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韓国の人気音楽グループBTSの最年長メンバーJINさん(31)が2024年6月、1年半の兵役を終えて芸能活動を再開しました。韓国では、健康な成人男性は兵役の義務があり、軍隊に入って戦争に備えた訓練や任務をしなければなりません。実は世界では、義務として国民を軍隊に入らせる国は珍しくないのです。
BTSは7人組。2023年末までに全員が兵役に就き、JINさん以外の6人は今も軍隊にいるか、軍隊の代わりに公的機関で働いています。2025年6月までに順次、任務を終える予定です。
今は「休戦中」
韓国は1950年に始まった朝鮮戦争で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と戦いました。1953年に戦闘をやめる休戦協定を結びましたが、戦争はまだ終わっていない状態です。そこで、国を守るために十分な兵士の数を保っておかなくてはいけません。
成人男性は、陸・海・空軍などで2年弱働くと法律で決まっています。ただ、心身が健康でない人やオリンピックのメダリスト、国際芸術コンクールの入賞者らは義務から外れます。
BTSは世界に韓国文化を広めた大スターなので、兵役をなくしてもよいのではという議論が起こりました。しかし、「不公平だ」という国民の声は根強く、メンバー全員が入隊したことで議論は収まりました。
世界で復活の動き
兵役を国民の義務とする制度を「徴兵制」と言います。アメリカと旧ソビエト連邦が対立した「冷戦」が1989年に終わってからは、大きな戦争の危機が去ったので徴兵制をやめる国が増えました。ところが、ロシアがウクライナの領土を奪い始めた10年ほど前から、ヨーロッパでは徴兵制を復活する国が出ています。
2015年にリトアニア、2018年にスウェーデンが徴兵制を復活。ドイツやイギリスも今、政府が復活を提案しています。既に徴兵制があるノルウェー、スウェーデンは女性を対象に加え、デンマークも検討しています。
若者の思いは?
日本も1945年の敗戦までは徴兵制があり、多くの若者が国のために戦うことを求められました。今の韓国の人は、兵役をどう考えているのでしょうか?
中日新聞元ソウル支局長の境田未緒記者は「若い男性は軍隊に行きたくないというのが本音ですが、大っぴらに口に出すことはありません。『休戦中』であり、国を守るという意識が強いからです。ただ、男性だけが兵役の期間、勉強したり遊んだりできないため、最近は『女性も』という声が上がっています」と話しています。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年7月6日に掲載された記事を転載しています。