いまだに予断を許さない、新型コロナウイルス感染症の拡大。ソーシャルディスタンス、マスク、手洗いなど、新しい生活様式も根付いていますが、感染者が増えているのと同時に、濃厚接触者も増えています。そもそも濃厚接触者とはどのような方が該当するのでしょうか?
今回は濃厚接触者の定義と、感染リスクのある濃厚接触者やその家族として、自宅待機をされた方3名にお話を聞いたので、その声をご紹介します。
「濃厚接触者」の定義は?
濃厚接触者とは、PCR 検査等で新型コロナウイルス感染症の陽性となった方と近距離・または長時間接触し、感染の可能性が高くなっている方を指します。
濃厚接触かどうかを判断する要素は、以下の2点です。
- 距離の近さ
- 時間の長さ
マスクなどの必要な感染予防策をせずに手で触れること。または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m程度以内)で15分以上接触があった場合に濃厚接触者と考えられます。
感染者の発症(無症状感染であれば、陽性確定日)2日前から入院等をした日までに接触のあった方について、関係性、接触の程度を保健所が調査。濃厚接触者に該当するかどうか判断します。
濃厚接触者と判断された場合は、保健所の指示に従って、感染した方と接触した後14日間は、不要不急の外出は控える形になります。これは、検査結果が陰性となった場合であっても同様です。
また、感染者の場合は、発症日から10 日間経過+症状軽快後72 時間経過してから。無症状感染者の場合は、陽性確定日から10日間経過で元の生活に戻れる形になります。
そのため、現状(2021年9月時点)のルールでは、感染者よりも濃厚接触者の方が長く、不要不急の外出を控えなければいけないこともあります。
(※参考:厚生労働省HP)
家族が濃厚接触者に
お話を聞いた人:40代男性
濃厚接触者となった経緯は?
高校生の息子が濃厚接触者になりました。
感染経路は息子の通う高校です。
息子の所属する部活内で、新型コロナウイルス感染症の陽性者が出ました。それを受けて、息子は「濃厚接触者」に。学校からは、自宅待機の指示が出ました。
(同じ高校内で、息子と同様に「濃厚接触者」となった生徒が多数いました)
家族に「濃厚接触者」が出たことで、私自身も会社に報告し、在宅勤務に切り替えました。
私は息子のPCR検査「陰性」の結果が出るまで10日間在宅勤務、息子の高校は2週間休校になりました。
PCR検査はどう受けた?
同じ高校にたくさんの濃厚接触者がいたため、高校で対象者をとりまとめて、郵送でPCR検査のキットが送られてきました。
唾液を採取する形のもので、検体は私が高校にもっていき提出。翌々日検査結果が出て、「陰性」と分かりました。
大変だったことは何ですか?
濃厚接触者だと連絡を受けてから、高校でとりまとめてPCR検査をすることが決まるまで、数日かかりました。この期間は、自宅で待機しながらも、何をどうしてよいものか分からず困惑しました。検査をするのかしないのか、するならいつするのか・・・息子もそうですし、私も会社に報告ができず、「先の見えない不安」によるストレスが大きかったです。
また、「濃厚接触者の家族」ということで、私と接触した会社の方も自宅待機となってしまい、責任を感じてしまいました。
息子にコロナらしき症状はなかったのですが、自宅待機でのストレスによるものか、普段はない体の痛みなどを訴えていました。子どもなりに、2週間身動きがとれないことによるストレスは抱えていたと思います。
周りの人に伝えたいことは?
家族みんな、日頃から手洗いマスクなど、感染症対策はおこなっていました。結果は「陰性」でしたが、息子は普通に高校生活を送る中で「濃厚接触者」に。
まさか自分がその立場になるとは思っていませんでしたし、新型コロナウイルスは、ごく身近なものだと改めて感じました。
本当に誰にでもおこりうることです。必要以上に敏感になってストレスを感じたり、自粛警察のような不適切な正義感で誰かを誹謗中傷したりしないこと。
こういう時こそ、人を思いやる気持ちをもって、自分自身がやるべきことをやっていって欲しいと思います。
私自身は、上司が体調を気遣ってくれるなどのフォローをしてくれたことで、メンタル的にかなり救われました。
会社の飲み会で濃厚接触者に
お話を聞いた人:20代男性
濃厚接触者となった経緯は?
