6月は、進路を考えるには絶好の時期。入試要項・パンフレットなどが各大学のホームページに掲載され、地域にもよりますが、私立大学の合同説明会が開催されるなど、高校3年生や受験生にとっては大学入試を身近に感じ始める時期といえるでしょう。
高校1年生は夏休み前までに、ある程度決めなければならない文理選択があります。定期考査の結果や好き嫌いで文系・理系を選択するのではなく、自分の将来を考えた選択が最善です。
今回の記事では、進路選択の参考として、2023年度大学入試全体を振り返ります。

塾講師 渡邉智治(わたなべ・ともはる)
愛知県一宮市にて「進学塾 翔和」を経営。塾講師歴は25年以上。犬山市教育委員も務めている。
私立大受験生の共通テスト離れ
2021年度から、これまでのセンター試験に代わって、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が行われるようになりました。
2023年度の共通テストの志願者数は51万2581人、受験者数は47万4051人(前年比97%)。国公立大の入試に必要とされる7科目以上の受験者数は前年比99%と、ほぼ横ばい。一方、私立大専願の受験生が中心の3科目以下の場合、前年比95%でやや減少しています。
共通テストはセンター試験と比較して、理解度や知識の活用力が求められます。そのため、これまで以上に対策が必要となり、私立大専願者にとっては、志望する私立大の個別試験対策に絞り込んだ方が効率的だと言えます。
そのため、私立大専願の受験生の共通テスト離れにつながったと予想します。また、私立大を中心とした入学定員の増加や地方国公立大学の競争緩和も進んでいます。結果として、大学への入口は広がったと言えそうです。
2023年度における人気学部の傾向
●国公立大は経済、農、医療系の学部で志願者増
●私立大は経済、経営、商、美術・デザイン、材料・物質・資源、農、情報系の学部で志願者増
国公立大の学部・系統別の志願状況は、文・人文学部系で前年比92%、社会・国際系で前年比93%と志願者が減少しました。例えば、東京外国語大では共通テストの必須科目が数学1科目から2科目となり、受験生の負担が増え、敬遠される要因となったと考えられます。
●経済・経営・商学系は、前年比104%と志願者数増
横浜国立大の経済学部は前年比272%、大阪公立大の経済学部は前年比160%というように、大幅な増加率をみせる大学もありました。
●自然科学系の理・工・農学部では、数学・数理情報、生物分野で志願者増
工学系では前年比96%と志願者が減少。農学部学系は前年比102%、倍率は3.0倍と狭き門になりました。
「関関同立」が好調
関西の私立大学では同志社大、立命館大、関西学院大が、一般方式・共通テスト利用方式ともに志願者が増加。関西大学の共通テスト利用方式の志願者も前年より増え、「関関同立」の4校あわせて前年比105%と2年連続で志願者が増加し、人気の高さがうかがえます。
首都圏の私立大学では、「早慶上理(早稲田、慶応、上智、東京理科)」と「MARCH (明治、青山学院、立教、中央、法政)」いずれの大学群も一般方式の志願者数は微減したものの、共通テスト利用方式の志願者数は増加。また、早稲田大学の教育学部が共通テスト利用方式を新たに導入したほか、上智大学でも共通テスト利用方式(3教科型)を始め、多くの志願者を集めました。
首都圏の女子大の志願者は、4年連続減少。特に、大妻女子大、東京家政大、東京女子大などで志願者の減少が目立ちました。
共通テストの攻略がポイント
大学入試センターや大手予備校のホームページには共通テストの各科目の受験者数や平均点が示されています。また、各大学のホームページは、各学部の受験者数や平均点・合格点などが詳細に掲載されています。それらのデータを見ることで、今後の勉強方針が決まります。しっかり時間をかけて分析してみてください。
大学選択のポイントは?
高校3年生でも、大学入試までまだ時間はあります。今の成績で決めるのではなく、次の3つの視点で考えて、1日でも早く行動に移してください。
将来就きたい仕事から考えよう
就職先を決める際、大学の学部が文系だったか、理系だったかで、就ける職業が限定される場合があります。どの大学・学部を受験するかを考える前に、まず「自分が将来どんな仕事がしたいのか」を考えてみましょう。
明確な職業がない場合でも、「〇〇の分野で働きたい」というようなイメージがあれば、大学・学部選択の材料になります。何となく思い描いている将来像がある場合は、周りの人に相談してみてくださいね。
学びたい学問・分野から考えよう
将来の職業はまだ考えられないという場合は、これからどういったことを学びたいのかを考えてみましょう。学びたい、もっと知りたいということがあれば志望する学部を絞り込むことができます。
夏休みに入る前の今。自分自身の将来を真剣に考える時間を持ってみてください。もし迷ったら、遠慮せずに周りの大人に相談してください。そして親御さんは、お子さんの話に耳を傾け、一緒に考えてあげてくださいね。
文:渡邉智治