平和な世界の構築を!国際機関で子どもの頃の夢を具現化する

平和な世界の構築を!国際機関で子どもの頃の夢を具現化する

~「人と社会をつなぐお仕事」シリーズvol.10 独立行政法人国際協力機構 アフリカ部 計画・TICAD推進課 木村真樹子さん~

たくさんの職業がある中で、なぜその仕事に情熱を燃やすのでしょうか。「人と社会をつなぐお仕事」シリーズでは、インタビューを通して地域社会・コミュニティを支える人にスポットを当てていきます。働くことを通して、人と人、人と社会をつなぎ、むすびあわせることを目指します。

第10回目は、独立行政法人 国際協力機構(以下、JICA)で主に開発途上国への協力業務に携わる木村真樹子さん。
大学院卒業後、JICAガーナ事務所でのインターンなどを経て、社会人採用でJICAに入構。JICA中部「なごや地球ひろば」の運営管理業務や、アジア地域における給水・水資源管理の事業に携わった後、産休・育休に。復職後の現在は、アフリカ地域に対する協力方針の策定、事業の形成、予算管理に従事しています。「同じ志をもつ人と働けることが楽しい」と話す木村さんに、COE LOG編集部がお話を伺いました。

木村さんのこれまでのキャリア

木村さんの勤めるJICA(ジャイカ)は、(「独立行政法人国際協力機構」の略称、Japan International Cooperation Agency)日本の政府開発援助(ODA)の実施機関です。

木村さんの勤めるJICA(ジャイカ)は、(「独立行政法人国際協力機構」の略称、Japan International Cooperation Agency)日本の政府開発援助(ODA)の実施機関です。
JICAではさまざまな国際協力活動を通して、日本と開発途上国の課題解決に向けた協力を行っています。
各分野の知識や技術を持った専門家やボランティアを必要とする地域に派遣する「青年海外協力隊」も、主要な業務のひとつ。
他にも開発途上国のインフラ整備や医療の充実、農業、工業、教育、行政システムなど、あらゆる分野をJICAが支援しています。
木村さんは2014年に社会人採用でJICAに入構しました。中部国際センター市民参加協力課で「なごや地球ひろば」の運営管理業務 を担当した後、地球環境部 水資源グループへ異動。
インドネシア、ラオスの水資源管理、給水案件に従事した後、2018年からの産休・育休を取得。2020年11月に復職し、現在はアフリカ部 計画・TICAD推進課(※)にて、アフリカの各国でおこなう事業方針や協力に必要な予算を取りまとめる業務に携わっています。

木村さんは、なぜこの仕事を選び、どんな思いで仕事に取り組んでいるのでしょうか。

TICADとは、Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略であり、アフリカの開発をテーマとする国際会議です。1993年以降、日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催しています。

興味の先は「平和構築」

小学生や中学生の頃、テレビでユニセフ募金のCMや、実際の募金活動などを通じて、世界には自分と異なる境遇に置かれた人たちや貧しい国があるということを知りました。

小学生や中学生の頃、テレビでユニセフ募金のCMや、実際の募金活動などを通じて、世界には自分と異なる境遇に置かれた人たちや貧しい国があるということを知りました。そして、なぜそのようなことが起きているのだろうと漠然と疑問を持つようになりました。
高校の授業で、気になるニュースとそれについての感想を発表する「1分間スピーチ」の時間があったのですが、自分の選ぶニュースは世界情勢のことばかり。周りの子の発表するスピーチでも、私が興味を持ったのは世界情勢でした。
また、日本人初の国連難民高等弁務官として活躍していた緒方貞子さんやユニセフ親善大使として活動する黒柳徹子さんの姿にも感銘を受けました。
いつか私も紛争解決や平和な世界をつくる人になりたい。国際機関で働けたらかっこいいな。進路を考える時期に自分のやりたいことが明確になり、その思いを高校2年生の時の担任の先生に話したら「アメリカの大学に行ってみたら?」と提案されました。
これは、自分の中に全くない選択肢でした。
担任の先生からの助言を受けて、高校卒業後は日本の語学学校で、海外の大学で必要な英語スキルを習得。1年後、国際関係学について学べるアメリカの大学に進学しました。
大学では自分と同じ思いをもつ仲間が世界各国からたくさん集まっていて、仲間との議論や交流を深めることで、ますます自分のやりたいことに確信を持ちました。
より平和構築に関する学びを深めたかったことと、国連などで働くためには修士課程を修了する必要があったことから、大学卒業後はイギリスの大学院に進学。紛争後の国をどのように立て直していくか、平和構築を専門に学びました。

やりたいことを叶えるために

大学院在学中に、JICAのガーナ事務所でインターンとして働いたことをきっかけに、さまざまな人が現場で活躍していることを知り、この仕事の広さを実感します。

大学院在学中に、JICAのガーナ事務所でインターンとして働いたことをきっかけに、さまざまな人が現場で活躍していることを知り、この仕事の広さを実感します。
当時、大学院でたくさんの学びを重ね、私の頭は理論でいっぱいになっていました。
インターンでは、 JICAの研修事業で日本の技術や知見を学んだガーナの政府関係者が、帰国後自身の業務にどのように活用しているか等をインタビューする機会を得ました。
直接の裨益者(※1)からの声を聴いたり、開発の現場で働く日本人と出会ったりすることで、もっと現場経験を兼ね備えたバランス感覚が必要だと感じるように。
「このような環境に身を置いて働きたい」そう思いながら卒業後の進路を考えていた時、JICAガーナ事務所で有期雇用の形で働く機会をいただきました。
ガーナ事務所では、日本・ガーナ双方に対する事業の広報業務や日本やガーナのNGO(※2)からの相談業務に携わりました。

