キャリア教育の専門家が、読者のみなさんからの相談に答えます。今回は、何をやっても続かない、根気がない子との関り方について聞きました。

武居秀俊(たけい・ひでとし)
人材系の会社で営業や研修を担当、ヘッドハンティング会社のキャリアコンサルタントを経て、東京の都立高校で世界史教員として勤務。その後独立し、現在は企業向けに経営支援や採用支援を行うほか、中学生~大学生向けにキャリア支援プログラムを提供している。自身は男4人兄弟で、3女の父。
継続力を身につけるには?
娘(小5)は、何をやっても続きません。これまでいろいろと習いごとをしてきて、すべて自分からやると言って始めたのですが、すぐに飽きてやめてしまいます。このままいくと「やめぐせ」がついてしまうのではないかと心配しています。子どもに継続力を身につけさせるには、どのようにすればいいでしょうか?
(40歳、女性)
他にも、「やる気がない子に対して、どう声をかければいいか教えてほしい」などの声が届いていました。
武居さんのアドバイスは、次の通りです。
「やり切った経験」をさせよう
子どもに「やる気がない」「継続力がない」という話はよく聞きます。そこで、子どものやる気と自信を育むために、親はどのように関わればいいのか考えてみたいと思います。
大人でも子どもでも、人は何かを「やり切った経験」があると、自信を持つことが出来ます。そう聞くと、〇〇の大会で優勝したとか、□□のコンクールで入賞したとか、そういったものをイメージするかもしれません。ただ、「やり切った経験」は、決して華々しいものでなくてもいいんです。
どんな些細なことでもいいので、子どもに「やり切った経験」をさせてあげましょう。家庭内でルールとして決めたことを、「やり切らせる」というのもおすすめです。
ルールがあるから楽しい
サッカーや野球といったスポーツ、ゲームなど、みんなが夢中になるものにはルールがありますよね。人は完全な自由を与えられると、一瞬喜ぶものの、実際には「どうしたらいいか分からない」状態になりがちです。また、ルールがなければ、目標への到達度合いが曖昧になってしまい、勝ち負けによって湧き上がる感情も、達成感も味わえません。
ルールは人を縛るための決まりではなく、「制約」と「自由」の中で、安心して楽しめるようにつくられたもの。家庭内でもルールを決めて、それを守らせることは、子どもの自信を育むことにつながります。
家庭内のルールとしては、このようなものがあります。
・〇時以降はスマホを使わない
・自分が使った食器は流し台に持っていく
・ゲームをやる時間と同じ時間だけ勉強をする
……など
どんなものでも構いません。ルールを決めて、それを守らせることで、子どもに成功体験を積ませてあげましょう。
ルール作りのポイント
ルール自体はどのようなものでも構いませんが、ルールを決める際は、次のようなことを意識すると効果的です。
一緒に決める
ルールは、子どもとの話し合いの中で一緒に決めるようにしましょう。親が一方的に押しつけるのではなく、「自分が納得して決めたもの」の方が、ルールを守る意欲が高まります。
理由を伝える
「夜遅くまでスマホを使うと、寝る時間が遅くなって体調を崩してしまうよね。だから、時間を決めて使おうか」といったように、なぜそのルールなのか、しっかりと理由を共有することが大切です。
柔軟に変更する
ルールは1度決めたら終わりではなく、子どもの成長や環境の変化に合わせて柔軟に変えてOK。その際も、変更点を話し合って、一緒に考えるようにしましょう。
ルールを設定したら、それを守れたかどうかの結果だけでなく、子どもを見守り、声がけをしながら、プロセスにも関心を持ってください。
その上で、「頑張った」「きつかった」「悔しかった」「うれしかった」など、その時、子どもがどんなことを思ったのかを聞いてみてください。子どもは気持ちを言語化することで、自分の感情に気づき、心を整理できるようになります。また、「自分の気持ちを話して、受け入れてもらえた」という感覚を味わうことは、自己肯定感を育む土台にもなります。
最後に
以前に、「うちの子は牛乳の早飲みが得意なんだけど、これが将来の役に立つとは思えない……」という人がいました。このように、子どもが夢中になっていることや得意なことに対して、「これが一体将来の何につながるの?」と思うこともあるかもしれません。
ルールを守ることも同じで、「意味があるの?」と反発したり、「〇〇ちゃんの家は違うのに!」と、言いたくなったりすることもあるはずです。
今はその大切さが分からなくても大丈夫。たとえ牛乳の早飲みであっても、早飲みが体に良いかどうかは別にして、その子なりの競争心の現れかもしれません。
どんなことであっても毎日コツコツ積み上げて、子どもが何かを「やり切った経験」、「自分の強みはこれだ」と認識したこと、その1つ1つが、その子の自信となります。そして、それこそが将来、自分らしく強みを発揮しながら生きていくためのエネルギーになっていきますよ。