内弁慶とは?9つの性格特徴、原因と解消法【専門家解説】

内弁慶とは?9つの性格特徴、原因と解消法【専門家解説】

家で、パートナーや子どもなど家族と接する時の態度と、外での態度が違う…という人はいませんか?または自分自身がそうだと感じる人もいるかもしれません。今回は「内弁慶」とは何か、その特徴や原因・解消法について。そして、ママの内弁慶について、子どもと接する時に気を付けたいことをご紹介します。子どもの発達の専門家である、いしづかみほさんにお話を伺いました。

いしづかみほ

カウンセラー:いしづかみほ
内弁慶は「性格の問題」ではなく、「過去の体験」が原因です。内弁慶で悩む人がラクに過ごせるヒントになれば嬉しいです。

内弁慶とは?

「内弁慶」というと、ネガティブな印象を受けるかもしれません。辞書などで言葉の意味を調べてみると、「家の中では威張り散らすが、外では意気地のないこと。また、そのさまやそういう人」と書かれています

「内弁慶」というと、ネガティブな印象を受けるかもしれません。辞書などで言葉の意味を調べてみると、「家の中では威張り散らすが、外では意気地のないこと。また、そのさまやそういう人」と書かれています。
要するに内弁慶は、外ではおとなしいのに家では真逆の態度をとっている人のこと。
ただ「内弁慶」という言葉には、もうちょっとライトな状態も含まれているのかなと考えています。
家では自分の意見をはっきりと言えたり、自分の子どもに対しても毅然とした態度で接したりできるのに、ママ友に率直に自分の気持ちを伝えられない、他の子には自分の子と同じように注意できない、などです。

TPOに応じて言葉遣いやふるまいを使い分けることは、社会生活を送る上で当たり前だと教えられて、私たちは成長してきました。
けれど、内弁慶のように、その使い分けが問題になってしまうのは、どのような場合でしょうか。

内弁慶の特徴

内弁慶の人には、以下のような特徴があります。

外では

  • 意見を求められた時に、自分の気持ちをそのまま伝えることが怖い
  • つい、相手の要望を優先してしまう
  • 意見の食い違いが起きそうな話題を避ける

内では

  • 他人には使わないような言葉遣いで、子どもやパートナーに接してしまう
  • 相手の至らない点を過剰に指摘してしまう
  • 相手の状況、気持ちを確認せずに物事を決めたり進めたりしてしまう

その他にも

  • わが子には厳しく接するけれど、他の子には甘い
  • 家に帰るとイライラが止まらなくなる
  • そもそも家族以外の人とあまり関わりたくないと感じる

多かれ少なかれ、人とうまくやっていくためにこれらをおこなうこともあります。しかし、度が過ぎるとストレスを溜めやすくなったり、近くにいる家族が不満を感じたりすることがあります。

内弁慶の原因

内弁慶になってしまう原因・背景には、「過去の体験に紐づいて未来を予測する」という癖が隠れています。

過去の体験が原因に

「以前、こういう場面では自分が意見を言ったら怒られた」、「過去、こういう人とかかわった時に気持ちが表情に出てしまい、関係が壊れた」などの体験です。
そうした過去の体験が、私たちの口をつぐませ、心のままの表情で生きることを躊躇させるのです。

人格A、人格B、人格C…というように、場面に応じて出てくる人格が交代することは、大なり小なり誰もがやっていること。ただ、あまりに人格が違い過ぎると、自分が苦しくなってしまいます。なぜなら、他者との親密感が増すほど、人格の使い分けをすることが難しくなってくるからです。
また、外側での出来事にアンテナを張り続けていると、ちょっとの刺激でもたくさんの信号が脳内を行き交い、すぐにビジー状態になってしまいます。その結果、正しい判断や情報処理ができなくなってしまいます。
いずれにせよ、内弁慶は「性格の問題」ではなく、「過去の体験」が原因なのだということを、知っていただければと思います。

根本は、ママ自身の「愛着形成」の体験

人には「過去の体験に紐づいて未来を予測する」という癖があります。内弁慶である人の場合、その根本には、「子ども時代に十分な愛着形成の機会を持てずに成長した」という背景が隠れています。
愛着形成が不十分だと、無自覚に、以下の行動をおこないがちになります。

  • 必要以上に周りの反応を気にしてしまって自分の感情をないがしろにしてしまう
  • 親密になることを恐れて相手からは絡みづらいキャラを演じてしまう
  • 自分の存在を消してしまう

「愛着形成」とは、互いのニーズ(欲求や要求)に応えるやり取りの中で、赤ちゃんとママの間に情緒的な結びつきが生まれるという考えのこと。
イギリスの精神科医ボウルビィ博士の提唱した愛着理論(アタッチメント理論)では、この情緒的な結びつきが、以下の2つを根付かせると言っています。

  • 自身の万能感(私はやれば何でもできるという感覚)
  • 世界への信頼(この世界は自分を脅かす場所ではなく安全なところであるという認識)