感染経路は、会社主催の飲み会に参加したことです。(参加者は10名未満)
その4日後から発熱、頭痛、下痢と身体のだるさがあり、病院を受診。
診断は「食あたり」でしたが、コロナの懸念もある時期なので、受診から症状が落ち着くまでの3日間は大事をとって会社を休んでいました。
会社を休んで3日目の夜、すべての症状がおさまったので、いつも通っている習い事の教室に参加。教室に参加した日の晩、会社の飲み会メンバーに陽性者がいたとLINEで連絡をうけました。
その後、自分で保健所に連絡し、会社も引き続き休みをもらい、習い事教室の参加メンバーにも事情を説明しました。
私の検査結果が出るまで、習い事の教室は休みに。自宅でも家族と隔離生活を送りました。
PCR検査はどう受けた?
私は自分で保健所に連絡をして、車で指定された場所に出向きました。誘導車の指示に従って動き、ドライブスルーのような形で、車にのったまま鼻からPCR検査を実施。翌日検査結果が出て、「陰性」と分かりました。
飲み会に同席したメンバーもそれぞれ保健所に連絡をして検査を受けましたが、検査の形式もやり方もまちまちでした。検査をする方が自宅に来てくれるパターン、自分で診療所に出向いて検査を受けるパターン。鼻からの検査、唾液での検査、自治体によって異なるようでした。
大変だったことは何ですか?
「孤独」と「後悔」です。
会社も休み、部屋からも出ない生活。食事は家族が作って紙皿に盛り付けて部屋の前に置いてくれ、LINEで連絡をくれていました。食器類は、すべてゴミ袋にまとめて捨てます。部屋の外に出るのは、トイレとお風呂だけで、外に出たら全て消毒します。家族とも顔を合わせない孤独な生活を約2週間続けました。
会社主催の飲み会だったので、会社からのプレッシャーはありませんでした。
ただ、通っていた習い事の教室は私の「陰性」の結果が出るまで休みになってしまい、みなさんに迷惑をかけることに。熱が下がったタイミングで教室に行ってしまった自分の行動を後悔しました。
周りの人に伝えたいことは?
コロナは本当に身近な存在です。同じ飲み会に参加して陽性だった方も、症状は発熱と身体のだるさだったと聞いており、軽症のようでした。
若者が感染しても重症にはならないかもしれませんが、高齢の方が感染したら重症のリスクが高くなります。私自身も、もし家族にうつしてしまったら・・・というのが一番の懸念でした。
きっとこれからは、コロナとも共存していかなければならない時代。大切な人を守るためにも、一人一人が自分のできることをやっていくべきだと思います。
濃厚接触で2回の自宅待機に
お話を聞いた人:40代男性
濃厚接触者となった経緯は?
小学生と中学生の子ども、妻、私の4人で暮らしています。
2021年1月に中学生の子どもの学校の先生が新型コロナに感染し、PCR検査をおこなったところ子どもに「陽性」反応が出ました。濃厚接触者ということで、家族全員検査を受けましたが、その他の家族は全員「陰性」。
上の子は自宅療養、濃厚接触者となる下の子どもも学校を休んで自宅待機に。私もテレワークとなり外出できなくなりました。
実は3ヶ月前の2020年10月に、私も新型コロナに感染して入院しています。そのときも、濃厚接触者として家族全員PCR検査を受けました。幸いなことに、他の家族は全員「陰性」。ただし、この時も妻と子ども2人が2週間の自宅待機になりました。
感染した私も息子も、軽症だったのですが、短い期間で家族みんなが2回の自粛生活になるとは想像もしていませんでした。
PCR検査はどう受けた?
保健所で紹介してもらった近くのクリニックで検査しました。
大変だったことは何ですか?
1回目の自粛の時に、自由に動けない、運動ができないストレスが大きかったです。2回目の自粛では、任天堂switchのfamilyトレーナーを購入し、子どもと一緒に体を動かしました。
周りの人に伝えたいことは?
感染しないに越したことはないですが、かかった際はすぐに必要な関係者に報告して対処を考えた方がよいと思います。後では判明した場合は、ダメージが大きくなる可能性があります。そして、自宅で過ごす時間が長くなるので、新しいことにチャレンジするチャンスとして、気持ちを切り替えることをおすすめします。
最後に
どれだけ気をつけて生活をしていても、誰もが新型コロナウイルスに感染または、濃厚接触者になる可能性があります。自分を守り、家族や大切な人を守り、安心して暮らせる社会を取り戻すために何ができるか。正しく情報とつきあい、一人ひとりができることを考えて、行動していくことが求められているといえそうです。
文:三輪田理恵