2022年4月に掲載した記事を再編集し、掲載しています。
五月病とは、環境が変わりがちな春を乗り切って、ほっとひと息つくGW(ゴールデンウイーク)明けに感じるさまざまな不調のことです。
特に子育て中の親御さんは自分のことに加え、お子さんやパートナーの環境変化の影響も受けるため、注意が必要です。今回は五月病の主な症状や原因、乗り越え方・抜け出し方の5つのコツについて、医師監修のもと解説します。

監修医:鈴木 幹啓(すずき・みきひろ)
すずきこどもクリニック(和歌山県新宮市)院長。三重県伊勢市出身。日本小児科学会認定小児科専門医。日本小児感染症学会、日本小児アレルギー学会、日本小児呼吸器疾患学会、日本小児皮膚科学会所属。オンラインドクター。「患者ニーズを徹底的に追及し、患者を不安な気持ちで帰宅させない」をモットーにしている。著書に「日本一忙しい小児科医が教える 病気にならない子育て術」(双葉社)。3児の父。
五月病とは?
五月病とは、5月のGW後に「やる気が出ない」「疲れが抜けない」など、何となく感じる心身の不調のことを言います。医学的な病名ではありませんが、ひどくなると会社や学校に行けなくなったり、うつ病になったりすることも。不調が深刻化する前に対処することが大切です。
五月病になる原因
五月病の原因には、ストレスが関係しています。春は何かと環境が大きく変わるタイミング。誰しも環境が変わると、少なからずトレスを感じるものです。
親御さんの場合、自分自身の環境の変化だけでなく、子どもの入園や入学、進級などで生活リズムが変わったり、新しい人間関係が生まれたり。また、パートナーの転勤や異動などで、生活環境がガラっと変わることもあるでしょう。
こうした環境の変化は、想像以上にストレスになります。始めのうちは気を張っているため、特にストレスを感じないかもしれません。しかし、GWでひと息つき、ほっとして気がゆるむと、心や体に影響が出てしまうのです。
五月病の症状をセルフチェック
五月病にはどのような症状があるのでしょうか。「心」「体」「行動」の3つの観点で、具体的な症状をあげてみます。自分自身に当てはまるものがないか、セルフチェックしてみてください。
心の症状
- □ 家族についイライラしてしまう
- □ 仕事、家事、育児などに対してやる気が出ない
- □ 漠然と不安を感じる
- □ ネガティブなことばかり考えてしまう
- □ 同僚や友達との人間関係が億劫に感じる
- □ 職場に行きたくないと感じる
体の症状
- □ 疲れがとれない
- □ 食欲がなくなった
- □ 動悸がする
- □ 寝つきが悪い
- □ 頭痛や肩こりがひどい
行動に現れる症状
- □ 仕事や家事でケアレスミスが多くなった
- □ 身だしなみを整えられなくなった
- □ 家に引きこもりがちになった
当てはまる症状はありましたか? GW明けにこうした症状が見られる場合、五月病かもしれません。自分だけでなく、パートナーや子どもにも症状が出ていないかを気にしてみてくださいね。
五月病になりやすい性格
五月病になりやすいかどうかは、性格によって差があると言われています。では、どのような性格が五月病になりやすいのでしょうか?
