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この記事は「中日こどもウイークリー」で2025年5月24日に掲載された記事を転載しています。
日本でパンダが見られなくなるかも……。和歌山県にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」のパンダ4頭が2025年6月末で、中国に返されることが決まりました。日本のパンダは東京にいる2頭だけになりますが、そちらも2026年2月に中国に返する期限を迎えます。新しいパンダはもう来ないのでしょうか。
観光の主役
パンダの正式名称はジャイアントパンダ。世界中で大人気ですが、野生では中国の限られた山岳地帯にしか生息していません。野生のパンダは絶滅の危機にひんしており、動物の国際取引を制限する「ワシントン条約」によって保護されています。
中国への返還が発表された直後の大型連休、アドベンチャーワールドのパンダが見られるエリアでは。観光客の長い行列ができていました。パンダの人気は高く、地域の観光資源となっています。
アドベンチャーワールドがある白浜町の観光協会が観光客に実施した調査では、白浜町を訪れる目的として、パンダが温泉に次いで2番目に多く挙げられました。
外交利用の歴史
中国の歴史に詳しい愛知大の大澤肇准教授によると、パンダは中国のイメージアップに利用されてきました。
パンダ外交の始まりは1941年。当時日本と戦争中だった中国は、アメリカから援助を引き出すためにパンダを贈ったとされています。その後も中国と同じ社会主義国などに贈って友好を示しました。
日本にパンダが初めて来たのは、1972年です。戦争で仲が悪くなった中国との仲直りのシンボルとして、東京の上野動物園に2頭が贈られました。
それ以降、日本は中国から定期的にパンダを借りるなどし、日本からパンダがいなくなったことはありません。
資金面の問題
今後、パンダが日本に来ることはあるのでしょうか。大澤准教授は日本と中国の関係に加え、資金の問題も挙げています。パンダをレンタルすると、繁殖活動の研究などを援助するため、中国に年間約1億円を支払う必要があるからです。
かつては贈与という形で他国に贈っていましたが、1984年にワシントン条約によって、パンダの国際取引が禁止されました。パンダを外交に利用したい中国政府は、研究の名目で貸し出すようになりました。
大澤准教授は「パンダのレンタルには、動物保護やビジネス、国際関係などさまざまな要素が絡んでいます。大人気のパンダが一時的にいなくなることはあっても、長い目で見れば、また日本で見られる日は来ると思います」と話します。