物価高が続く中、生活費や学費など日々のやりくりに苦労している家庭は多いのではないでしょうか。思うように貯金が出来ず、焦っている人もいるかもしれません。そもそも、貯金はどれくらいあればいいのでしょうか。貯金の意義や目安について、子育て世帯の家計の観点から、ファイナンシャルプランナー(FP)の近藤賢一さんに教えてもらいました。
FP事務所RAC代表 近藤賢一(こんどう・けんいち)さん
南山大学経済学部卒業後、求人広告営業や人材斡旋(あっせん)事業のコンサルタントなどを経て、FPとして独立。年間100世帯以上の家計相談や資産形成に関するアドバイスを行っている。ファイナンシャルプランニング技能士や住宅FPエキスパートなどの資格を所有。YouTubeチャンネル 「教えて!こんけん先生」で子どものお金の教育について配信中。
貯金は何のために必要?
私たちは、なぜ貯金をするのでしょうか。収入から残った額を漫然と口座に残している人、目標のために決まった額を積み立てている人、普段の支出で手一杯で、貯金に回す余裕がない人……。家計の事情はさまざまですが、家族が安心して暮らしていくために、貯金は必要不可欠です。
なぜなら、貯金は「緊急資金」だからです。事故や病気、周囲の環境の変化など、いろいろな事情によって、突然収入が途絶えた時でも、家族が暮らせるように貯めておく必要があります。
コロナ禍で仕事や給料が減ってしまった例も、記憶に新しいところです。また家財道具が壊れたり、イレギュラーなイベントがあったり、冠婚葬祭が重なったりして、予定外の支出が発生した場合にも、ある程度対応できるようにしておくためのお金が必要です。
では、どれくらい貯金をすれば良いのでしょうか。目安にしてほしいのが、生活費3〜6ヶ月分の金額。これだけの額が口座にあれば、もし不測の事態が起こったとしても、この期間で生活を立て直すことが出来るでしょう。自営業の場合、1年分の金額があれば安心です。
貯めやすい時期、貯まらない時期
貯金に関してもう1つ考えるべきことは、ライフプランです。子どものいる家庭では、お金がかかる時期と、それほどかからない時期があります。子どもの年齢や家族構成に応じて、大まかに試算してみるのもおすすめです。
比較的貯めやすいのは、子どもが乳幼児〜義務教育の期間。教育費がかさむのは、子どもが高校生〜専門学校・大学生の期間です。公立か私立か。高校卒業後に進学するのか。もし進学するならどんな学部に進むのか。自宅から通うのか自宅外で1人暮らしをするのか。どのような選択をするかで支出の振れ幅は大きくなります。子どもがどのような進路を選んだとしても、負担の大きい時期だと認識しておきましょう。
こうした長い時間軸のもとで、「今は貯める時」「今は貯められなくても仕方ない時」という意識を持って、貯金と支出のバランスをとることが大切です。
最も大きな支出となる可能性が高いのは、大学の学費。しかし、今はさまざまな奨学金制度や、低金利の教育ローンもあります。あくまで我が家の場合ですが、子ども自身に「学びたい」という気持ちがあるのなら、働くようになってから本人が学費を返済するのも、マネー教育の一環だと考えています。各家庭でいろいろな考え方や事情があると思いますので、よく話し合ってみてください。
投資はどう考えれば良い?
資産運用に関しては、日々の生活や、家族の人生を見通した貯金がある程度確保できた上で考えることが大切です。
例えばNISAなどの投資は、長期保有することで資産形成をするものです。突然の出費で、不利なタイミングで解約してしまったら、本末転倒です。また、貯金が生活の負担になるようなら、金額は見直すべきですし、同じようにストレスになるような投資も控えた方が良いと思います。十分な生活資金を見込んだ先に、自分や家族にとって最適な投資についても考えていきましょう。
最後に
安心して生活を営んでいく上で、貯金は必要不可欠です。貯金のために無理な生活するのではなく、貯める・使うのバランスや家族にとっての意義を考えることで、必要なお金を確保していきましょう。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部