※1:裨益者(ひえきしゃ)とは、支援を直接的に受け取る人、難民や国内避難民、受入国の現地住民。
※2:NGOとは、貧困や紛争、環境問題など、国際的な課題の解決を目指して活動する非営利団体。政府や国際機関とは異なる民間の立場で活動する非営利団体。

また、ガーナ事務所にいる時にリベリアの復興・開発協力が再開されることになり、フィールドオフィス立ち上げ支援にも従事。
その後、一旦日本に帰国し、JICAのジュニア専門員としてアフリカ地域での事業形成や事業マネジメント業務をおこないます。ここでは、今まで専門に学んできた平和構築・復興支援の分野の知見を活かすことができました。
この後には、南スーダン事務所に移り、企画調査員として主にインフラ(港湾、道路、橋梁)事業を担当。独立直後の南スーダンに対する日本の協力方針に沿って、現地政府の人たちと具体的な事業の方向性を協議。
個別事業では、南スーダン政府側の担当官や日本から派遣される技術専門家の方たちとの橋渡し役になり、現地で事業が滞りなく進むよう調整を行っていました。
現地での平和構築・復興支援業務は、私のずっとやりたかった仕事です。

途中、国際機関での業務に憧れ、何度か試験に挑戦することもありました。国際機関に身を置いた経験はありませんが、ガーナ、リベリア、南スーダンでの業務を通じ、日本のODA事業を現場で実施することの醍醐味を味わえたと思っています。
また、日本の平和構築やアフリカに対する開発協力を現場で経験することで、常に相手の意見を尊重し、同じ目線で事業を進めることを体感できるように。この経験から、もっと自分の仕事の幅を広げ、JICA職員として本部でのさまざまな経験も積んで、自身が現地で協力できることを増やしたいと考えるようになりました。
それを実現するため、JICAの社会人採用試験に応募、受験し、2014年1月に入構しました。

「相手の声を聞くこと」を大切に

リベリアや南スーダンで業務にあたる際、事業が行われている現場や事業を一緒に行う政府関係者の事務所に通っていました。
何度も足しげく通い働きかけることで、徐々に相手との距離感が縮まること。相手にこちらの思いが伝わり、変わってくれたり、協力的になってくれたりをするのを感じられたときは、この仕事をしていてよかったと思える瞬間です。
仕事では、「相手の声を聞くこと」を大切にしてきました。現地の人の声を聞くこともそうですし、仕事を通してやりとりする時、人と関わる時は、いつも心がけています。
現在、ウクライナの問題がニュースでは取り上げられていますが、アフリカを含め世界にはまだまだ内紛を抱えている国はたくさんあります。すべての問題を一度に解決することはできず、時間もかかります。また自分1人で解決することはできません。けれど、自分の行動が何かにつながる、自分が働きかけることで相手の心を動かせること。行動を促せること。何かを変えていけること。みんなが幸せを感じられる社会をつくっていけたらいいなと考えています。

今に「納得感」を持ち前に進む

「幸せ」とは何かを考えたとき、私は、今ある自分に「納得感をもてること」が幸せだと思っています。

「幸せ」とは何かを考えたとき、私は、今ある自分に「納得感をもてること」が幸せだと思っています。
今の働き方、今の生活が100%自分の理想でなかったとしても、自分を許せる「納得感」をもつこと。「今、ここ」の納得感が、幸せにつながり、前に進むエネルギーになると思っています。

4歳になる娘がおり、私自身も家庭を持つことで仕事に対する考え方が変わった部分もあります。仕事と子育て双方で自分の理想はあり、思い通りに行かなくてイライラすること、落ち込むこともありますが、1日無事に過ごせて子どもと就寝する時は、ホッとする瞬間。
やりたい仕事と家庭との両立は、皆が苦労している部分。けれど、私にとって、同じ志をもった仲間と働けることが、この仕事の楽しいところですし、やりきりたいと向き合っています。いつも支えてくれているパートナーや家族には、本当に感謝しています。
将来は、またアフリカのどこかの国で平和構築の仕事がしたいと考えていますが、そのためにも経験を積んで幅広い視点での開発支援ができるようになりたい。今に納得感をもちながら、全力で向き合い、その先のキャリアにつなげていきたいと考えています。

【お話を伺った方の紹介】
独立行政法人国際協力機構 アフリカ部 計画・TICAD推進課
木村真樹子(きむら まきこ)さん

独立行政法人国際協力機構 アフリカ部 計画・TICAD推進課 木村真樹子(きむら まきこ)さん

自分のやりたいことがある人は、ぜひその道に進んでほしいと思っています。やりたいことがない人は、今や昔の関心ごとや好きなものをつなげていくと共通点が見つかり無意識に好きだったこと、選んできたことが見つかるかもしれません。そうすることで「流れでなんとなく」ではなく、自分で考えて「納得感」をもって進むことができるのではないかと思います。

文・聞き手:COE LOG編集部

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