へその緒が切れ、母体の外に出た赤ちゃんは、不安や恐怖、不快感などを解消するために、自分を保護してくれる対象(主に母親)に近づきコンタクトをとります。
お腹がすいた、おむつが汚れて不快だ、といった赤ちゃんのリクエストに対し、ママは、ミルクを与えたりおむつを交換したりする。こうしたリクエストに応える行動をママが繰り返すことで、赤ちゃんは「安全・安心」を確保できます。
こうして、私たちひとりひとりの中に愛着は形成されていきます。

母親との間に一次的な愛着が形成されると、そこが赤ちゃんにとって最初の「安全基地」になります。そして、次なる愛着形成の対象である父親や兄弟、親族や身近な知人との間で、トライ&エラーを繰り返し始めます。それは次第に、より大きな集団である幼稚園や保育園、ご近所のコミュニティの人たちを対象としておこなわれるようになります。
自分らしくいられる安全基地を出て、他者とコミュニケーションをとるようになると、上手くいかない体験が出てきます。家では通用したやり方が通用しない、ママから与えられるような注目や配慮がなされないなど。そうすると、子どもはその度に家庭という安全基地にいったん戻り、身体的にも情緒的にも満足をして、また外の世界でコミュニケーションを試していくのです。
このようにして、人は成長し、大人になっていきます。

内弁慶をやめるには

心のままにいたとしても、互いに平和な関係を築くことができたなら、それが一番です

心のままにいたとしても、互いに平和な関係を築くことができたなら、それが一番です。

そのための、ポイントは2つです。
内と外で使い分けてしまう自分、心のままに表現できない自分を「責めない」ことと「埋めない」ことです。

「責めない」とは

「責めない」というのは、「本当の気持ちを言えない自分はダメ」「内弁慶な自分は最悪」などと、自分を攻撃しないことです。
内弁慶の原因は、幼少時代に十分な愛着形成がおこない切れなかったという、本人にはどうしようもできないところにあります。

責める必要はないのです。責めるよりも、「そういうところが自分にはあるな」と認め、受け容れましょう。
「自分はこれで大丈夫」という安全基地が自分自身の中に形作られるにつれ、こうした癖は解消されていくものです。焦らずいきましょう。

「埋めない」とは

「埋めない」というのは、心のままに表現できていないことを正当化しない、モヤモヤをなかったことにしない、ということです。
「なんか大丈夫、私ポジティブだし」といった妄想にはまると、心のヘルプサインに気づきづらくなってしまいます。
落ち込んだ時には落ち込んだ気持ちのままに。怒りを感じたなら怒りをしっかり感じて。
小さくなってしまった自分の声のボリュームを大きくして聞いてあげましょう。

ママ友と関わる時、新しいコミュニティに一歩踏み出す時、この2つを心がけてみましょう。それから「本当の自分の気持ちは今どんなかな?」と、自分自身に問いかけてみてください。
自分のその時その時の感情に(たとえそれがネガティブなものであったとしても)「私は今、そう感じているんだね」とOKサインを出すのです。そして、自分の心模様と表情を一致させる努力をしてみましょう。

子どもと接する時に心がけたいこと

子どもは、現在進行形でママとの間に愛着を形成中。ママを安全基地として外の世界との愛着を形成していくというプロセスのまっただなかにいます

子どもは、現在進行形でママとの間に愛着を形成中。ママを安全基地として外の世界との愛着を形成していくというプロセスのまっただなかにいます。
子どもと接する時には、心の中と表情や言動を一致させる努力をしましょう。

泣きたい気持ちなのに、笑っていませんか?
怒りにまみれているのに、平気なふりをしていませんか?
みじめな気持ちでいっぱいなのに、強がっていませんか?

私も相当やってきたことです。
「そうしないとうまく生きていけないでしょ」「子育てって、そうやってがんばって、自分のことはさておいてってしないとできないでしょ」と、思っていました。

けれど、子どもたちとの心の絆は、正直で穏やかなコミュニケーションにより育まれるもの。
内弁慶であっても子どもと接するときは、自分に正直に、心と表情や言動がばらばらにならないよう気を付けてみてください。

最後に

内弁慶の特徴や原因、解消法について、ご紹介しました。まずは、自分の心に蓋をせず、心と表情を一致させることが大切です。お子さんのいるママであれば、子どもの前でも頑張りすぎず、自分に正直でいることが、ママ自身のためにも、子どものためにもなりますよ。
自分を「責めない」「埋めない」を実践するのは、すぐには難しいかもしれません。少しずつ意識するところから、はじめてみてはいかがでしょうか。

文:いしづかみほ

いしづかみほ
いしづかみほ

大手進学塾の講師を経て、不登校、発達症、虐待とネグレクト、愛着障害等々の教育相談と学習指導、カウンセリングを20年にわたり行ってきた。漫画家。イラストレーター。カウンセラーでセラピスト。
著書「マンガでわかる!発達症との向き合い方」(impress Quick Books)

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