高齢の親と今後について話していますか? 親の「終活」と進め方【専門家解説】

高齢の親と今後について話していますか? 親の「終活」と進め方【専門家解説】

子育てをしていると、毎日が忙しく過ぎていきますが、そんな中でも、年齢を重ねる高齢の親について、漠然と不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。体力が衰えたり、忘れっぽくなったり……。一緒に暮らしていれば様子も分かりますが、離れて暮らしていると頻繁にサポートもしづらいですよね。

ここでは、「終活」に携わる専門家に、より良い人生の基盤になる終活の始め方について聞きました。ぜひ、親御さんとお話しする際の参考にしてみてください。

遠山さん

遠山雅章(とおやま・まさあき)さん

特定非営利活動法人ひだまりの和 本部長

超高齢化社会により、高齢者やその家族を支える仕組みや社会資源も多様化していることを受け、ひだまりの和では高齢者等終身サポート事業を実施。「これからずっとあなたの笑顔のおてつだい」をキャッチフレーズに、さまざまな生活環境の方たちを日々支えている。終活セミナーで講師としても登壇。

どうして終活が必要なの?

遠山さん

前向きに生きるための終活を

「終活」というと死を前に生前整理をするイメージがあるかもしれませんが、後ろ向きになる必要はありません。実は人生100年時代を自分らしく生きるためにこそ、終活は必要だからです。健康寿命が伸びている今、終活は70代以降の人生をいきいきと生きるための準備と捉えた方がよいでしょう。

高齢者本人の心配事や気掛かりをなくし、家族も必要なサポートについて考える。それによって、短くない高齢期の人生を安心して過ごすことが出来ます。

高齢者の約3割が認知症

高齢者の約3割が認知症

今や80代前半の男性で約6人に1人、女性で約4人に1人が認知症を患っていて、高齢者全体の約3割が認知症(※1)です。認知症を発症した場合、生活が難しくなるだけでなく、さまざまな契約も交わせなくなります。そこで、自分の人生を決められなくなる前に、必要な物事について意思を示して、決めておく必要があるのです。これが終活です。もちろん認知症を発症しなかったとしても、高齢になって動けなくなる前に、さまざまなことを整理しておくことは非常に重要です。

実際、終活を始めたことで余生に対する考え方が棚卸されてスッキリした人や、必要なサポートが出来るようになった家族をたくさん見てきました。家族が高齢者に終活をすすめる場合には「これから安心して生活するために、一度身の回りのことを見直そう」と誘ってみてはどうでしょうか。

終活でやるべきことは?

人生の数だけ終活の形があり、全てを網羅することは難しいですが、エンディングノートなどを使って大まかに4つのことを整理しておくとよいでしょう。

写真は、NPO法人ひだまりの和で配布しているエンディングノート。エンディングノートは、書店などで購入できるほか、自治体や企業が無料配布しているケースも写真は、NPO法人ひだまりの和で配布しているエンディングノート。エンディングノートは、書店などで購入できるほか、自治体や企業が無料配布しているケースも

介護・医療・葬儀・墓

体が動かなくなったり、生活が立ち行かなくなったり、亡くなった後の希望をまとめます。介護場所・サービスの希望や、延命措置を希望するかなどに加えて、葬儀や墓の用意がある場合にはまとめておきます。

お金

定期預金の解約、複数口座の集約、クレジットカードの集約、相続、家族信託などの準備や手続きを進められるとベストですが、まずは、家族でも把握していない口座・カード・資産や負債の情報を書き出し、共有しておきましょう。

不動産

自宅以外に所有している不動産はありませんか。登記情報などを分かりやすくしておきましょう。

上記以外のもの

車や趣味のものについて、数や状態を把握しておきましょう。不要なものはこれを機会に処分できるとよいですね。最近問題になるのが、ペット。もしも育てられなくなった時にはどうするのか。譲り先や預け先を確保しておくこともおすすめします。

いざという時には家族や知人への譲渡を考えるのが一般的ですが、引き取り手のない場合も想定した準備をしておきましょう。

外部への相談は?

終活を進めていくと、本人や家族だけでは解決できない問題が出てくることがあります。

終活を進めていくと、本人や家族だけでは解決できない問題が出てくることがあります。特に家族が遠方で暮らしている場合、日常のサポートや緊急時の対応は難しいことが多いです。だからこそ、何かトラブルが起こったときではなく、できるだけ早めに外部の専門家に相談しておくのがよいでしょう。

たとえば日常の医療・介護・生活支援などの多くは公的制度でまかなわれています。しかし、公的なサービスだけでは全ての問題を解決することが出来ないケースが起こる可能性もあります。先を見据えて、地域包括支援センターや社会福祉協議会などで、どのような社会資源があるのか、相談してみてもよいかもしれません。

終活を始める今から、家族と身元保証人について役割を決めておくこともおすすめします。入院、入所、手術など、医療や福祉においては、定められた人の同意が必要な場面が少なからず発生します。緊急で決断が必要な場面もあるため、近くですぐに保証できる人を立てておくことは大切です。家族に頼ることが難しければ、近隣の友人や兄弟、内縁関係でも構いませんが、長く重要な責任を果たす必要があることを知っておいてください。

身元保証人を立てるのが難しい場合には、「高齢者等終身サポート事業」を利用するのもおすすめです。介護福祉関連の企業や団体、士業など、民間で身元保証のサービスを提供しているところも少なくありません。判断能力が低下してから成年後見人を立てる前に、まずは家族のように身近で気軽に相談できて、いざという時に頼れる「身元保証人」という存在を見つけておくと安心です。

最後に

これまで自分の人生を自分で決断してきたのに、うまく出来ないことが増えていくのは、高齢者本人はもちろん、周りで支える家族にとっても辛いことです。

これまで自分の人生を自分で決断してきたのに、うまく出来ないことが増えていくのは、高齢者本人はもちろん、周りで支える家族にとっても辛いことです。しかし準備をしておけば、必要なサポートが受けられる安心が得られ、亡くなった後の心配も軽減できるはずです。

100歳まで自分の意思を尊重して生きるために思いを伝え、その意向を叶えるために必要な手配をするものとして、本人と家族で前向きに終活に取り組んでほしいですね。

文・取材:きずなネット編集部

※1:認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計(厚生労働省)

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