この記事は「中日こどもウイークリー」で2025年8月30日に掲載された記事を転載しています。
厳しい暑さが続いたこの夏、大人も子どもも、涼しい家の中にこもってゲームやスマートフォンを長時間利用して、その習慣が続いている人がいるかもしれません。デジタル機器を使わずに過ごす「デジタルデトックス」。岐阜県可児市で開かれた体験イベントを取材しました。果たして、その効果は?
スマホと離れ 五感を活用
セミが鳴く声を聞きながら、ゆっくりと森林を歩きます。可児市大森のバロー人材開発センターで開かれたデジタルデトックスの体験会には、小学生とその家族12組34人が参加。誰もスマホを持っていません。
今渡北小学校5年生の岩井結飛さん(10)は「とても暑かったけど森で歩くのは楽しい。これからは時々外に出てみようかな」と話します。
イベントは可児市が企画。事前にデジタル機器を預けて距離を置くことで、生活リズムを整えます。この日は、森林でクイズラリーを楽しんでから、みんなで郷土料理の「みたけ華ずし」に挑戦。作り方が分からなくても、スマホで調べることはできません。親子で相談したり、講師に尋ねたりして、スマホがなくても充実した時間を過ごしました。
記憶力低下の恐れも
「スマホやゲーム機を使うことは、成長途中の子どもの脳を変化させてしまう。交流サイト(SNS)の悪影響も大きい」。「スマホ依存防止学会」の代表で医師の磯村毅さん(61)は、注意を呼び掛けます。
磯村毅さん
磯村さんによるとデジタル機器やSNSによる脳への影響は主に2つ。1つ目は、脳内の海馬や前頭前野への影響です。デジタル機器を使っている時はそれらの部分に血液が十分に流れず、働きが弱まるそう。海馬は物事を記憶する場所なので、記憶力が下がることが心配されます。前頭前野は思いやりや我慢強さをつかさどっているので、怒りやすくなるなどの懸念があります。
2つ目は依存性が高いことです。操作するとすぐに反応があるスマホやゲーム、常に新しい情報を見せてくれるSNSを使っていると、脳の中にドーパミンという物質が出ます。使い続けると次第にスマホやSNS以外の刺激ではドーパミンが出ないようになり、他の物に興味が持てなくなるように。デジタル機器に依存するようになってしまいます。
本当に必要な機能を見極めて
2024年度にこども家庭庁が実施した調査によると、10歳以上の小学生が1日にインターネットを利用する時間の平均は3時間44分、中学生は5時間2分で、使う目的は「趣味・娯楽」が最も長い時間を占めていました。
スマホやゲームに夢中になってしまった時はどうしたらいいのでしょうか。磯村さんは今回のデジタルデトックスのイベントのように、2、3日~1週間ほど親にスマホなどを預かってもらって「デジタル断ち」をすることをすすめます。そうすると自然や読書など、自分が好きなものを再発見できるそう。磯村さんは本当に必要な機能を見極めながら、デジタル機器を使用することをすすめます。