日本のオオサンショウウオを守ろうと、政府は2024年7月、中国から運ばれた外来種と、外来種から生まれた交雑種を「特定外来生物」に指定し、駆除の対象にしました。ただ、そもそもの原因は人間の側にあることを忘れてはいけません。
増える「交雑」
1970年代に中国から輸入された外来種が、日本の固有種であるオオサンショウウオと繁殖する「交雑」が大きな問題になっています。外来種と固有種から生まれた交雑種が、京都や愛知など9府県に広がり、日本のオオサンショウウオ同士の繁殖を妨げているからです。
オオサンショウウオは、水中と陸上の両方に暮らす両生類の仲間です。愛知、岐阜県を境にした西日本の川などにいます。日本、中国、アメリカにそれぞれ固有の種がいて、中国も自国の種を大切にしています。
見た目はほぼ一緒、交雑種の弥助
三重県名張市には、市役所2階の秘書室の水槽に「弥助(やすけ)」と名付けられた交雑種がいます。見た目は日本のオオサンショウウオと変わりませんが、DNA鑑定によって交雑種であることが分かっています。水槽の前には生態や交雑の問題についてまとめたパネルが並びます。
鑑定技術が進歩した10年ほど前から、名張市では熱心な保護活動が行われてきました。川で捕まえた個体をDNA鑑定し、日本のオオサンショウウオなら元の川に放し、交雑種と分かった場合は廃校になった小学校のプールに隔離して餌を与え、それぞれを生かしてきたのです。プールには今、約150匹の交雑種がいます。市外の大学で研究の役に立ったり、地元の小学生に交雑の問題を知らせたりしています。
交雑種の飼育は許可制
一方、環境省は、外来種と交雑種を環境に悪い影響を与える「特定外来生物」に指定。駆除せずに飼育を続けるには、管理の仕方を説明する資料を提出し、逃亡を防ぐ対策も万全にしなければなりません。
名張市の職員で、個人でも保護活動に関わる川内彬宏さん(38)は、プールを囲むフェンスを補強する改修策を練り、弥助らをこれからも飼育していく許可をもらうための申請書を環境省に提出しました。「交雑種が悪いわけではない」と話し、問題の始まりに人間の行動があったと注意を促しています。
三重県で日本の固有種を観察
日本の豊かな自然を表し、将来にわたって守っていくべき動植物などを天然記念物と言います。オオサンショウウオはそれよりも貴重な特別天然記念物。水質のきれいな川にいるとされ、山深い渓谷に大小23の滝が連なる三重県名張市の赤目四十八滝は代表的な生息地です。
渓谷の入り口にある「赤目滝水族館」では、日本のオオサンショウウオを水槽で展示飼育していて、特別天然記念物を間近に見ることができます。「実物を見てから渓谷を散策することで、オオサンショウウオがどんなところにいるのかをより深く知ることができます」と館長の朝田光祐さん(22)。観光客の中には岩の陰に潜むオオサンショウウオを見つけたと言って喜ぶ人もいるそうです。
8:30~17:00。水族館の観覧券とセットの入山料は大人1000円、小中学生500円。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年8月17日に掲載された記事を転載しています。