もし小・中学校で不登校になったとしたら、卒業後、どんな道を選べばいいのか――。親子で卒業後の進路に頭を悩ませることも多いでしょう。全日制はもちろん、定時制や通信制などの高校への進学を選ぶ人もいれば、専門学校などへの進学を検討したり、就職を考えたりする人もいると思います。
実は、不登校生徒の卒業後の選択肢の1つとして、夜間中学があります。2025年春に開校した夜間中学・名古屋市立なごやか中学校を訪ね、10~20代の生徒たちの声を聞きました。
病気で欠席が続いたAさん
小中学校は病気がちで、あまり通えませんでした。中学卒業後は働いていたのですが、仲の良い幼なじみがこの学校のことを教えてくれたんです。「一緒に通おう」と誘われ、入学を決めました。
ここでは先生や友人にどんな質問をしても、白い目で見られず、優しく答えてもらえるので助かっています。数学が苦手だったんですが、小学校の算数レベルから学び直し、自分で解けるようになった時は達成感を味わいました。分からないことが分かるようになるって、本当に面白いですね。

絵が得意なので、この前開かれた運動会では、プログラムの表紙のイラストを担当しました。いつもは1人で描いているので、みんなに見てもらえたことがうれしかったです。
相変わらず体調を崩しやすいので、たまに休んでしまうのですが、学校に来るのが楽しみなので、できる限り頑張って通っています。学校帰りに友達とカフェに寄って、“夜お茶”するのも楽しみの1つです。最近、新しいバイトが決まったので、勉強とバイトの両立を頑張りながら、いつか高卒認定をとって、仕事の幅を広げたいです。
高卒認定と就職を目指すBさん
中学卒業後、高校には進学せず、アルバイトをしていたのですが、父が「こんな学校ができたらしいよ」と教えてくれました。いつか高校に通って就職しようと考えていたので、ちょうど良いのではないかと思い、入学を決めました。
5教科だけではなく、体育や技術・家庭科、美術の授業もあるので、飽きずに楽しく通えています。私は絵を描くのが好きなので、美術の時間はワクワクしますね。また、学校行事も楽しくて、先日開かれた運動会では、玉入れやら借り物人競走やら、結局全種目に出場しました(笑) ハロウィンが近かったので、みんなで仮装しながら楽しみました。インドネシアにルーツがある子の衣装は、華やかで可愛かったです。

入学してみたら、意外と同世代の人が多くて、居心地が良いです。もちろん世代の違うクラスメイトもいますが、年齢差を感じません。私は話すのがあまり得意ではないんですが、自然となじめて、素のままでいられるのがうれしい。気が楽というか。なごやか中学校は私の居場所だと思っています。
鉄工所で働きながら通うCさん
昼間は鉄工所で働いています。仕事が終わると、家でお酒を飲むのが唯一の楽しみなんですが、その姿を見ていた親が「せっかく時間があるなら、夜間中学に行ってみたら?」と。テレビのニュースで、この学校のことを知ったみたいです。私が中学にあまり通えていなかったので、すすめてくれたんだと思います。

どんな人がいるのか少し不安だったのですが、同じような仕事をした経験のある友人がすぐにできました。仕事の話ができるので、おしゃべりも楽しいですね。まさか共通の話題がある人がいるとは思っていなかったので、入学して良かったと思いました。
学生時代は英語が苦手で、ほとんどわからなかったのですが、わかるようになってくると、「もっと上達したい」と思うようになりました。今は昼間に働いているので、授業が終わって帰ると、疲れて寝てしまうのですが、本当は家でももう少し勉強したい。時間をつくって復習したり、もうちょっとレベルの高い問題にチャレンジしたりしたいと思っています。なごやか中学校では、気軽に質問できて、先生がちゃんと答えてくれるので、どんな人もきっと学び直せると思いますよ。
最後に

さまざまな理由で義務教育を十分に受けられなかった人が通う、なごやか中学校。この学校に通う目的は、生徒によって違います。しかし、どんな背景をもち、どんな目標がある人にも、学びの場は開かれています。もちろん不登校だった人にも、学び直し、新たな夢に向かうきっかけを与えてくれる場所の1つになるのではないでしょうか。名前の通り「なごやか」な雰囲気がただよう、温かい場所でした。
取材・文 きずなネット編集部
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