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「もふもふ」「まったり」——。どんな意味だと思いますか? この2つのように、最近生まれた新しい言葉や、今までとは違う使い方が広まってきた言葉について、文化庁が16歳以上の6000人に聞いた世論調査の結果が、2024年9月に公表されました。
ふんわり柔らかな「もふもふ」
「もふもふ」は、動物などがふんわりと柔らかそうなイメージを表します。「まったり」は、ゆっくりしたり、のんびりしたりすること。「さくっと」は時間をかけずに、さっさとやる様子、「きゅんきゅん」は愛らしい物に胸が締め付けられる様子を表現しています。いずれも、物事の様子を表す擬態語です。これらに加えて、「がっつり」「ふわっと」「ごりごり」の計7つが、辞書に新しい意味が載り始めた擬態語として調査されました。
「さくっと」「もふもふ」「まったり」は、全体の半分以上が「使うことがある」と答えました。年代別では「さくっと」が20~40代、「もふもふ」は10~30代で8割を超えました。
辞書に登場、誰が決める?
「三省堂」が2022年に発行した「三省堂国語辞典(第八版)」には、7つの言葉がすべて載っています。でも、2014年発行の第七版には、「ふわっと」や「もふもふ」はありませんでした。辞書に載せるかどうか、誰がどうやって決めるのでしょうか?
三省堂辞書出版部の奥川健太郎さんによると、日本語学を専門とする編集委員と担当編集部が、話し合って決めます。編集委員たちは、普段から、世の中でどんな言葉が使われているか、実例を集めています。新聞や雑誌、本だけでなく、ウェブページやテレビ、ラジオ、電車やバスの中で見かける広告まで、あらゆる場所で出合う今の日本語を参考にしているそう。話し言葉も大事です。
大切なのは、特定の世代や分野を超えて見聞きするような「一般性」と、今後も10年以上使われそうな「継続性」。新型コロナウイルス禍で使われた「3密」など、一時期だけ広まった言葉は掲載しないこともあります。
ちなみに、第八版で「きゅんきゅん」を載せたのは、「きゅんきゅんする」などの動詞としても使われる頻度が高く、元々あった「きゅんと」の形に収まらないからだそう。「この他にも、ますます用法が広がっていて、今後の改訂で加える必要がある言葉が出てくるかもしれません」と奥川さんは話します。
「失笑する」の本来の意味は?
世論調査では擬態語の他に、元と違う意味で捉える人が多くなった言葉も調べられました。
例えば「悪運が強い」の本来の意味は「悪い行いをしたのに、報いを受けずにいる様子」。でも、そう捉えている人はわずか24%ほど。違う意味の「悪い状況になっても、うまく助かる様子」と考える人が67%もいたのです。
「失笑する」も、本来は「こらえ切れず噴き出して笑う」の意味。ところが、67%が「笑いも出ないくらいあきれる」の意味を選びました。
こうした言葉や表現は、社会や時代の求めに応じて生まれ、変化し、なくなっていくもの。今のリアルな言葉や表現がどうなっているのか、客観的に教えてくれるのが辞書なんですね。
この記事は「中日こどもウイークリー」で2024年11月9日に掲載された記事を転載しています。