「塾の舞台裏」では、個別指導塾で多くの小中高生を指導している講師にインタビューをし、実際にあった事例を紹介しています。
今回は、学習における子どもの「探究心」について、感じたことを聞きました。
塾講師 金川俊也(かながわ・としや)
大学卒業後、会社員や事業の立ち上げなどを経験したのち独立。愛知県大府市に「個別指導塾アドバンス」を設立し、勉強のやり方と合わせて、未来を生きるためのヒントを子どもたちに伝えている。自身も小2と中1の2児の父として子育てに奮闘中。
「なぜ?」のデメリット
塾で指導していると、子どもからさまざまな質問を受けることがあります。例えば、数学ではたくさんの公式が使われますが、新しい公式が出てくる度に「なぜ?」と質問する生徒がいます。
その度に、答えられるものは説明をするのですが、実はこれを繰り返している子の成績はなかなか伸びません。今の学習カリキュラムでは覚えなければいけないことが多いので、その都度「なぜ?」が出てきてしまうと、学習が進まないからです。
先日も、中学生の「なぜ?」の質問に対して解説をしていたら、横で聞いていた有名国立大学に通う大学生講師が「そういうことだったんですね! 初めて知りました」と言っていました。少なくとも、すべての公式を「理解」しなくても、有名国立大学に合格する学力は身に付けられるのかもしれません。
探究学習が大切と言われるけど……
近年は、学校の授業の中でも「探究学習」がとり入れられ、子どもたちが主体的に学びを深めていくことが求められるようになってきました。
本来であれば、「なぜ?」と疑問を持って、探究していく姿勢はとても大切です。しかし、今の学習カリキュラムにおいて、「なぜ?」にとらわれ過ぎてしまうと、時間が全く足りません。
生徒には、「今は丸暗記したとしても、学んできたことが後からつながって、きっと分かるようになるよ」と伝えることがあります。「なぜ?」と気にし過ぎることなく、素直に学んでいった方が、成績を伸ばすためには有利だからです。
私は学習塾の講師なので、このような伝え方をしていますが、探究学習の時間であれば、おそらく違う回答になるでしょう。この問題に正解・不正解はありません。ただ、学びの中で、素直さと探究心のバランスをとっていくことが大切だと感じています。
※紹介する事例は、個人が特定されないよう一部改変して紹介しています