4年ぶりに行動制限のない夏がやってきました。今年は出かける機会が増え、海や川、湖などで子ども達が遊ぶ機会も増えるのではないでしょうか。実は子どもの水難事故の約半分が、川で起きています。今回は、夏の川遊びで気をつけたいポイント、万が一の時にどのように対処するかをご紹介します。
水の事故、いつ起きている?
警視庁から発表された令和4年夏期(7~8月の2ヶ月間)の水難者は638人(うち死者・行方不明者228人)、そのうち中学生以下の子どもは、120人(うち死者・行方不明者9人)でした。
水難者638人について
【発生した場所は?】
- 海 314人 (49.2%)
- 河川 277人 (43.4%)
【何をしていた時に起きた?】
- 水遊び 214人(33.5%)
- 魚とり・釣り 104人(16.3%)
- 水泳 68人 (10.7%)
海での事故が最も多く、魚とり・釣りをしている時にも発生しています。この中で、子どもの事故に注目してみると、別の傾向が出てきます。
子どもの死者・行方不明者9人について
【発生した場所は?】
- 海 5人 (55.6%)
- 河川 4人(44.4%)
【何をしていた時に起きた?】
- 水遊び 7人 (77.8%)
子どもの水の事故は、海と川両方で起きており、水遊びをしている時に多く発生しています。
参考データ:「全国の水難事故マップ」どこの場所でどんな事故が起きているのか、こちらで確認できます。
川で事故が多いのはなぜ?
皆少なからず気をつけて川へ入るはずなのに、なぜ川の事故は起きてしまうのでしょうか。それには、川のもつ特徴があります。
体が浮かない
海の水は塩分が含まれているので、真水よりも浮きやすいことはよく知られていますよね。川の水は真水なので、プールの水と同じくらいの浮力では?と思うかもしれませんが、海やプールの状況は川では通用しません。
川の水は、激流で岩などに水がぶつかって白く泡だった「ホワイトウォーター」とよばれる箇所があります。ホワイトウォーターでは空気が40~60%含まれており、相対的に水が軽く、人間の体が重くなるため、沈みやすくなります。
流れが一定でなく、動きにくい
川の水は流れが速く、たとえ膝くらいの深さだとしても動けないほどの力をもっていることがあります。水が常に動いている川は、川幅、勾配、川床の状況、岩などの変化によって、複雑でさまざまな水の流れが発生。特に堰堤(えんてい:河川の水をせきとめるための構造物)のそばでは、「リサーキュレーション」と呼ばれる水の渦ができます。
こうした人口構造物の近くでは、縦方向の渦が巻き、さらにホワイトウォーターになるため、体が沈みます。例え泳ぎが得意でも、ライフジャケットを着ていても、一度はまってしまうと脱出が困難に。水難事故の15%が、人口構造物のそばで起きているともいわれています。
画像出典:水辺の安全ハンドブック(公益財団法人河川財団)
急に深くなる、増水する
川の水深は一定ではありません。魚を追いかけていたら、流された持ち物を追いかけていたら・・・など、気がついたら深みにはまってしまうケースも多いようです。
遊んでいる場所の天気がよくても、はるか上流で大雨が降り、一気に増水して流された事例もあります。水が濁っていると深さが分からなくなることも。
もし天気がよくても、川の水が濁ってきたら異常な増水の危険性があります。その場合は、水から上がるようにしましょう。
溺れたときはどうする?
溺れた時に一番やってはいけないのは「助けるために飛び込む」ことです。救助にはいった人の7割が犠牲になるという二次災害も目立っています。
もし、誰かが川に落ちたり、流されたりしたら、自分の安全を確かめ、まず声をかけましょう。近くに長い棒などがあれば、それを差し伸べます。棒などがなく、届かないところであれば、浮くものやロープを投げます。周りに人がいたら声をかけて協力を求めるとともに、消防署などへ救助の連絡をしましょう。
溺れている人を助ける方法:リーチ
救助者は腹ばいになったり、固定されたものにつかまったりして、水中に落ちないように気を付けます。
画像出典:水辺の安全ハンドブック(公益財団法人河川財団)
溺れている人を助ける方法:スロー
ペットボトルや浮力のあるボールなどを溺れている人に投げ入れる方法です。風の影響を受けないようにするために、中に水を少し入れておくと、より遠くに飛とばすことができます。
川遊びの事故を防ぐポイント5つ
愛知県警のホームページ「水難事故の防止対策」では、以下を呼びかけています。
- 天候の変化や川の状況を川に行く前からチェックするようにしましょう。
- 川は、目に見えない流れや急に深くなる所や滑りやすい所があるので、表面は穏やかでも水中には注意しましょう。
- 子どもだけで遊ばせず、必ず大人が付き添って、子供から目を離さないようにしましょう
- ライフジャケットを正しく着用させましょう。
- 急な増水で水没するおそれがある、河原や中洲、川幅の狭いところに注意しましょう。
合わせて、堰堤などの人口構造物に近づかない、こまめに休憩をとりながら遊ぶことも心がけましょう。また、大人は飲酒をして、川に入ることがないようくれぐれも気をつけてください。
最後に
ほとんどの川には、海やプールのように監視員さんがいません。救助用のボートなども用意されていないので、自分の身は自分で守らなければいけません。「危険だから川へ行くのをやめる」という選択もできますが、川は自然を身近に感じられる貴重な遊び場です。大切なのはリスクを把握し、安全を確保した上で川へ行くこと。ライフジャケットを着用し、十分注意をして、夏の川遊びを楽しんでくださいね。
参考サイト:
公益財団法人河川財団
警察庁「令和4年夏期における水難の概況」
愛知県警「水難事故の防止対策」
公益財団法人日本ライフセービング協会
文:三輪田理恵