今日からスタート! がんばり発見
「がんばったこと」に目を向ける
小さな成長でも言葉にすることで、子どもの大きな自信につながります
小さな成長や努力も見逃さず、具体的な言葉で認めてあげることで、子どもの自己肯定感を育てます。年末のふり返りを通して、「できたことを見つけて認める」という経験を積むことで、子どもは自分の成長を実感し、新しい年を前向きな気持ちで迎えられるようになります。
親子で一緒に“がんばり”を発見する時間を、ぜひ大切にしてくださいね。
「親子でひらく学びの未来」、第1回の記事にたくさんのコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
いただいた疑問・質問に、加藤先生がお答えします!
見守っても一向に勉強する様子がない場合、どこまで待てば良いですか?
A.あせらずに、「声かけによる働きかけ」を粘り強く試していくことが大切です。
「どこまで待てば良いんだろう?」というのは、とても切実な悩みですよね。確かに難しい問題です。
まず大切なのは、「待つ」というのは“何もしないで放っておくのではない”ということです。 ただそばで見守るだけでは、お子さん自身もどう動いて良いのか分からないままになってしまうことがあります。だからこそ、記事でもお伝えしたような「やさしい声かけ」で、気持ちに寄り添っていくことが大切です。
たとえば、お子さんが「嫌だ! 1分しかやらない!」と言ってしまう日があったとします。親としては戸惑ったり、「そんな態度で……」と思ってしまったり。ですが、「それだけ今はしんどい気持ちなんだな」と受け止めてあげてください。
「じゃあ1分だけやってみようか。この1問だけならできるかもね」
そう言って、難しくない1問を一緒に始めてみると、意外とすぐ解けて「できた!」という小さな達成感につながることがあります。そうしたら「チャンス!」です。その瞬間を見逃さず「できたね! 今の感じなら、次の一問もできる気がするよ」などと、次につなげていくのです。その後「今日はここまでにしようか」とゴールを明示して安心させるとさらに良いでしょう。
とくに低学年のうちは、その日の気分や体調に大きく左右されます。学校から帰ってきて疲れている日にするのではなく、「できる時にやる」「今日はこれならできるかも」からスタートしてみましょう。まずは「ちょっとできた」を積み重ねることが、やる気への第一歩になるはずです。
今後もコメントにお答えしていきますので、ぜひ子育て・勉強に関する疑問を「一言ボックス」にお寄せください!



