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バスの運転手が足りません。路線バスや高速バスの本数が減っているほか、修学旅行の貸し切りバスを確保できなかった学校も。運転手の働きすぎを防ぐ「2024年問題」もあり、影響は続きそうです。
修学旅行、電車に変更も
富山地方鉄道(富山市)は2024年5月10日~17日、高速バス4路線、計約60本の運行を休みました。修学旅行の貸し切りバスを優先した結果、運転手が足りなくなってしまったのです。高速バスを予約していた人には、料金を払い戻しました。
また、旅行会社の近畿日本ツーリスト(東京都)は5月13日、東京都内の中学校に通う生徒の保護者に、「今月の修学旅行のバスを手配できなかった」と文書で謝りました。旅行会社によると、新大阪駅から奈良に向かうバスを予約していましたが、学校側と相談し、京都発に変更。しかし、新たにバスを確保できず、生徒らは結局、電車で移動したそうです。
なぜ足りない?
バスの運転手は、働く時間が長いのに給料は安く、人が集まらないからです。国の調査によると、2021年の平均年収は404万円。全産業の平均(489万円)を85万円下回ります。一方、年間で120時間、長く働いていました。
これまでは残業や休日出勤などでどうにか対応してきましたが、4月に法律が変わり、運転手らの働く時間に上限ができたことで深刻化。外国人観光客の増加で観光バスや貸し切りバスのニーズも高まり、予約を断らなければならなかったり、急な変更に対応できなくなったりしているのです。
今後どうなる?
身近な路線バスにも影響しています。岐阜市の岐阜乗合自動車(岐阜バス)は、4月から4路線を廃止し、15以上の路線で減便。長野県飯田市の信南交通も、早朝と深夜を中心にバスの便数を減らしました。
日本バス協会(東京都)は、今の便数などを保つと、2030年度には全国で約3万6千人の運転手が足りなくなると見込みます。
若い世代の育成を
公共交通に詳しい名古屋大大学院の加藤博和教授(54)は、「運転手不足は10年前から問題になっていたのに、若い世代を育てられなかった」と指摘します。バス運転手には、美容師や看護師のような専門学校がないそうで、大型バスの運転に必要な免許の取得を目指しながら、運転技術を学べる学校をつくるべきだと話します。もちろん、給料などの働く条件を良くすることも欠かせません。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年6月22日に掲載された記事を転載しています。