「見ると幸せになれる」とされる黄色い新幹線「ドクターイエロー」が引退します。運行するJR東海(愛知県)とJR西日本(大阪市)が2024年6月に発表すると、関連グッズの売り上げが急増。鉄道ファンらが別れを惜しみ、あらためて人気が高まっています。
乗っているのは、運転士ら8人だけ!
ドクターイエローは、走りながら新幹線の線路のゆがみや電線のすり減りがないかを調べる「走るお医者さん」です。7両あるうち、普通の新幹線のような座席が並ぶのは最後尾の7号車だけ。他の車両には、検査の機械やデータを見るモニターが置かれています。一般のお客さんは乗せず、基本的には運転士や検査する人ら8人が乗る特別な新幹線です。
ドクターイエローが走るのは、10日に1回ほど。東京―博多間を2日間かけて往復しますが、いつどこを走るかは秘密です。なかなか会えないので「幻の新幹線」とも呼ばれています。
なぜ、引退するの?
引退するのは、車体が古くなったためです。JR東海の車両は2001年、JR西日本のものは2005年から活躍しており、20年ほどがたちます。速度の差も課題でした。ドクターイエローの最高時速は270㎞。東海道新幹線の285㎞、山陽新幹線の300㎞より遅く、他の列車が追いつかないように時間を調整していました。
JR東海は2025年1月に運行を終える予定。ただ、JR西日本の車両は27年以降に引退予定で、それまでは引き続き、東京―博多間を走行します。今後は、お客さんを乗せて走りながら線路などを点検できる車両を取り入れる予定のため、次のドクターイエローは造りません。
シールやプラレールも人気!
引退発表を受け、グッズがよく売れています。JR東海が運営する通販サイト「JR東海MARKET」では、ドクターイエローに関連するグッズの売り上げが一時、10倍近く伸びました。愛知県名古屋市の「リニア・鉄道館」にあるミュージアムショップでも、シールやプラレールなどを買う人が増えています。
取材する中日新聞経済部の市川泰之記者は「新幹線に乗車中の客が亡くなる列車事故は、これまで一度も起きていません。ドクターイエローが、安全を支える上で大きな役割を果たしてきたと言えます」と、たたえます。JR東海は、ドクターイエローの一部車両をリニア・鉄道館で保存することを検討中です。「古い世代のドクターイエローなど歴代の車両が展示されている施設に、新たな仲間が加わるかもしれません。ぜひ足を運んでみてください
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年8月10日に掲載された記事を転載しています。