子育て世代は子どもの進学や住宅の購入、車の買い替えなど、ライフイベントに応じて、まとまったお金が必要になります。学校連絡網アプリ「きずなネット」では2023年11月7日~13日に「みんなの家庭の節約事情」アンケートを実施し、1117件の回答が寄せられました。
中でも、特に多く寄せられたのが「将来への備えとして、投資を始めたい」「NISAが気になっているけど、よく分からない」という声。そこで、資産運用に詳しい「きわみアセットマネジメント」の中野元さんに、NISA(国の少額投資非課税制度)の基本的な概要と2024年1月からの変更点について解説してもらい、アンケート結果とあわせてお届けします。
子育て世代の節約事情
アンケートの回答者(※)は毎日の暮らしだけでなく、教育資金の準備など、何かとお金が必要となる子育て世代の男女たち。節約について尋ねたところ、このような結果が得られました。
Q.普段の生活で節約を意識していますか?
Q.節約している理由は何ですか?
※「普段の生活で節約を意識していますか?」の設問に対して、「とてもしている」「ややしている」を選択した人の回答(複数回答可)
Q.節約を意識しているものを選んでください
※「普段の生活で節約を意識していますか?」の設問に対して、「とてもしている」「ややしている」を選択した人の回答(複数回答可)
アンケート結果の詳細は「きずなネット」アプリで読むことが出来ます。「きずなネット アプリ」はこちら。
みんなの「お金の悩み」
「お金や節約について、知りたいことや悩みはありますか?」という質問に対しては、このような声が寄せられました。
「最近は貯蓄よりも投資をする人が増えているのを実感。投資の勉強って、みなさんどうしているのでしょうか?」
(41歳・女性)
「投資や株など、みなさんはどれくらいやっているのでしょうか? 信用度も気になります」
(44歳・男性)
「教育資金は、どれくらい貯めておけばいいんでしょうか?」
(33歳・女性)
「物価高に対して収入は増えない現実に苦労しています」
(58歳・男性)
「どんどん円の価値が下がり、未来が心配。老後資金の準備として、NISAに興味があるが、どう始めたらいいのかがわからない」
(40歳女性)
物価高や将来への不安などから、「投資が気になっている」という人が多いようです。そこで今回は資産運用に詳しい「きわみアセットマネジメント」の中野元さんに、2024年1月から新制度になるNISA(国の少額投資非課税制度)について、基本から教えてもらいました。
きわみLibrary代表取締役、きわみアセットマネジメント取締役
中野元(なかの・げん)さん
2008年、大手証券会社入社後、リテール営業を担当。海外研修や新規事業の立ち上げを経て、2019年、きわみアセットマネジメントを設立し、東京・名古屋を拠点に活動。2023年、きわみLibraryを立ち上げ、代表を務める。CFP®や宅地建物取引士などの資格・免許も所有。
そもそもNISAって?
NISA(ニーサ)は2014年からスタートした、投資において税制の優遇が受けられる制度です。証券会社や銀行などの金融機関でNISA口座を開設することで、誰でも少額から始められます。
通常、投資でもうかった利益には約20%の税金がかかります。例えば10万円もうけたとしても、2万円が税金として引かれ、手元には8万円しか残りません。しかし、NISAを使って投資すれば税金がかからず、10万円をそのまま受け取ることが出来ます。
新NISAは月1万でも始める価値あり
子育て中だと日々の暮らしに精一杯で、「投資に回すお金がない」という人もいると思います。しかし、毎月1万円からでも始めてみる価値は十分にあります。
例えば、年間の運用益(資産を運用することで生まれる利益)を現在の平均よりやや少なく見積もって3%と仮定し、毎月1万円を30年間積み立てた場合、約582万円になります。一方、預貯金で同じ金額・同じ期間を積み立てたとしても現在の金利はほぼ0のため、約360万円。NISAと預貯金では、30年後に約220万円の差が生まれることになります。
こうしたシミュレーションは金融庁のHPで試すことができるので、いろいろな数字を入れて、イメージを膨らませてみるのもいいですね。
新NISAの変更点
そんなNISAが、2024年1月から制度が変わり、より使いやすくなります。これまでは大きく分け、少額を長期間積み立てて運用する「つみたてNISA」と、まとまった資金を一定期間運用する「一般NISA」という2つがあり、どちらか1つを選ばなくてはなりませんでした。
新NISAでは、それぞれが「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という名前になり、大きく3つの点が変わります。
これまでのNISA(2023年末終了)
新NISA(2024年以降)
投資できる金額が増える
NISAは決められた金額の範囲で投資をします。現行のつみたてNISAは年間40万円、一般NISAは年間120万円が上限でしたが、新制度のつみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円が上限になります。
「つみたて投資枠と成長投資枠では何が違うの?」と気になりますよね。その違いは、投資できる対象です。つみたて投資枠は、国の基準を満たした商品の中から選んで投資するので、初心者でも選びやすく、成長投資枠は株式や投資信託など、より幅広い商品が対象。この2つは併用できるので、両方使えば最大で年間360万円まで投資できます。
税金のかからない期間が無期限に
これまでの制度では、つみたてNISAは20年、一般NISAは5年と、税金がかからずに保有できる期間が定められていました。新NISAではその縛りがなくなり、無期限に。終わりを気にすることなく投資が続けられます。
より自由度が高まり、子どもの成長に合わせて、お金が必要な時になったら現金化し、余裕が生まれたら再び投資をするなど、子育て世代にも使いやすくなると言えるでしょう。
生涯で1800万まで投資できる
新制度では、生涯で投資できる上限額が1800万円(そのうち、成長投資枠は1200万円)に設定されています。現行の制度と比べて大幅に増え、さらに途中で売却した場合、その売却分が再び投資可能になります。
例えば、100万円で購入した投資信託が値上がりし、150万円で売却できたとします。すると、購入金額の100万円分が翌年以降再び投資可能になるのです。
NISAのこんな点に注意して
NISAは投資なので、利益が出ることも、損をすることもあります。少しでもリスクを減らすには、手元にあるお金をすべてNISAに使うのではなく、さまざまな投資手段を組み合わせて運用することが大切です。さらに、NISAにおいても1つの商品だけでなく、いろいろな商品に分散して投資するようにしましょう。
もっと言えば、「上がった」「下がった」という価格の上下を気にし過ぎる必要はありません。投資というのは、「時間が味方」になります。長く続けることで、元本割れ(手元に戻ってくるお金が投資した金額より減ってしまうこと)のリスクは少なくなるのです。
「どうすればいいのか分からない」という人は、お金の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談するのも1つです。私自身、子育て世代の親御さんから教育資金についての相談を受けることは多いですね。そういったケースには、やはりメリットの大きいNISAでの資産運用をおすすめしています。
ほかに、特定の自治体に寄付することで、税金の還付や控除のほか、返礼品が受け取れる「ふるさと納税」や、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」なども子育て世代にはおすすめです。
最後に
投資と聞くと、「難しそう」「私には出来ない」と感じる人もいると思います。新NISAは、「たくさんの人に投資をしてもらいたい」と国がつくった制度です。少額から気軽に始められ、税金もかからない。こんな便利な制度を使わない手はありません。将来への備えとして、夢を実現するための資金として、まずはNISAから投資を始めてみるのをおすすめします。
文・聞き手:きずなネットよみものWeb編集部
※アンケート回答者データ
性別:男性17%、女性80%、無回答3%
年齢: 10歳代1%、20歳代1%、30歳代17%、40歳代49%、50歳代23%、60歳代7%、70歳以上2%、不明1%