【不登校のリアル】家から出られない子などに、メタバースを通じて学びと交流を

【不登校のリアル】家から出られない子などに、メタバースを通じて学びと交流を

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近年、不登校の児童生徒は増加しており、全国で30万人に上ると言われています。名古屋市立の学校でも令和4(2022)年度には4953人が不登校の状態にありました。そうした現状を受け、名古屋市教育委員会は不登校であっても学びや交流の機会が得られるよう、さまざまな施策を検討。2024年9月にメタバース(仮想空間)を使った学びの場「Nagoya Compass Campus」を開設しました。

このメタバースはどんな場所で、誰が参加でき、どのようなことが出来るのか。名古屋市教育委員会 新しい学校づくり推進課の担当者に話を聞きました。

家にいても学びと交流の機会を

新しい学校づくり推進課の纐纈充(こうけつ・みつる)さん新しい学校づくり推進課の纐纈充(こうけつ・みつる)さん

名古屋市教育委員会は2024年9月2日、メタバースを使った新しい学びの場「Nagoya Compass Campus」(以下、 ナゴヤコンパスキャンパス)を開設しました。なかなか家から出られないなど、不登校になっている子どもに向け、学びや交流の場を提供しようという試みです。

これまで名古屋市教育委員会は、中学校に教室以外の居場所を作ったり、教育支援センター「なごやフレンドリーナウ」を設置したりするなどして、不登校の子どもたちに学校の教室以外の学びや交流の場を提供してきました。しかし、不登校の子どもの中には家から出られないケースなどもあり、そうした子どもへの学びの機会を提供する場や方法を模索していました。

そこで参考にしたのが、文部科学省の先端技術を活用した実証事業です。先行していた東京都小金井市や熊本県熊本市の取り組みなどを参考にしながら、オンラインを活用した不登校支援の方法を検討。その結果、名古屋の子どもたちに寄り添う形を考え、2026年3月までの実証事業として、教育メタバース空間「ナゴヤコンパスキャンパス」をスタートさせました。

コンパスキャンパスって?

誰でも利用できる?

ナゴヤコンパスキャンパスは、家からなかなか出られないなど、引きこもりがちになっている子ども向けに開かれています。利用できるのは、学校が「ナゴヤコンパスキャンパスが、学びの場への最初の1歩として必要」と判断した小中学生で、学校からの紹介を受けた保護者が希望に応じて参加登録を行ないます。教育支援センターや民間のフリースクールなど、別の場所・機関での相談・支援を受けている子どもは、そこでの学びを大切にしてもらいたいので、推奨しないケースもあると言います。

利用するためには、各家庭でインターネット環境が必要ですが、学校から1人1台配付しているタブレットから参加できます。必ず学校を通しての登録となるので、外部からの参加者はなく、安心して参加できる環境になるようにしています。参加を希望する場合には、まずは在籍する学校に相談してみてください。

どんなシステム?

ナゴヤコンパスキャンパスではオンライン上に小学生向けのフロアと中学生向けのフロアがあり、教室や自習室、相談室などが設置されています

ナゴヤコンパスキャンパスではオンライン上に小学生向けのフロアと中学生向けのフロアがあり、教室や自習室、相談室などが設置されています。参加者は自分の「アバター」を使って好きな場所に行き、オンライン授業を受けたり、他の参加者と交流したり、イベントに参加したりすることが出来ます。アバターは自分の好みに合わせて着せ替えが可能で、身に着ける小物なども選べます。

また、メタバース内ではアバターにニックネームが表示され、自分の好きな名前と格好で楽しく通えるのも子どもにとって魅力になっていると言います。

どんなことが出来るの?

授業は?

ナゴヤコンパスキャンパス上の教室では週3日、45分×4コマの授業がリアルタイムで行われています。すべての授業に参加しなくても良いですし、小学校・中学校の垣根を超えて、好きな授業に参加することが可能です。生徒が教室に入ると自動的に「Microsoft Teams」(チャットやWeb会議が出来るコミュニケーションツール)が立ち上がって、教師との双方向の授業が繰り広げられています。

授業は誰にでも理解しやすい内容となるように工夫されています。授業中はマイクやカメラをオフにしている子どもが多くいますが、先生の呼びかけに対して、多くの子がチャットを通じて活発に発言や反応をしているそうです。

自習は?

自習室では、オンライン学習教材「デキタス」を使って学べます

自習室では、オンライン学習教材「デキタス」を使用。授業動画と演習問題があるので、自分のペースで好きなだけ学べます。

相談は?

相談室では完全予約制でカウンセリングを行っています。子ども自身はもちろん、保護者も相談でき、公認心理師や臨床心理士の資格を持つカウンセラーが担当。予約者以外は相談室に入れないので、秘密も厳守されます。時間がなかったり、子どもが外出できなかったりして、学校のスクールカウンセラーのもとに通えない人でも、ここでならリモートで相談できます。

体験活動は?

誰もがリラックスして参加でき、達成感を感じられるような、オンラインでの活動も実施。これまで、謎解きや絵本の読み聞かせなど、通常の授業を離れた学習活動を行いました。今後はリアルでのイベントや活動も企画していくことで、子どもたちの社会性を育み、次のステップにつないでいきたいと考えています。

「久しぶりに家族以外と話せた」

現在の登録者は100人を超えています。6割が小学生で、4割が中学生です。授業の開かれる日には40人前後が参加し、中学生が復習や学び直しで小学生向けの授業を受けている姿もあります。自由に学べる環境の自習室を活用している参加者も少なくありません。参加者のアンケートでは「久しぶりに家族以外の人と話せた気分」という声もありました。

最後に

家から出られなくなってしまうと、家族以外の人とコミュニケーションをとる機会が失われることもあります。また、学びの場や目標がない中では、学習のモチベーションを保つのも難しいものです。メタバースを通じた学びの場は、こうした課題解決の最初の一歩になるかもしれません。「なかなか家から出られない」「でも、もう1度学びたい」という子どもの選択肢の1つとして、検討してみてはどうでしょうか。

文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部

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