それは、ストレスを感じやすい人です。ストレスを感じやすい性格は次のとおりです。自分に当てはまるところがないかチェックしてみましょう。
生真面目
生真面目な性格の人は、何事も真正面から受け止めてしまう傾向があります。環境が変わると覚えなければならないことや、やらなければならないことが増えるもの。全てを「しっかりやらなければ」と頑張り過ぎると、ストレスがたまりやすくなります。
責任感・正義感が強い
責任感や正義感が強いのはいいことですが、新しい環境において「早く慣れなければ」「仕事で成果をあげないと」という気持ちがプレッシャーになり、ストレスを抱えてしまうことがあります。
理想が高く完璧主義
完璧を求めすぎると、ちょっとしたミスや人から言われたことを許すことが出来ず、それがストレスになってしまいます。環境が変わると初めてのことが多くなり、完璧にこなすのは難しいもの。その結果、ストレスが積み重なり、五月病につながります。
自分の気持ちを抑えがち
自分の気持ちを抑えがちな人は、新しい人間関係において自分の意見を言えず、他人を優先してしまう傾向があります。そのため、嫌なことを嫌と言えず、ストレスが重くのしかかってしまうことに。
どの性格にもいい面はありますが、悪い面が強く出ると、ストレスを受けやすくなります。「当てはまるところがある」と感じたら、自分を責めたり、追い込んだりせず、ゆったりとした気持ちを持てるといいですね。
五月病の抜け出し方5つのコツ
GW明けから「気分が優れない」「疲れがとれない」など五月病の兆候を感じたら、早めに対処したいところです。
ここでは五月病の抜け出し方・乗り越え方の5つのコツを紹介します。
①モヤモヤを吐き出す
心の中にたまったモヤモヤを外に吐き出すと、ストレスを発散できます。「モヤモヤがたまっているな」と感じたら、パートナーや友人など、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。信頼関係のない相手に話してしまうと、ネガティブに捉えられたり、その話が広まったりするリスクがあります。
人に話しにくい場合は、紙に書き出すだけでもモヤモヤを整理でき、ストレスが軽減されますよ。
②セロトニンを増やす
セロトニンは心の安定や安心感を高めてくれる脳内物質。ストレスを緩和する作用があるとされ、「幸せホルモン」とも呼ばれています。セロトニンをつくる材料に、トリプトファンというアミノ酸があります。トリプトファンは体内でつくることが出来ないため、食事から摂るようにしましょう。
トリプトファンを多く含む食材
- 大豆製品…納豆、味噌、豆腐など
- 乳製品…チーズ、ヨーグルトなど
- 穀類…白米、パスタ、そばなど
- その他…ゴマ、ピーナッツ、卵、バナナなど
③ 睡眠を改善する
子育てや家事、仕事に追われ、睡眠不足が続いているという人も多いのではないでしょうか。しかし、しっかりとした睡眠は、脳を休め、ストレスを緩和してくれます。
まずは睡眠時間を確保すること。忙しくて睡眠時間が短くなってしまう場合は、睡眠の質を高めることを意識しましょう。
睡眠の質を上げるために出来ること
- 夕方以降のカフェインを控える
- 夕方以降に仮眠しない
- 食事は寝る3時間前までに済ませる
- 寝る前の飲酒を避ける
- 寝る前にスマホやパソコン、テレビを見ない
- 寝る前にぬるめの湯船にゆっくりつかる
- 枕や寝具、パジャマを自分に合ったものにする

④ウォーキングやジョギングをする
先ほどお伝えした、「幸せホルモン」のセロトニンは、日光を浴びることで分泌されます。さらに、リズミカルな運動をすることで活性化するという報告もあります。
どのような運動がいいかと言うと、ウォーキングやジョギング、サイクリングといった、軽い有酸素運動がおすすめです。朝起きて、外で太陽の光を浴びながら行うのが理想ですが、実際はなかなか難しいですよね。1人ではなく、家族みんなを巻き込んで、1日に数十分でもいいので、体を動かす習慣をつくれると、継続しやすくなりますよ。
また、週末にバドミントンをしたり、山に登ったり、体を動かすアクティビティをするのもいいですね。
⑤1人の時間をつくる
1人で過ごす時間はストレスから解放され、また回復するために重要です。家族がいると、なかなか自分の時間をつくるのが難しいと思いますが、パートナーと相談し、お互いに1人の時間を持てるよう、工夫できるといいですね。
最後に
心と体に不調が現れる五月病。特に、仕事に、家事に、育児に、つい頑張り過ぎてしまう人は注意が必要です。
「もしかして五月病?」と思ったら、この記事で紹介した抜け出し方・乗り越え方を参考に、早めに対処してくださいね。
文:荒井梨乃