みなさんはお金について教えてもらったことはありますか? お金は幸せな暮らしに欠かせないものなのに、大人になるまで、お金について学ぶ機会がなかった人も多いと思います。しかし、子どもの頃からお金について学ぶことは、将来トラブルに巻き込まれず、幸せに暮らすらすためにとても大切です。
そこで今回は、子どものマネー教育にも力を入れるファイナンシャルプランナー(FP)で、メディアでも活躍中の近藤賢一さんに、家庭で出来るマネー教育について教えてもらいました。子どもの成長に応じて、いつから、何をすれば良いのか。ぜひ参考にしてみてください。
FP事務所RAC代表 近藤賢一(こんどう・けんいち)さん 南山大学経済学部卒業後、求人広告営業や人材あっせん事業のコンサルタントなどを経て、FPとして独立。年間100世帯以上の家計相談や資産形成に関するアドバイスを行っている。子育て世帯専門のFPとして活動しながら、小学校のPTA役員としても活動中。
マネー教育は必要?
2022年度から、高校家庭科の授業において、金融教育が必修となりました。成年年齢が18歳に引き下げられ、高校卒業前後からさまざまな契約が可能になったため、若者がお金のトラブルに巻き込まれることが懸念されているからです。しかしお金のトラブルは、もっと小さなうちからも起こり得ます。友達とお金の貸し借りをしたり、カードや文房具などを売り買いしたり、ご飯をおごったり、こうしたことが原因でトラブルになる例は後を絶ちません。つい最近では、小学生が同級生から大金をだまし取った事件もありました。
さらに昨今では電子マネーやオンライン課金など、デジタルでやり取りされる「見えないお金」の存在も無視できません。親がセキュリティを設定しても、今の子どもはITリテラシー(インターネットなどのITに関する理解・活用スキル)が高く、かいくぐってお金を使ってしまうこともあります。
子どもがこの先も幸せに暮らしていくため、さらに、こうした身近なトラブルを防ぐために、子どものうちからのマネー教育が必要なのです。
マネー教育は何をすればいい?
自分で稼ぎ、貯めて使う経験を
マネー教育の始めどきは、子どもがお金の存在を認識した時です。未就学児でも「これ買って」と言い始めたら、お金の存在に気づいていると言えるでしょう。まずは子どもと一緒に買い物をして、「お金を払って物や対価を得る」という経験をさせてみてください。
小学生になったら、お金を稼ぐこととお金の管理を任せてみます。例えば、週に1回など、短いスパンで少額のお小遣いをあげて、さらに、お手伝いなどをした時には「お給料」として、一定額を渡します。
そして、透明なボックスを3つ用意し、そのお金を「自由に使うお金」「欲しいものに使うお金」「誰かのために使うお金」という用途別に貯金します。ちょっとしたお菓子や好きなものを買うだけでなく、目的を持って貯めていくことや、自分ではない家族や友達、寄付のためにもお金が使えるのだと意識できるようになるでしょう。
中学生になったら、1年単位でお小遣いの額を決める「年俸制」や、決められたルールを守らなかった場合などには減らす「減俸制」など、子どもの個性に応じてお金の渡し方を工夫します。親子間で交渉するのも良い経験になります。
いずれの段階でも、「自分でお金を稼いだり使ったり、管理する経験」が大切です。自分のお財布で買い物をすると、子どもはびっくりするほど熟慮します。小さな失敗をしても、後に大きな学びとなるので、使い方に関しては口出しせず見守ってみましょう。
お金について語り合おう
さらに、家族でお金の話をする習慣を持ちましょう。例えば、日本では避けられがちな「お父さん/お母さんの給料はいくら?」という話からも、身の周りのお金の話につなげられます。
「今、〇〇円の給料をもらっているんだけど、私たち家族が月いくらで暮らしているのか分かる?」と問いかけてみましょう。食費、光熱費、家賃や住宅ローン、通信費、教育費……。そこから給料の話をすれば、金銭感覚や家庭における収入の意味も学べるでしょう。自分のお小遣いについても考えるきっかけになり、家庭でのお金のルールも共有できます。
海外では収入の話がタブーではないところも多いようです。しかし、日本では直接的に話すことはまれなので、「外では話さないでね」と一言約束をしても良いかもしれません。お金についてタブーを作らず話せるようにしておけば、トラブルが起こっても子どもは相談してくれるはずです。
マネー教育におすすめの本は?
まずは、お金というものの意味を知り、自分の手で動かしてみて、家庭でのお金のルールを理解する。それが出来るようになったら、社会におけるお金の意義やルールについても知りたくなるかもしれません。
近年は子ども向けのマネー本が数多く出版されているので、親子で手に取っても良いですね。特に次のような本はおすすめです。
「学校では教えてくれない大切なこと(3) お金のこと」(旺文社)
「学校では教えてくれない大切なこと(33) お金が動かす世界」(旺文社)
「12歳までに身につけたいお金の超きほん」(朝日新聞出版)
最後に
日々の会話やお小遣いなどの身近なところから、お金とその価値観について、親子で話し合える関係性を作り上げていく。これが家庭におけるマネー教育の基本だと思います。焦らずゆっくり、成長に応じて内容を深めていきましょう。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部